交通事故の通院慰謝料相場|通院日数3ヶ月は少ない?リハビリは含む?
交通事故で怪我を負ったら、ご自身の自然治癒力に加えて治療による回復がはかられます。怪我の内容によっては数ヶ月におよぶ通院が必要になる可能性があります。
「通院に対する慰謝料はもらえるのか?」
通院で受けた精神的苦痛は、交通事故の被害として損害賠償の対象となります。適正金額の補償が得られるよう、交通事故の知識を身に着けていきましょう。
本記事のポイント
- 通院やリハビリで受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求できる
- 通院慰謝料は弁護士基準の算定が一番高額になる
- 通院日数3ヶ月が少ないかどうかではなく、症状に応じた通院日数が大切
- 少なすぎる・多すぎる通院日数は損害の算定に悪影響を及ぼす可能性がある
交通事故の通院慰謝料とは?リハビリも対象?
通院慰謝料とは?通院なしは請求不可?
通院慰謝料は交通事故による怪我の通院で受けた精神的苦痛に対する補償として請求することができます。
交通事故で怪我を負うと、
- めんどうに感じる検査、治療がつづく
- 通院のために仕事の調整が必要になる
- 完治するか心配で憂うつになる
などの精神的な苦痛を感じることになるでしょう。交通事故の損害賠償問題では、こういった苦痛に対しての補償として通院慰謝料(傷害慰謝料)の請求が認められています。
通院慰謝料は、通院日数や通院期間に応じて算定されることになります。したがって通院なしである場合は通院慰謝料を請求することができません。
通院慰謝料の意味
交通事故を原因とする怪我の治療で受けた精神的苦痛に対する補償で、通院日数や通院期間に応じて算定される
具体的な計算方法については後ほど解説しますので最後までご覧ください。
リハビリでも通院慰謝料の対象
骨折など怪我の内容によってはリハビリが必要になるケースもあります。リハビリは治療の一環としておこなわれることになるので、リハビリにかかった費用はもちろん、リハビリは通院慰謝料の対象ともなります。
リハビリの日数・期間に応じて、完治または症状固定の時期までの通院慰謝料を請求することができます
通院慰謝料は損害賠償の一部!内訳公開
交通事故による損害は通院慰謝料のみではとどまりません。治療費はもちろん、治療によって仕事を休んだりした場合も、交通事故による損害を受けたとみなされることになります。
つまり、通院慰謝料は数ある損害賠償項目のうちの一部であるということが言えます。
被害の重さなど、お一人お一人の状況にあわせて損害の項目は異なりますが、一般的にどのような方も共通して請求することになる項目があるので紹介します。
通院慰謝料含む損害賠償の計算機
本記事では通院慰謝料に焦点を当てて解説していますが、気になるのは損害賠償全体の金額ではないでしょうか。先述したどのような方も共通して請求することになる損害賠償を簡単にチェックすることができる計算機を紹介します。
慰謝料の相場を知るのにうってつけのツールです。ぜひお試しください。
交通事故における通院慰謝料の計算方法
3基準別|通院慰謝料の計算方法
通院慰謝料は3つある基準のうち、いずれかを用いて算定されることになります。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
以上の基準のなかで慰謝料をもっとも高額に算定できるのは弁護士基準です。怪我の重さや通院ペースにもよりますが、もっとも低額に算定された場合の慰謝料と比べると約2倍の差となることもあります。
ではここからは具体的な金額の違いを体感するために、3基準別に算定方法を解説します。
自賠責基準
自賠責基準における通院慰謝料の算定方法は、特徴として日額4200円が一律で決められている点があげられます。日額に応じて治療日数・期間をもとに計算されます。
自賠責基準の通院慰謝料計算
治療期間 × 4200円
または
(実治療日数 × 2) × 4200円
治療期間または(実治療日数 × 2)のいずれか短い方の計算式が採用される
(計算式の例)
治療期間1ヶ月(30日)のうち実通院日数が9日の場合は[30日>(9日 × 2=18日)]なので18日が採用され、
18日 × 4200円=75600円
となります。
自賠責基準と弁護士基準を比べると、自賠責基準で算定された金額は相当低い程度の金額であることが言えます。
任意保険基準
任意保険基準における通院慰謝料の算定方法は、各保険会社の独自の基準が用いられるのが特徴です。これら基準は非公開であるため具体的な金額を知ることは不可能なのですが、かつて保険会社が共通で用いていた旧任意保険支払基準を確認することで目安を知ることができます。
該当月数の数字が通院慰謝料の金額です。縦列の月数:通院のみ、横列の月数:入院のみ、縦横が交差する月数:通院+入院となります。
(読み方の例)
通院のみ1ヶ月なら、12.6万円
入院のみ3ヶ月なら、75.6万円
通院3ヶ月+入院1ヶ月なら、60.5万円
任意保険基準と弁護士基準を比べると、任意保険基準で算定された金額は相当低い程度の金額であることが言えます。
弁護士基準
弁護士基準における通院慰謝料の算定は、赤い本の基準が用いられるのが特徴です。赤い本とはこれまでの裁判例を集積して作成した算定基準が掲載されています。重症/軽症に応じて2パターンの基準表が使い分けられています。
軽症:打撲・捻挫・かすり傷
該当月数の数字が通院慰謝料の金額です。縦列の月数:通院のみ、横列の月数:入院のみ、縦横が交差する月数:通院+入院となります。
(読み方の例:重症の場合)
通院のみ1ヶ月なら、28万円
入院のみ3ヶ月なら、145万円
通院3ヶ月+入院1ヶ月なら、162万円
3基準のなかで弁護士基準による算定が一番、高い慰謝料になることが言えます。
<関連記事>通院慰謝料の計算について
日数別|3ヶ月・6ヶ月・8ヶ月の通院慰謝料
通院の日数は怪我の状態でさまざまだと思いますが、多くの質問が寄せられる3ヶ月・6ヶ月・8ヶ月をピックアップして通院慰謝料をそれぞれ見ていきたいと思います。
3ヶ月の通院慰謝料相場
3基準ごとに3ヶ月の通院慰謝料を計算すると、以下のような金額になります。
3ヶ月の通院慰謝料相場
3基準ごとに計算
基準 | 金額 |
---|---|
自賠責 | 37.8万円*¹ |
任意保険 | 37.8万円 |
弁護士 | 73万円*² |
*¹ 3ヶ月(90日)のうち45日以上の通院を想定
*² 重症の場合
通院3ヶ月では、弁護士基準による「73万円」の通院慰謝料が最も高額です。
<関連記事>通院1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月の通院慰謝料について
6ヶ月の通院慰謝料相場
3基準ごとに6ヶ月の通院慰謝料を計算すると、以下のような金額になります。
6ヶ月の通院慰謝料相場
3基準ごとに計算
基準 | 金額 |
---|---|
自賠責 | 75.6万円*¹ |
任意保険 | 64.3万円 |
弁護士 | 116万円*² |
*¹ 6ヶ月(180日)のうち90日以上の通院を想定
*² 重症の場合
通院6ヶ月では、弁護士基準による「116万円」の通院慰謝料が最も高額です。
<関連記事>通院4ヶ月・5ヶ月・6ヶ月の通院慰謝料について
8ヶ月の通院慰謝料相場
3基準ごとに8ヶ月の通院慰謝料を計算すると、以下のような金額になります。
8ヶ月の通院慰謝料相場
3基準ごとに計算
基準 | 金額 |
---|---|
自賠責 | 100.8万円*¹ |
任意保険 | 76.9万円 |
弁護士 | 132万円*² |
*¹ 8ヶ月(240日)のうち120日以上の通院を想定
*² 重症の場合
通院8ヶ月では、弁護士基準による「132万円」の通院慰謝料が最も高額です。
<関連記事>通院7ヶ月・8ヶ月・9ヶ月の通院慰謝料について
通院日数が少ない?症状に応じて適度に通う
通院慰謝料は3基準のうちどの基準で算定するかで金額に差が出ることは分かりましたが、いずれも通院日数が少ない場合はさまざまなリスクが生じる可能性が出てきます。どのようなリスクが考えられるのか紹介します。
症状に見合わない通院日数で治療費打ち切り?
症状に見合わない通院日数をつづけると、治療費が打ち切られる可能性が高くなってしまいます。というのも相手方が任意保険に加入していると、損害賠償の一部である治療費を前払いする目的で病院に直接支払ってくれることが多いです。しかし、これは交通事故の怪我に対する治療が適切であると保険会社に認められる範囲内での対応となります。
通常、保険会社は治療が終了する時期を見はからって治療費の打ち切りを打診してくることが予想されますが、症状に見合わない通院だと判断されてしまうとそこで治療費が打ち切られてしまうことになります。
治療の必要があるのに仕事の忙しさを理由に通院を先延ばしたりすると「怪我が原因で痛いと主張する割には通院していない」と判断されかねません。かといってマッサージの施術だけ受けたり、ビタミン剤・湿布薬だけの処方のために不要不急の通院をつづけると「症状に対して過度な通院である」と判断されることもあります。
このように症状に見合わない通院をつづけると、治療費が打ち切られる原因となるかもしれません。
とくに通院が必要だったのに通院しなかった場合は治療費打ち切りはもとより、怪我の回復が遅れたり、治ったはずの怪我で後遺症が残ってしまうという事態にもなりかねません。
通院が多すぎ・少なすぎは後遺障害認定に影響?
通院が多すぎたり少なすぎたりすると、後遺障害等級の認定に影響することが考えられます。交通事故が原因の怪我で何らかの後遺症が残り、それが後遺障害等級に認定されると後遺障害に対しての補償(後遺障害慰謝料/逸失利益)の請求が可能になります。逆をいえば、後遺障害等級が非該当ならこれらの補償は請求することができません。
後遺障害等級の審査ではさまざまなポイントをおさえておく必要があるのですが「通院」に関連するポイントを述べるなら、
- 相当期間、通院を継続している
- 症状固定まで一貫した症状が連続している
といった点が重要視されます。このような点を医学的に主張するための証拠として適切な頻度の通院が判断基準とされます。
適切な慰謝料を得るには適切な通院を
適切な慰謝料を獲得するには、怪我の状態にあわせて適切な通院をつづけることが重要です。通院の頻度については基本的に医師の指示に従うことが大切ですが、医師に言われるがままの通院では治療が不十分である可能性も考えられます。痛みなどの諸症状については医師にはっきりと伝えてコミュニケーションを取りながら、医師と相談のうえ通院をつづけるようにしましょう。
<関連記事>通院日数の少なさは通院慰謝料に影響するのか?
まとめ
交通事故が原因の怪我で通院を余儀なくされた場合、通院に対する慰謝料が請求できることが分かりました。
- 通院日数や通院期間に応じて通院慰謝料は算定される
- 通院慰謝料は基準ごとに金額が異なる
- 適切な通院頻度が適切な慰謝料につながる
適切な慰謝料を得るため通院時におさえておくべきポイントがいくつもあったと思いますが、何よりも回復を目指すことをまずは優先して考えていただきたいと思います。症状がひと段落したときに、こちらの記事を参考に慰謝料増額の可能性を見出していただければ幸いです。
分からないこと、不安なことは弁護士などの専門家に相談してみることが大切です。無料相談をおこなう弁護士もいるので、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
交通事故の慰謝料相場と通院日数のQ&A
交通事故の慰謝料って誰でももらえるの?
通院慰謝料は<交通事故による怪我の通院で受けた精神的苦痛に対する補償>として請求することができます。通院慰謝料は、通院日数や通院期間に応じて算定されることになります。したがって「通院なし」である場合は通院慰謝料を請求することができません。
リハビリ費用も支払ってもらえるの?
骨折など怪我の内容によってはリハビリが必要になるケースもあります。リハビリは治療の一環としておこなわれることになるので、リハビリにかかった費用はもちろん、リハビリは通院慰謝料の対象ともなります。リハビリの日数・期間に応じて、完治または症状固定の時期までの通院慰謝料を請求することができます。
通院慰謝料の算定方法は?
通院慰謝料は、① 自賠責基準/② 任意保険基準/③ 弁護士基準、のうちいずれかを用いて算定されることになります。弁護士基準で算定する時、慰謝料相場は最も高くなります。怪我の重さや通院ペースにもよりますが、もっとも低額に算定された場合の慰謝料と比べると約2倍の差となることもあります。
通院日数が少ないと治療費は打ち切られる?
症状に見合わない通院日数をつづけると、治療費が打ち切られる可能性が高くなってしまいます。通常、保険会社は治療が終了する時期を見はからって治療費の打ち切りを打診してくることが予想されますが、症状に見合わない通院だと判断されてしまうとそこで治療費が打ち切られてしまうことになります。