交通事故の慰謝料|通院が少ないと相場が下がる?15日以上通院すべき?
交通事故で怪我を負ったら通院慰謝料という損害賠償を請求することが可能です。
「月15日以上の通院をつづけても通院慰謝料は増額しないらしい…?」
このような話を見聞きしたことがあったかもしれません。
月15日以上の通院は慰謝料増額に影響しない?
そもそも通院慰謝料はどう計算される?
通院回数は症状に応じることが大事?
月15日以上通院すべきか否か…
通院慰謝料という点だけでなく、交通事故の損害賠償という観点から詳しくみていきたいと思います。
月15日の通院が上限?自賠責基準の通院慰謝料
「1ヶ月の間の通院が15日を超えてくると、それ以上通院してもしなくても通院慰謝料が増額することはない」
このような認識が広まったのは交通事故の慰謝料を算定するときに用いられる基準のひとつ、自賠責基準によるものだと思います。なぜこのような認識が広まったのか、自賠責基準における通院慰謝料の求め方をまずは整理していきたいと思います。
自賠責基準で通院慰謝料を計算
自賠責基準における通院慰謝料では日額4200円が定められており、治療日数に応じて慰謝料が算定されます。計算式はつぎの2通りから計算結果の少ない方が採用されます。
自賠責基準の通院慰謝料
(実際の治療日数の2倍) × 4200円
または
治療期間 × 4200円
計算結果の少ないほうとは、いずれか日数が少ないほうが用いられるとも言えます。
たとえば、1ヶ月の治療期間のあいだに10日治療を受けたとします。このような場合を計算式にあてはめてみると、
(10日の2倍=20日)<(1ヶ月=30日)
なので、計算に採用されるのは(10日の2倍=20日)です。
したがって、20日× 4200円=84000円が算定されます。
15日以上通院しても慰謝料は変わらない?
自賠責基準における通院慰謝料の計算式で注目したいのが、
- 実際の治療日数の2倍と治療期間のどちらか少ない方を用いる
- 1ヶ月は30日として考える
という点です。このような点が「15日」と関係してきます。
たとえば、1ヶ月の治療期間のあいだに15日治療を受けたとします。このような場合を計算式にあてはめると、
(15日の2倍=30日)=(1ヶ月=30日)
なので、どちらも同じ30日となります。つまり15日以上通院すると採用されるのは(1ヶ月=30日)のほうなので、15日以上通院したところで30日で算定される通院慰謝料よりも多くは請求できないということになります。
もっともこれは計算式に当てはめた部分の金額しか単純に見ていないことを意味し、このような考え方は非常に危険です。
「15日以上通院しても通院慰謝料が増額しないなら、通院回数を15日でおさえよう」
このような認識で通院頻度を意図的におさえたり調整したりすることは、通院慰謝料以外の交通事故におけるさまざまな損害に対する補償へマイナスに作用する可能性が高いです。つづいては、症状に見合わない通院をした場合に生じる危険性について解説していきます。
月15日の通院が症状に見合わないとどうなる?
症状に見合わない通院回数をつづける方は多くいらっしゃいます。
- 月15日以上で通院したほうが早期回復につながったのに仕事が忙しくて通院を疎かにした
- 月15日以下でも問題ないのに慰謝料増額を狙って余計に通院した
このような理由で、必要あるのに15日以下の通院にとどまったり、必要もないのに15日以上通院をつづけたりすると、交通事故の損害賠償に関して適正な金額を請求できない事態となる可能性があります。考えられるリスクについて解説します。
通院が少ない・多いと治療費打ち切り?
相手方が任意保険に加入している場合は、保険会社が病院に治療費を直接支払ってくれる一括対応のサービスがとられることになるでしょう。通常、治療終了の頃合いを見はからって治療費打ち切りを打診されることが多いですが、通院が少なかったり多かったりと症状に見合わない通院をつづけていると治療費が打ち切られる可能性が高くなります。
「治療が必要だと主張する割には通院していない」
「症状の内容からみて通院が過剰だ」
保険会社はこのように判断して治療費を打ち切ってくることが考えられます。
通院が少ない・多いと後遺障害非該当?
交通事故で負った怪我が完治せずなんらかの症状が残ったことが後遺障害に認定されると、後遺障害に対する補償(後遺障害慰謝料・逸失利益)を請求することができます。
通院が少なかったり逆に多すぎたりすると後遺障害等級に認定されない可能性が高まります。後遺障害が非該当だと、相手方にいくら交渉しても後遺障害に対する補償を請求することができません。
後遺障害等級の認定には、一定の基準を満たしている必要があります。
後遺障害の認定基準
- ① 相当期間、継続的に通院している
- ② 事故の程度が一定規模である
- ③ 症状固定まで症状が一貫して連続している
- ④ 自覚症状が医学的所見で証明できる
- ⑤ 後遺障害等級認定にふさわしい程度の症状
後遺障害等級の認定ではすべてのポイントを満たす必要があるとされています。
とくに5つのポイントのうち① と③ を証明する際に、症状に応じた通院であることが判断材料として用いられます。
▼相当期間、継続的に通院している
たとえば通院期間6ヶ月以上、通院実日数が100日以上のような場合であるにもかかわらず、
- 2-3週間に1回しか通院していない
- 受傷から1ヶ月以上も期間が空いて通院を開始した
などといった状態だと等級の認定が得られない可能性が高くなります。等級認定には相当期間のあいだ継続的な通院が必要です。
▼症状固定まで症状が一貫して連続している
症状固定とは治療をこれ以上つづけても良くも悪くもならない状態になったと診断されることです。交通事故で怪我を負ってから症状固定のあいだまで一貫して同じ症状があり、その症状が連続していることを証明するために適切な回数の通院があることは有効な判断材料となります。
月15日に縛られず症状に応じて通院すべき!
症状に応じた通院頻度で回復を目指す
通院の目的が慰謝料を得ることになってはいませんか?通院は怪我の治療が目的であることを忘れてはいけません。慰謝料のために通院して、症状に応じた通院頻度でなければさまざまなリスクを負う可能性が高まってしまいます。
また、治療が必要なのにもかかわらず治療を怠ると、
- 回復が遅れ、治療が長期化する
- 治ったはずの怪我で後遺症が残ったりする
このようなリスクが生じることも考えられます。月15日で最大限の慰謝料がもらえるから通院しないなどという選択はしないようにしてください。
医師の指示のもと適切な回数の通院をつづけることで怪我の回復めざし、かつ、最適な慰謝料の獲得を目指していきましょう。
まとめ
ひと月のあいだ15日以上の通院でも慰謝料が増額しない仕組みは、通院慰謝料の算定基準の一つである自賠責基準が関係していることが分かりました。通院慰謝料の点でみると確かにそれ以上の増額は見込めませんが、そもそも症状に応じた通院回数でなければ治療費が打ち切られたり、後遺障害等級が認定されなかったり、後々さまざまなリスクが生じる可能性があります。
月15日にしばられるのではなく、医師の指示に従って適切な治療を受けるようにすることが大切です。
交通事故の「通院日数15日」と「慰謝料」のQ&A
ひと月に15日以上通院しても慰謝料は同じ?
金額は変わりません。自賠責基準における通院慰謝料の計算式で注目したいのが、① 実際の治療日数の2倍と治療期間のどちらか少ない方を用いる/② 1ヶ月は30日として考える、という点です。15日以上通院すると採用されるのは(1ヶ月=30日)のほうなので、15日以上通院したところで30日で算定される通院慰謝料よりも多くは請求できないということになります。
通院日数しだいで治療費が打ち切られることもある?
相手方が任意保険に加入している場合は、保険会社が病院に治療費を直接支払ってくれる一括対応のサービスがとられることになるでしょう。通常、治療終了の頃合いを見はからって治療費打ち切りを打診されることが多いですが、通院が少なかったり多かったりと症状に見合わない通院をつづけていると治療費が打ち切られる可能性が高くなります。
通院日数が後遺障害等級の認定に影響する?
通院が少なかったり逆に多すぎたりすると、後遺障害等級に認定されない可能性が高まります。後遺障害が非該当だと、相手方にいくら交渉しても後遺障害に対する補償(後遺障害慰謝料や逸失利益など)を請求することができません。