1日いくらもらえる?交通事故の通院慰謝料相場の疑問を徹底解説
「1日だけの通院でも慰謝料は請求できるのだろうか…?」
通院慰謝料は通院期間・通院日数にもとづいて算定されるので、交通事故で怪我を負ったのであればたとえ通院が1日だったとしても慰謝料を請求することは可能です。
通院慰謝料ってどんな慰謝料?
交通事故の慰謝料は1日いくらもらえる?
慰謝料はいつもらえる?
交通事故の慰謝料(=損害賠償)のなかでも、今回は「通院慰謝料」に焦点をあてて詳しく説明していきます。
交通事故における通院慰謝料とは?
通院慰謝料とは?損害賠償の一部
通院慰謝料とは、交通事故の怪我で通院せざるを得なくなったことで受けた精神的苦痛に対する補償として請求できる損害賠償の一つです。
交通事故で怪我を負うと、
- わずらわしい検査や治療がつづく
- 予定のすき間を見つけて通院を継続しなければならない
- 通院をつづけても無事に治るのか不安にかられる
といった精神的苦痛を感じることが予想されます。交通事故における損害賠償問題では、このような苦痛に対する補償として通院慰謝料(別称:傷害慰謝料)の請求が認められています。
通院慰謝料とは
交通事故で負った怪我の治療で受けた精神的苦痛に対する補償
通院慰謝料以外に請求可能なお金
交通事故における損害賠償請求では通院慰謝料以外にも治療費や休業に対する補償など、損害に応じて請求可能なお金があります。損害に応じて請求できるので、細かく言うとお一人ずつ請求の項目は異なりますが、主に請求される損害項目はつぎのようなものがあげられます。
請求可能な主な損害賠償
- 入院・通院慰謝料
- 休業補償
- 主婦手当
- 交通費
- 治療費
- 後遺障害慰謝料*
- 逸失利益*
* 後遺障害等級の認定で請求できる
交通事故における損害賠償問題では、どのような方も共通して主にこのような損害項目を合計した金額を請求することになります。
<関連記事>交通事故における慰謝料(損害賠償)の内訳
ちなみに1日に複数の病院を受診した場合の慰謝料や治療費の支払いには注意点があります。詳しくは<関連記事:交通事故の慰謝料は通院1日いくら?1日の通院先が複数なら増える?>をご覧ください。
通院慰謝料含む損害賠償をカンタン計算
通院慰謝料を含む損害賠償の内訳が分かったところで、気になるのは「実際、どのくらいのお金を手にすることになるのか?」といった具体的な金額ではないでしょうか。損害の項目一つ一つの詳しい計算方法を紹介していては時間がいくらあっても足りません。ここでは一発で簡単に慰謝料などの損害賠償をサクッと計算してくれる計算機を紹介します。
通院期間、年齢、年収などを入力いただくだけで簡単に計算することができます。ぜひお試しください。
慰謝料相場1日いくらかは基準で変わる
慰謝料を左右する3基準とは
通院慰謝料は、「通院期間・通院日数」をもとに算定されるのが基本です。しかし、通院期間・通院日数にもとづいて算定されるとはいっても算定するときに用いられる基準によって手に入る金額に差が出ることになります。慰謝料の算定に用いられる基準は3種類あり、どの基準を用いて算定するかで金額に大きな影響が出ることになります。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
一般的に最も低い金額で算定されるのが自賠責基準、次いで任意保険基準となり、最も高い金額で算定されるのが弁護士基準であるといわれています。
通院慰謝料が1日いくらか算定するにあたって慰謝料の金額を左右する基準が3つあることをまずはじめにおさえておくべきポイントしてあげました。ここからは、それぞれの基準ごとに通院慰謝料は1日いくらもらえるのかみていきたいと思います。
自賠責基準は1日4200円
自賠責保険基準における通院慰謝料は、1日あたり一律4200円で日額が決められています。通院日数分の日額が通院慰謝料として計算されることになります。
通院日数 × 4200円
この場合における通院日数とは以下のように、
- 実際の治療日数 × 2
- 実際の治療期間
2通りの考え方があり、自賠責基準では少ないほうの日数を用いて慰謝料が算定されることになります。
自賠責基準の通院慰謝料
いずれか日数が少ないほうが採用される
(実際の治療日数 × 2) × 4200円
または
実際の治療期間 × 4200円
いずれにせよ、自賠責基準における通院慰謝料は「1日あたり4200円」だということがお分かりいただけたと思います。
任意保険基準は通院日数で割る
任意保険基準における通院慰謝料の算定には、算定表が用いられることになります。任意保険基準における1日あたりの通院慰謝料は算定表をもとに通院日数で割ると求めることができるようになります。
任意保険基準は現状、各保険会社が独自に定めているものなので開示されていません。しかしながら、かつて保険会社が共通で使用していた旧統一基準を確認すれば大体の目安を知ることができるようになっています。こちらをご覧ください。
[表の見方]
縦:通院、横:入院として治療期間に対する慰謝料の金額が記載されています。1ヶ月は30日として数えます。
▼入院のみの場合
入院期間に該当する額を確認
(入院3ヶ月であれば75.6万円)
▼通院のみの場合
通院期間に該当する額を確認
(通院3ヶ月であれば37.8万円)
▼入院+通院の場合
入院期間と通院期間の該当する月数が交差する額を確認
(入院3ヶ月、通院3ヶ月であれば102.1万円)
治療期間に応じて慰謝料の金額が決められているので、自賠責基準のように1日あたり一律の金額という求め方ではありません。
- 通院3ヶ月なら37.8万円、90日で割ると1日あたり4200円
- 通院4ヶ月なら47.9万円、120日で割ると1日あたり約3992円
- 通院15ヶ月なら100.8万円、450日で割ると1日あたり2240円
となり、任意保険基準では1日あたりの金額だけでみると通院期間が長くなればなるほど少なくなっていくことが分かります。
弁護士基準は通院日数で割る
弁護士基準における通院慰謝料の算定も任意保険基準と同様に算定表が用いられることになります。もっとも弁護士基準では過去に民事裁判で決まった基準をもとにした算定表を用いることになっています。算定表は「赤い本」という書籍で確認することができます。
弁護士基準における1日あたりの通院慰謝料は算定表をもとに通院日数で割ると求めることができるようになります。赤い本では重症/軽症のケースで2つの算定表に分かれています。こちらをご覧ください。
[表の見方]
縦:通院、横:入院として治療期間に対する慰謝料の金額が記載されています。1ヶ月は30日として数えます。
▼入院のみの場合
入院期間に該当する額を確認
(入院3ヶ月であれば145万円)
▼通院のみの場合
通院期間に該当する額を確認
(通院3ヶ月であれば73万円)
▼入院+通院の場合
入院期間と通院期間の該当する月数が交差する額を確認
(入院3ヶ月、通院3ヶ月であれば188万円)
治療期間に応じて慰謝料の金額が決められているので、自賠責基準のように1日あたり一律の金額という求め方ではありません。
- 通院3ヶ月なら73万円、90日で割ると1日あたり約8111円
- 通院4ヶ月なら90万円、120日で割ると1日あたり7500円
- 通院15ヶ月なら164万円、450日で割ると1日あたり3644円
となり、任意保険基準とおなじように1日あたりの金額でみると治療期間が長くなればなるほど少なくなってはいきますが、そもそも設定されている金額が他の基準よりも明らかに高額であることがみて取れます。
弁護士基準による算定を実現するには、示談交渉に弁護士が介入した場合のみになっています。慰謝料の増額を希望される方は、弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
慰謝料はいつもらえる?示談交渉の流れ
算定基準の違いで通院慰謝料の金額が異なることが分かったところで、慰謝料をふくむ損害賠償はいつもらえるのでしょうか。交通事故の損害賠償問題における示談交渉の流れについて確認しておきたいと思います。
示談交渉の終了後に一括払いが原則
原則として交通事故の損害賠償の支払いは示談交渉による「話し合いが終了した後に一括払い」されることになります。
もっとも事故の相手方が任意保険に加入している場合は、保険会社による一括対応サービスの一環として保険会社が直接、病院に治療費を支払ってくれるケースもあります。
立て替えが辛い…慰謝料前払いは可能?
保険会社のサービスとして治療費などだけ先払いしてもらえることもありますが、示談が終了するまでに必要になるお金はご自身で立て替えなければならないことも多いです。
- 立て替えた分の治療費が高額だった
- 怪我の影響で働けず収入が途絶えた
- 病院までの交通費がかさんできた
貯金があるような人は慰謝料などの損害賠償が支払われるまで何とかなるかもしれません。しかし、怪我の内容によっては損害額が確定せず何年も話し合いがつづくことも予想されます。このような場合、賠償金の支払いはもっと先になってしまいます。
経済的な困窮におちいって悩む前に、前払いしてもらえるものと、前払いしてもらいにくいものを整理しておきましょう。
前払いが認められやすいもの
- 治療費
- 休業損害 など
前払いが認められにくいもの
慰謝料(通院慰謝料や後遺障害慰謝料)
交通事故の損害賠償で前払いが認められやすいのは、生活に直結するような費用になっています。精神的な苦痛に対する補償である慰謝料に関しては前払いが認められにくい傾向にあるようです。
まとめ
通院慰謝料が1日あたりどのくらいの金額になるのかは、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
どの基準を用いて計算するかで金額が大きく左右されることが分かりました。もっとも高額な慰謝料を算定できるのは「弁護士基準」によるものです。弁護士基準の慰謝料算定を実現するには弁護士への相談をおすすめします。
交通事故慰謝料|1日あたりの相場Q&A
1日通院しただけでも慰謝料はもらえる?
受けとることができます。通院慰謝料(別名:傷害慰謝料)は、交通事故の怪我で通院せざるを得なくなったことで受けた精神的苦痛に対する補償として請求できる損害賠償の一つです。交通事故で怪我を負ったのであればたとえ通院が1日だったとしても、慰謝料を請求することは可能です。
1日あたりの慰謝料はどうやって決まるの?
慰謝料の算定基準は3種類あります。自賠責保険基準では、1日あたり4200円と日額が決まっています。通院日数分の日額が通院慰謝料として計算されます。任意保険基準は現状、各保険会社が独自に定めており非開示ですが、かつて保険会社が共通で使用していた旧統一基準で目安を知ることができます。弁護士基準では過去に民事裁判で決まった基準をもとにした算定表を用いることになっています。
慰謝料はいつもらえる?
原則として交通事故の損害賠償の支払いは示談交渉による「話し合いが終了した後に一括払い」されることになります。もっとも事故の相手方が任意保険に加入している場合は、保険会社による一括対応サービスの一環として保険会社が直接、病院に治療費を支払ってくれるケースもあります。
慰謝料は前払いしてもらえる?
精神的な苦痛に対する補償である慰謝料に関しては前払いが認められにくい傾向にあるようです。交通事故の損害賠償で前払いが認められやすいのは、生活に直結するような費用(治療費や休業損害など)になっています。