交通事故の死亡慰謝料|自営業・個人事業主の場合の計算方法を解説!
交通事故で被害者の方が亡くなると、加害者側に死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬祭費を請求することができます。
その相場額は、サラリーマンの場合、主婦の場合、学生の場合などで異なります。
この記事では、自営業・個人事業主の方が被害者だった場合の相場額などについて解説していきます。
交通事故で死亡したら|請求できる慰謝料は?
死亡事故の慰謝料・賠償金の内訳は?
交通事故で被害者の方が亡くなられると、加害者側には死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬祭費を請求することができます。
- 死亡慰謝料:交通事故で死亡した被害者やその家族の精神的苦痛に対する補償
- 死亡逸失利益:交通事故に遭わなければ得られていたと思われる将来の収入・利益に対する補償
- 葬祭費:通夜、葬儀、墓石、位牌などの費用
この他、亡くなられるまでの間に入通院期間があったり、後遺障害等級に認定されたりしていた場合には、
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 休業損害
- 治療関係費
等を請求することができます。
これらの相場金額については、こちらの記事をご覧ください。
慰謝料の3つの基準に要注意
ここからは、自営業・個人事業主の方の死亡慰謝料・死亡逸失利益の相場金額や計算方法について解説しています。
それにあたって、まずは交通事故慰謝料の3つの金額基準について解説しておきます。
交通事故の慰謝料には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの金額基準があります。
自賠責基準 | 被害者が受け取ることのできる最低限の金額基準 |
---|---|
任意保険基準 | 示談交渉の際に加害者側の保険会社が提示する金額基準 |
弁護士基準 | 示談交渉の際に被害者側の弁護士が提示する金額 |
示談交渉の際に加害者側から提示される「任意保険基準」の金額は、各保険会社ごとに定められた金額です。
これは、自賠責基準に少し上乗せした程度と言われています。つまり、最低限の金額に近い金額であるということです。
それに対して弁護士基準は、過去の判例に基づいて決められているため、最も妥当性が高いということができます。
示談交渉の際には、加害者側から提示された金額をどれだけ弁護士基準の金額まで近づけられるかがポイントになります。
自営業・個人事業主の死亡慰謝料|相場・計算方法は?
死亡慰謝料の相場金額は?
死亡慰謝料は、被害者の方が生前家族内でどのような立場にあったかによって決まっています。
自営業・個人事業主の方の場合、扶養家族のいる「一家の支柱」もしくは扶養家族のいない「独身」に該当することが多いかと思います。
「一家の支柱」と「独身」の方の死亡慰謝料は、以下のようになります。
一家の支柱 | 独身 | |
---|---|---|
任意保険基準 | 1500万~2000万円 | 1300万~1600万円 |
弁護士基準 | 2800万円 | 2000万~2500万円 |
表を見てもわかる通り、弁護士基準と任意保険基準では大きな差があります。
いくらお金をもらっても、亡くなった方が戻ってくるわけではないので、いくらもらえたら十分ということは言えません。いくらもらっても不十分なくらいかと思います。
しかし一般的な相場としては、一家の支柱であれ2800万円、独身であれば2000万~2500万円が、過去の判例から考えても妥当である、ということになります。
示談交渉で目指す金額の目安としてお考え下さい。
死亡慰謝料が増額されるケースは?
死亡事故といっても、その状況は様々です。
以下のような場合には、上でご紹介した死亡慰謝料よりも高い金額を請求できる可能性があります。
- 加害者に故意・重大な過失・不誠実な態度があった場合
- 被害者の死を受けて、家族が精神疾患を患った場合
- 死亡時の状況から、苦痛苦悶が特に強かったと考えられる場合
- 新婚だった、努力の末に夢をかなえたばかりなど、特に無念であったと考えられる場合
上記のような事情が認められる場合には、慰謝料が増額される可能性があります。
ただし、こういう場合にはいくら増額、と明確な金額が決まっているわけではないため、増額幅も示談交渉次第となります。
どれくらいの増額が妥当なのかわからない、十分に増額させたいという場合には、一度弁護士に問い合わせてみるのもいいかと思います。
自営業・個人事業主の死亡逸失利益
死亡逸失利益の計算方法は?
交通事故の死亡慰謝料は、以下の計算式から計算されます。
死亡慰謝料の計算式
死亡逸失利益=年収×(1‐生活費控除率)×死亡により就労できなくなった年数に対するライプニッツ係数
逸失利益の計算式は、任意保険基準でも弁護士基準でも同じです。
ただし、任意保険が提示する死亡逸失利益は、年収や就労できなくなった年数を少なく見積もって計算している可能性があります。
金額が提示されたときには、その計算式まで確認することをお勧めします。
また、式を見ても生活費控除率やライプニッツ係数など聞きなれない要素があるかと思います。
一つずつ解説し、その後実際の計算例もご紹介いたしますのでご確認ください。
年収
交通事故に遭う前の年収を採用します。
ただし自営業・個人事業主の方の場合、年収とは確定申告で申告している所得の金額になります。
生活費控除率
死亡逸失利益では、交通事故がなければ将来被害者の方が消費したと思われる金額は差し引いて計算されます。そのための数値を「生活費控除率」といいます。
自営業・個人事業主の方が該当する生活費控除率は、以下のようになります。
一家の支柱(被扶養者1人) | 40% |
---|---|
一家の支柱(被扶養者2人以上) | 30% |
女性 | 30% |
男性 | 50% |
就労できなくなった年数
死亡事故によって終了できなくなった年数は、
死亡年齢~67歳
と考えます。
ただし、高年齢の場合は、
- 死亡年齢~67歳
- 平均余命年数の1/2
のうち長い方を採用します。
67歳を超えていた場合には、
平均余命の1/2
を採用します。
ライプニッツ係数
死亡逸失利益とは、本来であれば収入として、将来にわたって少しずつ受け取るはずだったものです。
それを一度に受け取るのですから、大部分は銀行に預金することになります。そうすると、本来そのお金を収入として得るはずだった頃には、利子がつき増額しています。
その増額分をはじめに差し引いておくためのものが、ライプニッツ係数です。
ライプニッツ係数は、上でご紹介した「就労できなくなった年数」に応じて決まります。その一部をご紹介します。
年数 | 係数 |
---|---|
43 | 17.5459 |
39 | 17.017 |
33 | 16.0025 |
25 | 14.0939 |
8 | 6.4632 |
実際の計算例
ではここで、42歳男性・扶養家族1人・年収600万円の個人事業主の方を想定して、死亡逸失利益を計算してみます。
計算例
- 年収:600万円
- 生活費控除率:40%
- 就労できなくなった年数:67-42=25年
- ライプニッツ係数:14.0939
◎逸失利益=600万円×(1-0.4)×14.0939=5073万8040円
年収を実際より低く申告していた場合どうなる?
自営業・個人事業主の方の場合、年収は確定申告で申告しているかと思います。
死亡時逸失利益で用いる年収は、基本的に申告している所得の金額です。しかし中には、実際よりも低い年収を申告しているという方もいらっしゃるかと思います。
当然計算式に組み入れる年収の金額が高いほど死亡逸失利益は高くなりますから、そうした場合は実際の年収を使いたいと思いますよね。
そうした場合は、実際の年収を証明できるものをご用意ください。
帳簿があれば本来の年収が分かりやすいですが、無い場合には仕入れた物の伝票などでも構いません。参考になりそうなものを見つけ、本来の年収の根拠とします。
ただし、申告している金額とは違う実際の金額が採用されるかどうかは、交渉次第です。
認められたとしても全額は認められない可能性も高いため、ご注意ください。
【まとめ】自営業・個人事業主の死亡慰謝料・逸失利益のポイント
ここまで、自営業・個人事業主の方が交通事故で亡くなられた場合の死亡慰謝料・逸失利益について解説してきました。
疑問や不安が少しでも和らいだのであれば、幸いです。
とはいえ、交通事故の状況や事情、加害者側の対応などは様々です。それに合わせて慰謝料や賠償金も増額されたり減額されたります。
そのため、ここでご紹介した金額等はあくまでも一般論にすぎません。
より妥当な金額、様々な事情を反映した金額を知るには、弁護士に問い合わせることが一番です。
無料で相談を行っている法律事務所も多いので、一度相談することを検討してみてもいいかと思います。
自営業者の死亡慰謝料についてのQ&A
死亡事故の賠償金の内訳は?
死亡事故の賠償金の内訳は、① 死亡慰謝料、② 死亡逸失利益、③ 葬祭費です。死亡までの間に入通院期間があった場合は、入通院慰謝料や治療関係費も請求できます。慰謝料の金額には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの金額基準があり、実際に慰謝料がいくらになるのかは、示談交渉次第です。
自営業者の死亡慰謝料の相場は?
自営業者の場合、死亡慰謝料は一家の支柱であれば弁護士基準で2800万円、任意保険基準で1500万円~200万円となります。独身の場合は弁護士基準で2000万円~2500万円、任意保険基準で1300万円から1600万円となります。加害者に故意や重大な過失があった場合や、死亡事故を受け家族が精神疾患を患った場合などは、増額される可能性があります。
年収を低く申告していたら問題がある?
自営業者の方で、確定申告の際に実際よりも低めに収入を申告していた場合、死亡逸失利益が低くなる可能性があります。自営業者の場合、死亡逸失利益は確定申告で申告している収入を用いて計算するからです。実際の収入を証明する書類があれば、交渉次第で実際の収入に近い金額を使える可能性もあります。