交通事故の慰謝料|打撲の慰謝料はこう計算!減額されないためには?
交通事故にあい、幸いにも大きな怪我には至らなかった。
でも、打撲をしてしまった…。いわゆる「軽傷」のとき、慰謝料を受けとることはできるのでしょうか。
結論から言いますと、慰謝料の請求は可能です。
今回は慰謝料の計算方法・相場を説明するとともに、慰謝料が減らされてしまうリスクも解説します。
交通事故で打撲!慰謝料はもらえる?
まずは病院へ行きましょう
交通事故にあったら、必ず病院へ行って診察を受けましょう。
それには大きく2つの理由があります。
病院へ行く理由
- ① 医師に診察してもらうため
- ② 人身事故として警察に届け出るため
2つの理由をもう少し詳しくみていきましょう。
①医師の診察
「交通事故で相手方と接触し、転んでしまった。
その時に膝を打ち付けてしまい、どうやら打撲のようだ…。」
見えないだけで、骨が欠けていたりするかもしれません。
素人判断で「打撲だな。」と結論付けるのは、適切ではないでしょう。
怪我の中には、交通事故の直後ではなく、少し時間が経ってから症状が発現するものもあります。
- むちうち、むちうちに伴う吐き気やめまい
- 脳出血、硬膜下血腫などの頭の怪我
交通事故にあったら、必ず早い段階で医師の診察を受けることが重要です。
医師による診断と怪我の早期発見のため、そして症状が交通事故によって引き起こされていること(交通事故との因果関係)を確かにするためです。
あまり日があいてから「交通事故にあったから、首が痛い!」と訴えても、認められない可能性もあります。交通事故との因果関係がなければ、慰謝料は受けとれません。
②人身事故として届け出る
交通事故には「人身事故」と「物損事故」の2種類があります。
それぞれの違いを下表にまとめました。
人身事故 | 物損事故 | |
---|---|---|
慰謝料 | 対象になる | 対象にならない |
人的損害 | あり | なし |
医師の診断書 | 必要 | 不要 |
人身事故と物損事故の違いはいくつかありますが、人が怪我をしたり、死亡してしまったり…人に損害が発生している事故は人身事故に該当します。
一方で、人の損害はなく、物の損害のみであれば物損事故とされます。
<例>家の駐車場に止めていた車に他車が突っ込んできた。
(1)駐車していた車には人が乗車していた→人身事故
(2)弾みで車が動いて人にぶつかった→人身事故
(3)弾みで車が動いて庭の盆栽が割れた→物損事故
このように「人」がかかわっているかで「人身事故」か「物損事故」かは分かれます。
人身事故として警察に届け出るためには、医師の診断書が必要です。
表内にあるように、原則として慰謝料は「人身事故」に適用されます。
なぜなら慰謝料は、交通事故の怪我によって負った精神的苦痛をいうからです。
例(1)や例(2)は慰謝料の対象となりますが、それは怪我をした人が入院・通院させられたという精神的苦痛に対して発生しています。
「大事な車が傷ついてしまった」ということへの慰謝料ではありません。
(3)についても同じで同様です。これまでにペットが怪我をしたことで慰謝料が認められた判例はありますが、例外だと思っておきましょう。
盆栽が壊れてしまったこと、つまり「物を失ったこと」「物が傷つけられたこと」の精神的苦痛に対しては、原則として慰謝料は発生しません。
ここまでのまとめ
- 交通事故にあったら、自己判断せず、病院で医師の診察を受けること。
- 医師の診断書を元に、警察へ人身事故として届け出ること。
怪我の完治のためにも、スムーズに慰謝料を受けとるためにも、まずは病院を受診しましょう。
打撲の慰謝料は「○○慰謝料」
交通事故の怪我に関する慰謝料は2種類あります。
- ① 入通院慰謝料
- ② 後遺障害慰謝料
打撲で受けとる慰謝料=「入通院慰謝料」が原則になるでしょう。
その理由をお伝えします。
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料のちがい
入通院慰謝料 | 後遺障害慰謝料 | |
---|---|---|
後遺障害認定の必要 | なし | あり |
金額の決まり方 | 入通院の期間、実際の治療日数 | 後遺障害認定された等級 |
大まかにまとめるとこのようなイメージです。
入通院慰謝料は、後遺障害認定を受けなくてももらえる慰謝料です。
入通院の期間や実際に治療を受けた日数などを使って計算します。
後遺障害慰謝料は、後遺障害認定をうけて初めて請求できるものです。
後遺障害というのは、次のようなものです。
後遺障害とは
- 交通事故での怪我が原因となっている
- 医学的に適切な方法で治療を継続したが症状が残っている
- 将来的に回復が難しいと見込まれる肉体的・精神的な症状
- 症状の存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うこと
後遺障害として認められるということは、後遺障害等級が認定されるということです。
1級から14級までの「後遺障害等級」があり、どういう症状なら〇級、というのが決められています。
身体に残った症状が後遺障害として等級認定されれば、後遺障害慰謝料が認められます。
打撲だけでは、一般的には後遺障害認定を受けることはないと思われます。
ですので、打撲で受けとる慰謝料は入通院慰謝料と考えて問題ないでしょう。
打撲|交通事故の慰謝料計算式
入通院慰謝料ですが、実は計算の仕方は3つあります。
どうやって計算するかで金額が変わってきます。
慰謝料の計算①自賠責保険の基準
算定方法
計算式に当てはめます。
入院日数 × 4200円 + 通院期間(実治療日数 × 2) × 4200円
あるいは
入院日数 × 4200円 + 通院期間 × 4200円
入院も通院も1日あたり4,200円として考えています。
通院期間は、いずれかの短い方を採用します。
例えば、通院期間が1ヶ月(30日)、実治療日数(実際の通院日数)が10日だとしましょう。
この場合は、実治療日数10日✖2=20日のほうが、通院期間の30日より短いですね。
計算は少ない方を採用しますので、実治療日数✖2を計算に使います。
慰謝料の計算②任意保険の基準
算定方法
保険会社により異なるのが現状です。
以前は、統一した一定の基準があり、一般にも公開されていました。
今は各保険会社にゆだねられており、金額はバラバラです。
傾向としては以前の統一基準に近かったり、踏襲されているようです。
下表は、以前に公開されていた基準です。
慰謝料の計算③弁護士基準
算定方法
一定の基準表にそって算定されます。
上表のように、入院月数と通院月数で交わる部分を見ます。
▶入院0ヶ月・通院1ヶ月→19万円
▶入院2ヶ月・通院3ヶ月→109万円
慰謝料を計算してみた!打撲の慰謝料相場は?
ここからは、色々なパターンの入通院慰謝料をみていきましょう。
ちなみに、「入通院慰謝料」のほか、通院にかかった交通費や、治療費は別途請求することになりますよ。
任意保険基準の算定結果は、旧基準に基づいています。あくまで目安であることをご留意ください。
【通院1週間・治療3日間】打撲の慰謝料
<ケース①>
- 入院なし
- 通院1週間
- 実際の治療3日間
自賠責保険の基準
通院は1週間だから7日間、実際の治療は3日間通った場合です。
実治療日数を2倍すると「6」なので、通院7日間より小さくなります。
ですから、計算に使うのは実治療日数の2倍です。
慰謝料:25,200円(4,200円(日額)✖6)
これが「入通院慰謝料」となります。
任意保険の基準
先ほどの表に基づくと、入院なし・通院1ヶ月で126,000円になります。
30日で126,000円なので、1日あたりは4,200円となりますね。
通院期間が7日間ですので、計算式は次の通りになります。
慰謝料:25,200円(4,200円(日額)✖7)
自賠責保険の基準と同じく、任意保険基準で算定した時も入通院慰謝料は25,200円です。
弁護士基準
先ほどの表によれば、入院なし・通院1ヶ月は190,000円になります。
30日で190,000円なので、1日あたりは約6,333円となります。
慰謝料:37,998円(6,333円(日額)✖6)
【通院9日間・治療7日間】打撲の慰謝料
<ケース②>
- 入院なし
- 通院9日間
- 実際の治療7日間
自賠責保険の基準
通院は9日間、実際の治療に7日間通った場合です。
実治療日数を2倍すると「14」なので、通院9日間の方が少なくなります。
ですから、計算に使うのは通院期間の「9日」です。
慰謝料:37,800円(4,200円(日額)✖9)
これが「入通院慰謝料」となります。
任意保険の基準
先ほどの表に基づくと、入院なし・通院1ヶ月で126,000円になります。
30日で126,000円なので、1日あたりは4,200円となりますね。
慰謝料:37,800円(4,200円(日額)✖9)
自賠責保険の基準と同じく、この金額が入通院慰謝料です。
弁護士基準
先ほどの表によれば、入院なし・通院1ヶ月は190,000円になります。
30日で190,000円なので、1日あたりは約6,333円となります。
慰謝料:56,997円(6,333円(日額)✖9)
【通院1ヶ月・治療16日間】打撲の慰謝料
<ケース③>
- 入院なし
- 通院30日間
- 実際の治療16日間
自賠責保険の基準
通院は30日間、実際の治療に16日間通った場合です。
実治療日数を2倍すると「32」なので、通院30日間の方が少なくなります。
ですから、計算に使うのは通院期間の「30日」です。
慰謝料:126,000円(4,200円(日額)✖30)
これが「入通院慰謝料」となります。
任意保険の基準
先ほどの表によれば、入院なし・通院1ヶ月は126,000円になります。
慰謝料:126,000円
自賠責保険の基準と同じく、この金額が入通院慰謝料です。
弁護士基準
先ほどの表によれば、入院なし・通院1ヶ月は190,000円になります。
慰謝料:190,000円
【入院3日・通院日数25日・通院1ヶ月半】打撲の慰謝料
<ケース④>
- 入院3日
- 通院期間45日間
- 実際の治療25日間
自賠責保険の基準
入院3日、通院期間は45日、そのうち実際に治療した日数が25日の場合です。
実治療日数25日を2倍すると50日なので、通院期間45日の少ない方を採用します。
慰謝料:
▼入院:4,200円(日額)✖3= 12,600円
▼通院:4,200円(日額)✖45= 189,000円
12,600円+189,000円=201,600円
入院分と通院分の合計が「入通院慰謝料」となります。
任意保険の基準
先ほどの表を参考に、まず入院3日分を出してみます。
通院0ヶ月・入院1ヶ月の場合は、252,000円です。
252,000円を30日で割ると、1日あたり8,400円であると分かります。
入院3日分は8,400円✖3=25,200円です。
通院の1ヶ月半ですが、まず通院を2ヶ月とすると252,000円ですね。
通院1ヶ月だと126,000円なので、引き算すると「通院2ヶ月目の慰謝料」がわかります。
252,000円から126,000円を引くと、126,000円。
通院2ヶ月目は126,000円なので、30日で割ると4,200円です。
通院1ヶ月半は通院1ヶ月+2ヶ月目の慰謝料15日分と考えますので、126,000円+(4,200円✖15日)=189,000円となります。
慰謝料:
▼入院: 25,200円
▼通院: 189,000円
25,200円+189,000円=214,200円
弁護士基準
先ほどの表を参考に、まず入院3日分を出してみます。
通院0ヶ月・入院1ヶ月の場合は、350,000円です。
350,000円を30日で割ると、1日あたり約11,600円であると分かります。
入院3日分は約11,600円✖3=34,998円です。
通院の1ヶ月半の考え方は、1ヶ月と半月というように分けて考えます。
まず半月分ですが、この半月は2ヶ月目にあたりますね。
通院2ヶ月だと360,000円、通院1ヶ月だと190,000円ですので、引き算すると「通院2ヶ月目の慰謝料」がわかります。
360,000円から190,000円を引くと、170,000円。
通院2ヶ月目は170,000円なので、30日で割ると2ヶ月目の日額が約5,666円とわかります。
通院1ヶ月半は通院1ヶ月+2ヶ月目の慰謝料15日分と考えますので、190,000円+(5,666円✖15日)=274,990円となります。
慰謝料:
▼入院: 34,998円
▼通院: 274,990円
34,998円+274,990円=309,988円
慰謝料が減額されるかも!?NG行動してませんか?
慰謝料の計算には入院・通院した期間が重要になると分かりましたね。
ではどんな風に通院してもいいのか?という疑問がわきませんか?
入通院慰謝料は、入院・通院や怪我をしたことの精神的苦痛に対して支払われます。
ですから、きちんと通院して治そうとしているかというのも、実は見られていますよ。
場合によっては、慰謝料を減らされることにもなるかもしれません!
通院日数や通院頻度は適切に
通院頻度が少なすぎると、きちんと治すことにはつながりませんね。
かといって、途中からたくさん通院しても、適切とは言えません。
打撲が軽傷で、レントゲンなどで異常が確認できない場合には特に要注意です。
通院が長期間となっている場合、症状、治療内容、通院頻度を考慮して、実際の通院日数の3倍を「通院期間」としてみなすこともあるそうです。
慰謝料計算機|軽傷もOK|打撲の慰謝料が自動でわかる
自動計算の「慰謝料計算機」でラクラク計算
慰謝料の計算は、入院通院日数を掛け算したりと面倒ですね。
そんな方におすすめの便利ツールが「慰謝料計算機」です。
慰謝料計算結果は弁護士基準のものになるので、その点だけ注意してくださいね。
まとめ
打撲は軽傷ですが、もちろん慰謝料の対象となります。
保険会社の間では「DMK136」と言われる怪我があります。
Daboku=打撲
Muchiuchi=むちうち
Kossetsu=骨折
で、DMKです。
打撲は1ヶ月、むちうちは3ヶ月、骨折は6ヶ月…のように、おおよそ治療にかかる期間を予測している保険会社もあるようです。
しかし、怪我の程度は人それぞれ。まずは、適切な治療期間で治療に専念してくださいね。
元の生活を取り戻せることをお祈りしています。
交通事故での打撲の慰謝料に関するQ&A
打撲でもすぐに病院へ行くべき?
怪我の診断は医師の診察を受けましょう。外観からは分からなくても、骨が欠けていたりするかもしれません。また、事故直後には症状がでなくても、少し時間が経ってから症状が表れる可能性があります。また、交通事故から日が経ってから受診しても、その怪我の原因が交通事故にあると示しにくくなります。医師による診断・怪我の早期発見、そして交通事故との因果関係を明らかにするためにも、早期に病院を受診しましょう。
打撲で慰謝料はもらえるの?
もらえます。交通事故の怪我に関する慰謝料には、① 入通院慰謝料、② 後遺障害慰謝料の2つがあります。入通院慰謝料は、交通事故の治療のために入院・通院した場合に受けとる慰謝料をいいます。後遺障害慰謝料は、後遺障害が残った時に受けとる慰謝料のことです。打撲だけでは、一般的には後遺障害認定を受けることはないでしょう。つまり、打撲で受けとる慰謝料は入通院慰謝料と考えて問題ないでしょう。
打撲の慰謝料に相場はあるの?
入通院慰謝料は、入院・通院した時間の長さがポイントになります。ですから、通院した日数によってある程度は慰謝料の目安を算出できます。例えば、<入院なし・通院期間1週間・実際の通院日数が3日間>のケースは、自賠責保険の基準で25200円が慰謝料の金額になります。