交通事故慰謝料|通院8ヶ月|金額はどう決まる?相場と計算方法は?
交通事故で8ヶ月通院した場合の慰謝料について解説します。
8ヶ月の通院期間では多くのご苦労をされたことと思います。
この記事では、
- 入院、通院に対する慰謝料の計算
- 慰謝料の金額がひと目で分かる早見表
- 後遺症が残った場合
を主に説明していきます。
- 後遺症もなく怪我が完治した方
- 何らかの後遺症が残ってしまった方
どちらの方も、読んで損はない・知っておけば安心につながる内容です。
ぜひ最後までお読みください。
交通事故の通院慰謝料|通院の日数・期間が金額の決め手
慰謝料は、交通事故で被害者が受けた精神的苦痛を和らげるために加害者が支払うお金をいいます。
8ヶ月通院したことへの慰謝料は通院慰謝料として、加害者に損害賠償を求めることができます。
入院・通院をあわせて入通院慰謝料とよぶこともあります。
精神的苦痛は目に見えませんし、感じ方には個人差も出てきます。精神的苦痛を金銭にかえるには、精神的苦痛の程度を測る物差しが必要です。
そこで交通事故の損害賠償では、入院・通院で苦しんだ時間の長さで精神的苦痛をはかり、お金に置き換えられるようにしているのです。
重要
入通院にかかった時間の長さが入通院慰謝料の決め手となる
慰謝料を誰が算定するかも重要です。
算定者は3つに分かれ、
- ① 自賠責保険の基準
- ② 任意保険の基準
- ③ 弁護士基準
となっています。
そして、それぞれの3基準で同じ交通事故の慰謝料を見積もっても、結果はバラバラになる可能性があります。
3つの基準を見ていきましょう。
通院慰謝料を計算する「3基準」
①自賠責保険の基準
自賠責保険は、自動車の運転者に加入義務のある保険です。
被害者救済を目的としており、最低限の補償を目的としています。
1日あたり4,200円が認められており、下記の計算式で求めることができます。
算定式
入院日数 × 4,200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4,200円
あるいは
入院日数 × 4,200円 + 通院期間 × 4,200円*
※通院期間は短い方を採用
通院期間は、
- 入院日数+実際の通院日数の合計の2倍
- 入通院期間(通院開始~終了まで)
この2つを比べて、短い方を4,200円で掛け算します。
例を元に考えてみましょう。
(例)
- 通院期間:8ヶ月(240日間)
- 入院日数:20日
- 実通院日数:100日
↓
「実通院日数」は2倍すると200日となり、入院の20日とあわせて220日です。
通院期間の8ヶ月(240日)とくらべて「220日」のほうが少なくなるので、計算に用いる数字は「220」です。
→ 4,200(円)✖220(日)=924,000円
②任意保険の基準
任意保険は、自動車の運転者が任意で加入する保険です。
運転者によって加入状況が違い、場合によっては相手が任意保険未加入の可能性もあります。
被害者への損害賠償は自賠責保険で補償されますが、補償される範囲には上限があります。
傷害部分については、最大120万円までとなっているんです。
「傷害部分」というのは、交通事故による怪我の部分に対する補償をいいます。
▼傷害部分の例
- 入通院慰謝料
- 入院雑費
- 治療費用
- リハビリ費用
- 装具費用
これらをすべて含んで120万円です。
被害者の怪我や行った治療にもよりますが、8ヶ月通院していると120万円を超える可能性が充分あります。
自賠責保険の上限120万円を超えた分を補てんするために、任意保険があるのです。
POINT
- 任意保険に加入するかは運転者にゆだねられている
- 自賠責保険で支払われる「補償上限120万円」を超過した分を任意保険が補てんする
「任意保険の基準、慰謝料はどう計算したらいい?」
↓
任意保険の基準は、現在公開されていません。
保険会社ごとに算定方法があるので、金額や計算方法を一律に示すことはできないのです。
以前公開されていた旧基準は後半に掲載しています。おおよそのイメージをつかむため、参考程度にご活用ください。
ちなみに、基本的には、任意保険の基準で算定した慰謝料の金額は、自賠責保険の基準よりもやや高く、この後紹介する弁護士基準よりも低いとされています。
③弁護士基準
弁護士基準は、示談などで加害者側と交渉する時、弁護士が算定基準として使います。
裁判所でも使われているもので、慰謝料の相場は自賠責保険の基準・任意保険の基準よりも高くなります。
算定表は2つありますが、基本は「重傷」をみると思ってください。
詳細は、次章に掲載している算定表をご覧ください。
通院8ヶ月の慰謝料の相場は?金額をチェック!
通院8ヶ月・入院なしの慰謝料早見表
まずは、入院なし・通院8ヶ月の慰謝料からみてみます。
任意保険の基準は、各保険会社によって異なっており非公開になっていますので、割愛します。
自賠責保険の基準を少し上回るか、変わらない金額だと考えておきましょう。
実際の通院日数 | 自賠責 | 弁護士 (軽傷) |
弁護士 (重傷) |
---|---|---|---|
20日 | 168,000円 | 1,030,000円 (注意) |
1,320,000円 (注意) |
50日 | 420,000円 | 1,030,000円 | 1,320,000円 |
80日 | 672,000円 | 1,030,000円 | 1,320,000円 |
120日 | 1,008,000円 | 1,030,000円 | 1,320,000円 |
140日 | 1,008,000円 | 1,030,000円 | 1,320,000円 |
170日 | 1,008,000円 | 1,030,000円 | 1,320,000円 |
算定する基準が変われば慰謝料の金額は変わります。
自賠責保険の基準について
1日あたり4,200円で計算します。
自賠責保険の基準:入通院慰謝料
入院日数 × 4,200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4,200円
あるいは
入院日数 × 4,200円 + 通院期間 × 4,200円*
※通院期間は短い方を採用
通院の長さは短い方を採用します。
実際の通院日数が
- 110日→2倍して220日→入通院期間の240日を下回る
- 140日→2倍して280日→入通院期間の240日を上回る
4,200円は同じでも、掛け算する機関が違うから金額は変わっていきます。
120日と170日で計算結果が同じなのは、2倍した時に入通院期間(240日)と同じか、上回っているからです。
もっと細かく言えば、通院日数が120日になった時点から通院慰謝料の金額は変わりません。
弁護士基準について
弁護士基準で慰謝料算定する時には、入通院期間がポイントになります。
ですから、実際の通院日数によって変動することは基本的にないです。
しかし、注意したいのは入通院期間の長さに対して、実際に通院している日数が極端に少ない場合です。
- 入通院期間と実際の通院日数のバランス
- 行われている治療内容
など様々な角度から検討された結果、実際の通院日数の3~3.5倍が入通院期間として認定されてしまう可能性があるのです。
「それって慰謝料が減るのでは…?」
↓
減ってしまいます。
次の例を考えてみましょう。
通院8ヶ月・実通院日数が12日間の事例で減額されてしまった場合を考えてみましょう。
治療日数が少なく、弁護士基準でも減額されてしまうとこうなります。
12(日)✖3=36(日)
↓
通院期間36日=1ヶ月と6日間
8ヶ月通院したのに、1ヶ月と少ししか認められない…。
これを数字で見ると、驚きの結果になりますよ。
- 軽傷:約190,000円(8ヶ月通院だと:1,030,000円)= 約840,000円マイナス
- 重傷:約280,000円(8ヶ月通院だと:1,320,000円)= 約1,040,000円マイナス
大幅ダウンになってしまいますね…。
慰謝料が通常の計算よりも減ってしまったり、通院そのものの必要性にも疑問を持たれてしまう恐れもあります。
通院日数の少なさに不安を感じている方向けに、もう少しくわしく解説している記事もあります。<関連記事:通院日数が少ない時の慰謝料>もあわせてお読みください。
通院8ヶ月・入院「あり」の慰謝料早見表
入院を経て通院している場合もあるかと思います。
<入院1ヶ月+通院8ヶ月>の慰謝料を、実際の通院日数別にまとめてみました。
実際の通院日数 | 自賠責 | 弁護士 (軽傷) |
弁護士 (重傷) |
---|---|---|---|
入院1ヶ月+20日 | 294,000円 | 1,250,000円 (注意) |
1,640,000円 (注意) |
入院1ヶ月+50日 | 546,000円 | 1,250,000円 | 1,640,000円 |
入院1ヶ月+80日 | 798,000円 | 1,250,000円 | 1,640,000円 |
入院1ヶ月 +120日以降 |
1,008,000円 | 1,250,000円 | 1,640,000円 |
ここで、冒頭で解説した「自賠責保険の基準の上限」の話を振り返っておきましょう。
ふりかえり
自賠責保険の基準で「傷害部分」は120万円まで
つまり、120万円を超えた分については相手方の任意保険会社に求めることになります。
そして、加害者が任意保険未加入であれば、相手の資力などにより、支払いがスムーズに行われない可能性もあります。
120万円を超えた場合については、<関連記事「120万円超えたら」>もお役立てください。
次に、入院期間が1ヶ月よりも長くなる場合の目安をまとめてみました。
自賠責保険の基準
8ヶ月中の 実通院日数 |
入院2ヶ月 | 入院3ヶ月 |
---|---|---|
20日:168,000円 | 252,000円 | 378,000円 |
50日:420,000円 | 入院4ヶ月 | 入院5ヶ月 |
80日:672,000円 | 504,000円 | 630,000円 |
120日:1,008,000円 | 入院6ヶ月 | 入院7ヶ月 |
140日:1,008,000円 | 756,000円 | 882,000円 |
170日:1,008,000円 | 入院8ヶ月 | 入院9ヶ月 |
882,000円 | 1,008,000円 |
入院慰謝料は、4,200円✖入院日数で求めることができます。
▼表のみかた
一番左が、通院期間8ヶ月のうちの「実際の通院日数」に応じた慰謝料です。
右側の入院月数分の慰謝料を足し算すれば、〇ヶ月分の入通院慰謝料+通院期間8ヶ月(実通院日数に応じる)の目安が分かりますよ。
もっとも、通院期間8ヶ月のうち「120日の通院分」だけで100万円を超えます。
さらに入院2ヶ月していると、252,000円が上乗せされ、自賠責保険の基準で計算すると120万円を超えることになります。
自賠責保険の限度額(傷害分:120万円)を超えているため、自賠責保険の基準では慰謝料が算定されなくなります。
任意保険の基準
以前の任意保険基準による入通院慰謝料基準表です。
現在は使われていませんので、参考程度にご活用ください。
弁護士基準
弁護士基準は次の表を参照します。
「軽傷」「重傷」と表が2つにわかれていますので、当てはまる傷病の表をご覧ください。
▼むちうち、打撲(うちみ)、擦り傷、捻挫
▼上記以外の傷病
後遺症が残ったら「後遺障害」認定を目指そう
損害賠償の内訳はこの通りです。
中央のブルーの部分は後遺障害に認定されれば請求できるお金になります。
つまり、後遺障害に認定されたら後遺障害慰謝料などが認められ、受けとるお金の総額は増えます。
後遺障害の認定とは、医師から「後遺症が残った」と認められることではありません。
必要なのは、損害保険料率算出機構に申請をして後遺障害等級認定を受けることです。
後遺障害等級は、障害の部位や程度に応じてあらかじめ決められています。
ですので、ご自身の身体に残った後遺症が「どの後遺障害等級に当てはまるのか」の目途をつけ、認定されるように申請をすべきです。
たとえば
「足の怪我の後遺症で、片足だけ足が短くなった」を例に説明します。
1下肢の短縮については、次のように後遺障害等級が定められています。
- 5センチメートル以上の短縮:8級
- 3センチメートル以上の短縮:10級
- 1センチメートル以上の短縮:12級
このように、「何センチメートル短縮したか」が重要です。
「短くなりました」とだけ申請するのではなく、具体的に何センチメートル短くなったのかを示さないと、等級はつかないでしょう。
また、「0.5cmの短縮」と書いても、原則、後遺障害にはあたりません。
後遺障害認定に関しては、以下の関連記事でもとりあげています。
後遺障害認定の関連記事
リハビリ通院も通院日数に含まれる?
回答
リハビリも通院日数に含まれます。
通院交通費、リハビリの費用、そして通院慰謝料の対象です。
交通事故にあう前の状態を取り戻すために必要なリハビリはきちんと認められます。
骨折した→骨がくっついた→すぐ元通り!のように、うまくいくことはあまりないようです。
骨がくっついても、動かしづらさや痛みなどの症状が残る可能性は十分にありますので、元通りの状態に戻すためにリハビリを行います。
交通事故にあう前の状態に戻すためのリハビリですので、通院日数に含まれます。
「慰謝料計算機」は示談交渉に必須のツールです
示談交渉を有利に進めるポイントが分かる?
慰謝料の計算には、自賠責保険の基準・任意保険の基準・弁護士基準の3つがあります。
そして、どの基準を使うかで結果が変わることが分かりましたね。
示談交渉の多くは、加害者側(相手方)から示談内容の提案を受けて開始します。
提案内容は、自賠責保険の基準か任意保険の基準のどちらかに基づいて算定されています。
この慰謝料計算機は、弁護士基準での算定です。つまり、相手方の提案内容よりは高額の結果になるかと思います。
2つの結果を見比べることで、どの費目に差が出ているか一目瞭然!
その差が出ている項目について、交渉を進めることが有効です。
まとめ
通院8ヶ月の場合の慰謝料について、確認をしてきました。
慰謝料の求め方、各基準の違いや相場はなんとなく掴んでいただけたかとおもいます。
交渉時のポイントとして、最後にひとこと。
相手の保険会社に対して「低いじゃないか!」と問い詰めたり、声を荒げたりすることはあまり好ましくありません。
感情的になってしまうと、ご自身の主張が相手に正しく伝わりづらくなる恐れがあります。
交渉が長引きすぎても、結局のところ慰謝料の受け取りが延びてしまいます。
適切な慰謝料獲得につながること、そしてスムーズに社会復帰されることをお祈りしております。
通院8ヶ月の交通事故慰謝料についてのQ&A
通院慰謝料の「弁護士基準」とは?
通院慰謝料は、① 自賠責保険の基準、② 任意保険の基準、③ 弁護士基準と算定基準が3つあります。① 自賠責保険の基準は、相手方の自賠責保険会社に請求する時の基準。② 任意保険の基準は、相手方の任意保険会社から金額提案を受ける時の基準。③ 弁護士基準は弁護士が示談交渉したり、裁判所で用いられる基準です。
通院8ヶ月の慰謝料はいくら?
自賠責保険の基準で算定すると、通院50日で672000円、通院80日で672000円となります。弁護士基準では、軽傷で103万円、重症で132万円が相場とされています。もっとも、自賠責保険から支払われる通院慰謝料は120万円までと上限が設けられています。通院日数次第では、自賠責保険から慰謝料の全額を受けとることは難しくなる可能性があります。
後遺障害認定を受けるメリットは?
受けとるお金が増えるというメリットがあげられます。後遺障害に認定されれば、後遺障害等級が通知されます。その後遺障害等級をもとに、「後遺障害慰謝料」を請求することができます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて目安額が定められています。後遺障害慰謝料は、入通院慰謝料とは別に支払われます。
リハビリ費用も相手方に請求できる?
リハビリも通院日数に含めることができ、通院交通費・リハビリ費用・通院慰謝料の対象です。骨折などの場合、折れた骨がくっついても、すぐに元通りというわけにはいきません。リハビリを通して交通事故にあうまでの状態に戻していくことが必要で、そのための費用は適切に認められます。