交通事故の慰謝料は90日の通院期間でいくら?通院日数不足は減額?
90日間にわたる通院治療、長かったことと思います。治療中は生活が一変してしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、90日の通院期間でもらえる慰謝料はいくらになるかを解説します。
交通事故の慰謝料は、通院期間や実際に通院した日数で金額が算定されますよ。
- 慰謝料とは何か
- 通院期間と通院日数の区別
これらを整理していくと、慰謝料計算方法は分かりやすいです。
記事の後半では、特に気を付けたい通院頻度の注意も載せています。
最後までぜひ読んでみてください!
交通事故の通院慰謝料とは?
交通事故の怪我を治すために病院を受診した…こういった場合、通院慰謝料を加害者側に請求することになります。
通院慰謝料は、交通事故で負った怪我を治すために通院しなくてはいけないという精神的苦痛に対する慰謝料をいいます。
「精神的苦痛」は、個人によって感じ方が違いますよね。
しかし損害賠償のためには、金額を算定するための基準が必要になります。
そこで通院慰謝料は、精神的苦痛を負った長さをもとに金額が決まります。
通院の「期間」と「日数」の違いは
「通院の長さは?」と色んな人に質問してみると、答えは2つに分かれるのではないでしょうか。
通院の長さって?
(1)通院期間→通院開始日から治療終了日
(2)通院日数→通院期間中に実際に通院した日数
通院期間は90日でも、期間中に何日通院するかは怪我の程度によるでしょう。
交通事故の直後は「急性期」ともいわれ、激しい症状が出ることもあります。
しかし時間の経過と共に落ち着いていくことが多く、最初は毎日通院していても、だんだん通院間隔はあいていくこともあるでしょう。
90日の通院期間でも、毎日通院するわけではないですよね。
「通院期間」と「通院日数」は全くの別物です。
相手方の保険会社から提示される金額は、通院日数や通院期間を計算に使っています。
ですから、2つの違いをきちんと理解しておくことが重要ですよ。(詳細は後ほど解説します)
交通事故の慰謝料を計算する3つの基準
交通事故の慰謝料には3つの算定基準があります。
3つの算定基準を理解しておくと、相手方の保険会社から提示される慰謝料の金額について、算定根拠を推測しやすくなります。
金額が適正なのかも判断しやすくなり、損をしない慰謝料獲得の実現にグッと近づけるかもしれません!
慰謝料算定の3基準
- ① 自賠責保険の基準
- ② 任意保険の基準
- ③ 弁護士基準
- ① ② は相手方の保険をさします。相手が加入している保険会社の「保険金」を、慰謝料として受けとるイメージです。
- ③ は事故の被害者自身が依頼した弁護士をさします。弁護士、ときくと「裁判」を想像する人もいるそうですが、少し違います。
事故解決までの流れ
基本的に、交通事故の慰謝料は「示談」で決められます。
示談というのは裁判外で、双方の話し合いにより進行します。
お互いが譲歩して、両者ともに納得できる点で着地することを目的としています。
しかし、過失割合や損害賠償の範囲などで意見が対立し、示談だけではうまく話がまとまらない時があります。
そうなると、裁判やADRといった違う解決方法をとることになるのです。
「弁護士基準」というのは、裁判所でも使われている基準ではありますが、示談交渉で弁護士が使う基準でもあると理解しておきましょう。
ここからは、3つの基準について具体的な算定方法をチェックしていきましょう。
①自賠責保険の基準
「じばいせきほけん」と読みます。
自動車の運転者は義務加入の保険となっています。自賠責保険は、交通事故被害者の救済を目的としており、セーフティーネットの役割も持っています。ですから、どの保険会社でも自賠責保険の基準は同じです。
相手方が自動車であった場合、自賠責保険の基準で算定された慰謝料は必ず受けとれますよ。
通院慰謝料の計算式は下記の通りです。
計算式
入院日数 × 4200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4200円
あるいは
入院日数 × 4200円 + 通院期間 × 4200円*
※通院期間は短い方を採用
▼※通院期間は短い方を採用とは
実際に通院した日数の2倍と通院期間の日数を比較して、少ない方を計算に使用します。
→具体的には…
通院期間90日に対して、実際に通院した日数が45日であれば「45」を計算に使います。
一方で、46日であれば、2倍した時に「92」となり、90日を超えます。そこで、計算式には少ない方の「90日」を採用します。
まとめると次の通りです。
45日以下* | 46日以上* | |
---|---|---|
慰謝料の計算 | 実通院日数の2倍で計算 | 通院期間90日で計算 |
*実通院日数
②任意保険の基準
「にんいほけん」と読みます。
自動車の運転者個人が任意で加入する保険です。自賠責保険だけでは、被害者への損害賠償が不十分になる場合があるので不足分を補うために使います。各任意保険会社が自由に設定できますので、一定の基準はありませんし、公開もされていません。
以前は、任意保険の基準は統一されており、一般に公開されていました。
現在もこの基準にそっている保険会社もあるそうなので、参考に、過去の任意保険統一基準を掲載します。
1ヶ月は30日とみなしますので、通院期間が90日であれば「3ヶ月」の欄を見ます。
入院と通院の月が交わるところに金額が掲載されていますので、入院月数によって慰謝料は変動しますね。
入院なし・通院90日の場合は、378,000円となります。
基本的に、任意保険の基準は「通院期間」に着目します。
しかし、あまりに通院日数が少ない場合は、378,000円を下回る金額を提案されることもありえます。
通院頻度が半分以下の場合は、減額されてしまう傾向があるそうです。
③弁護士基準
被害者から依頼を受けた弁護士が相手方に交渉する時に使います。
計算式ではなく、下記のような表を用います。
軽傷
重傷
<軽傷>の表は、捻挫・かすりきず・打撲(うちみ)・むちうちなどの怪我などで入院・通院した時に参照してください。
通院90日は3ヶ月にあたりますので、通院3ヶ月の欄を見ます。
入院なし・通院3ヶ月の場合、
- 軽傷:530,000円
- 重傷:730,000円
となります。
重傷・軽傷で20万円も変わってくるのですね!
やはり、重症な方が精神的苦痛も大きいと判断されるようです。
【通勤期間90日】慰謝料はいくらもらえる?
通院日数別の慰謝料早見表
通院期間が90日の場合の慰謝料を計算してみましょう。
なお、任意保険の基準については現在非公開とされているので割愛します。
おおよそ、自賠責保険の基準で算定した金額よりも少し高くなる程度と思っていいようです。
実際の通院日数 | 自賠責保険の基準 | 弁護士基準(軽傷) | 弁護士基準(重傷) |
---|---|---|---|
15日 | 126,000円 | 530,000円 (注意) |
730,000円 (注意) |
30日 | 252,000円 | 530,000円 | 730,000円 |
45日 | 378,000円 | 530,000円 | 730,000円 |
60日 | 378,000円 | 530,000円 | 730,000円 |
75日 | 378,000円 | 530,000円 | 730,000円 |
自賠責保険の基準で算定した時、45日以降の金額は同じです。
これは4,200円を日額として、
- 通院期間(90日)
- 通院日数の2倍
を比較して、少ない方を計算に使うからです。
計算式のところでも解説した通りですね!
通院日数が45日までは、2倍しても通院期間の90日を上回ることはありません。
しかし、46日以降は2倍すると90日を上回るので、通院期間(90日)を計算式に使うことになるのです。
つまり、4,200円✖90(日)という計算式が、46日以降で適用されます!
慰謝料が通院日数の3.5倍分に減額!?
注意したいのは、弁護士基準での計算です。
弁護士基準では基本的に「通院期間」で計算しますので、いずれも同じ金額になっています。
ですが、通院期間の長さに対して通院頻度が低すぎる場合、実際に通院した日数の3~3.5倍を「通院期間」とみなされることもあるそうです。
たとえば、通院90日のうち、10日の通院日数だとします。
そしてこの通院日数が、怪我を治すには少なすぎると判断されてしまうと
↓
10(日)✖3=30(日)
つまり、90日(3ヶ月)通院しているのに1ヶ月分の慰謝料しかもらえなくなってしまうのです。
1ヶ月の通院慰謝料は
- 軽傷:190,000円
- 重傷:280,000円
ですので、前表の90日(3ヶ月)の通院慰謝料とくらべると
- 軽傷:530,000円→190,000円(340,000円マイナス)
- 重傷:730,000円→280,000円(450,000円マイナス)
通院頻度がいかに大切かが分かりますよね…。
「通院頻度が低い=治療の必要性がない?」と受けとられる可能性があるからです。
通院は怪我を治すためにするものですが、その頻度が低いと治療の必要性に疑問を持たれてしまうかもしれません。
弁護士基準が自賠責保険の基準や任意保険の基準よりも相場が高くなるのは、通院の長さだけでなく、怪我の程度や治療内容も考慮しているからです。
逆に、怪我の程度や治療内容から減額されてしまうこともある、ということを覚えておきましょう!
後遺症が残ったら慰謝料は増える?
通院90日を終え、何らかの後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害認定を受けられる可能性があります。
後遺障害に認定されれば、後遺障害慰謝料を請求できるので、受けとるトータルのお金は増額しますよ。
しかし、後遺障害認定を目指すうえで注目したいのは、後遺障害認定される傾向のひとつに「通院期間が6ヶ月(180日)が目安」とされていることです。
もちろん、怪我の状態などによっては一概に言えませんが、気になるところですね…。
ご自身の後遺症が「後遺障害」に認定されうるものなのか…?こういった不安・お悩みがあれば、弁護士に相談してみましょう。交通事故の被害者の方からの法律相談については、無料で受け付けている法律事務所は多いようです!法律事務所ごとに無料相談の条件・範囲があるので、相談前に料金体系もおさえておきましょう!
後遺障害については、他の記事でも詳しく解説しています。
もしかするとお悩みの後遺症に近いものがあるかもしれません。一度チェックしてみてくださいね。
交通事故の怪我と後遺障害
通院90日で慰謝料はいくらになる?計算してみよう!
慰謝料計算機なら「あなた」の慰謝料がわかる
情報を入力するだけで、慰謝料をはじめ、休業損害など「受けとるお金の目安」を算定する便利ツールがあります。
それは慰謝料計算機です!難しい操作はいりませんので、入力してみませんか。
計算結果は、弁護士基準に基づいています。
慰謝料の相場が最も高い基準です!今、相手方の保険会社から提案を受けている人は「交渉の余地はあるのかな?」などと判断する材料にしてくださいね。
まとめ
90日の通院期間での慰謝料は、自賠責保険の基準を用いる場合は実際の通院日数とのバランスが重要です。
なかには、「たくさん通院しても、自賠責保険の基準だと慰謝料が増えないんだ」と判断してしまう人もいるようです。
確かに、慰謝料の金額と通院日数は比例して増え続けるわけではありません。
一番大事な目的は、きちんと治療して怪我を治すことです。
医師としっかりコミュニケーションをして、適切な通院頻度を守りましょう。
通院90日の交通事故慰謝料についてのQ&A
慰謝料を決める「通院の長さ」って?
交通事故の通院の慰謝料は、通院の長さで決まります。自賠責保険の基準で算定する時には、<通院した期間>と<実際に通院した日数の2倍>の「少ない方」を、慰謝料算定の式に採用します。自賠責保険の基準をつかって慰謝料を計算する時、通院の長さが何をさすのかは特に気を付けなくてはいけません。
慰謝料が減らされる時があるってホント?
ありえます。弁護士基準で慰謝料を算定する際、通院期間の長さに対してあまりに通院日数が少ない時、慰謝料が減額となる恐れがあります。実際の通院日数の3倍または3.5倍が「通院期間」とみなされますので、通常時と比べて数十万円の減額も起こる可能性があります。
後遺症が残れば慰謝料は増額される?
後遺障害に認定されれば、後遺障害慰謝料を受けとれる可能性があります。後遺障害慰謝料は、通院慰謝料とは別に支払われますので、受けとるトータルのお金は増額となります。ポイントとしては、後遺障害に認定される傾向として「通院期間6ヶ月以上」が目安とされていることです。ご不安があれば、ご自身の後遺症が後遺障害認定の見込みがあるのか相談することをおすすめします。