交通事故慰謝料|通院6ヶ月(半年)でいくら?計算不要の早見表あり
6ヶ月(半年)という長期の通院、本当にお疲れ様でした。
怪我の痛みはもちろん、治療しながら日常生活を送ったり、リハビリをしたり…。
本当に苦労の絶えない半年間だったかとお察しします。
いよいよ通院が終わり、交通事故の損害賠償額が明らかになってきたかと思います。
- 私の慰謝料は自賠責保険基準?任意保険基準?
- 計算のルールが分からない
- 症状固定と言われたけど慰謝料は増えるの?
こういった疑問も解決していきます!
交通事故の慰謝料|自賠責保険・任意保険・弁護士基準とは?
慰謝料ってどんなお金?
損害賠償でよく耳にする「慰謝料」。
慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛をとりのぞいたり、和らげるために支払われる損害賠償のひとつです。
6ヶ月(半年)にわたる痛みや治療、入院や通院をよぎなくされた…。この精神的苦痛に対して支払われるものを通院慰謝料といいます。
入院したことへの慰謝料とあわせて、「入通院慰謝料」とまとめられることもあります。
精神的苦痛は、眼には見えません。また、感じ方や苦痛を感じる程度は個々に異なります。
ですから精神的苦痛をお金に換算するには、全員に共通した「ものさし」が必要になりますね。
入通院慰謝料のものさしは「入院・通院をした長さ」です。
原則的には、入院・通院が長くなるほど、金額が変わります。
また、交通事故の損害賠償をするとき、慰謝料がいくらになるかは「誰」が計算するかでも変わってきます。
計算する主体をつかって、〇〇基準と呼びます。
基準 | 誰が使う |
---|---|
自賠責保険の基準 | 相手方の自賠責保険会社 |
任意保険の基準 | 相手方の任意保険会社 |
弁護士基準 | 被害者から依頼を受けた弁護士 |
この3つの基準は、交通事故の損害賠償では必ず出てくる表現です。
ぜひ覚えておきましょう。
通院慰謝料の3つの計算方法
慰謝料算定の3基準
- ① 自賠責保険の基準
- ② 任意保険の基準
- ③ 弁護士基準
それぞれの基準について、少し掘り下げて考えてみます。
①自賠責保険の基準
自賠責保険とは、自動車を運転する人が必ず加入しなくてはいけない保険です。
交通事故の被害者救済を主目的として、最低限の補償を行います。
自賠責保険の基準で計算するなら、入通院慰謝料は以下の通りです。
自賠責保険での算定
入院日数 × 4,200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4,200円
あるいは
入院日数 × 4,200円 + 通院期間 × 4,200円*
日額が4,200円となるのは、入院も通院も同じです。
ただし通院分については、通院期間を何日にするか、2通りの考え方から少ない方を選びます。
(1)実治療日数の2倍
(2)通院期間(通院開始~治療終了まで)
(例)
- 通院期間:6ヶ月(180日間)
- 通院日数(実治療日数):85日間
↓
実治療日数の85日間を2倍すると170日になります。
通院期間は180日間なので、比較すると170日(実治療日数の2倍)の方が短いです。
ですので、計算式には「170」を使います。
→ 4,200(円)✖170(日)=714,000円
入院したなら、714,000円に別途「入院慰謝料」が追加されます。
②任意保険の基準
任意保険の基準は、自動車の運転者が任意で加入する保険です。強制加入ではないので、人によっては任意保険未加入の可能性があります。
自賠責保険の基準とはちがい、算定方法は非公開となっています。
以前は統一された基準がありましたが、現在は保険会社ごとに設定され、詳細は確認することができません。
任意保険の基準で算定する慰謝料の金額は、自賠責保険の基準で算定した時と同じか、少し高いとされています。
「被害者は自賠責保険から補償を受けられるのでは?」
「任意保険って何のためにあるの?」
↓
もちろん、自賠責保険からの補償を受けることが前提にあります。
しかし、自賠責保険から補償される金額には上限があります。
傷害部分については上限が120万円までとなっているのです。そして、足りない分を補てんするのが任意保険であり、補てんする際の計算方法は任意保険会社によってバラバラなのです。
被害者がなくなってしまったり、大きな怪我をしてしまうと、120万円では支払いきれません。
120万円の中には、入通院慰謝料はもちろん、治療費・手術費・入院雑費・通院交通費などが含まれているからです。
6ヶ月通院すると、自賠責保険では通院慰謝料だけで714,000円支払われます。
残りの50万円で、他の補償全てが支払えるとは限りませんよね…。
120万円超えたら自賠責から任意に切り替え?
このイラストは、自賠責保険と任意保険の考えを示したものです。
いわゆる「二階建て」式になっているのがわかります。
損害賠償は、まず自賠責保険で算定されます。
そして、治療を終えた時点ですべての損害を明らかにします。
自賠責保険の基準に基づいて算定した結果、120万円を超えていたら一度、任意保険の基準で再計算するのです。
任意保険の基準で再計算した結果、120万円を下回っても120万円は補償されます。
なぜなら自賠責保険の基準を下回る算定は認められないからです。
任意保険の基準で再計算した結果、120万円を超えていれば、その金額が被害者に支払われることになります。
(例)
ある被害者の損害を自賠責基準で計算すると、自賠責保険から支払われる上限の120万円を超えています。
そこで、加害者が加入している「A任意保険会社」の基準で算定すると130万円となり、130万円が提示されました。
この金額に納得いかない場合は、示談で金額交渉を行います。
ちなみに、A任意保険会社が提案してきた130万円のうち、120万円は自賠責保険から支払われているお金です。
A任意保険会社の実質の支出は「10万円」ということです!
保険会社とやり取りをするなら、120万円を超えた分をいかに増額してもらうかの交渉と考えましょう。
<関連記事:損害賠償が120万円超えたら>
③弁護士基準
弁護士基準は、弁護士が相手方と示談などで交渉する時に使う算定基準です。
自賠責保険の基準や任意保険の基準とくらべると、弁護士基準での慰謝料算定は、最も相場が高くなります。
弁護士基準は、慰謝料の算定表にもとづいて大体の金額が決まります。
注意したいのは、「重傷」「軽傷」と2つの表に分かれていることです。
どんな傷病の治療のために入院・通院したのかで参照する表を使い分ける必要があります。
▼算定表の区別
- むちうち、打撲(打ち身)、擦り傷、捻挫→軽傷
- 上記以外→重症
実際の算定表は次章に掲載していますので、このまま読み進めてください!
通院6ヶ月・通院日数〇日|慰謝料がまるわかり
慰謝料早見表|通院6ヶ月・入院なし
通院6ヶ月(半年)の場合の慰謝料を通院日数別にまとめました。
※任意保険の基準については、現在各保険会社で異なるため省略しています。原則的には、自賠責保険よりもやや高く、弁護士基準よりは金額になるでしょう。
実際の通院日数 | 自賠責保険の基準 | 弁護士基準(軽傷) | 弁護士基準(重傷) |
---|---|---|---|
30日 | 252,000円 | 890,000円 (注意) |
1,160,000円 (注意) |
60日 | 504,000円 | 890,000円 | 1,160,000円 |
90日 | 756,000円 | 890,000円 | 1,160,000円 |
120日 | 756,000円 | 890,000円 | 1,160,000円 |
150日 | 756,000円 | 890,000円 | 1,160,000円 |
通院期間が同じであっても、それぞれの基準や怪我の程度によって金額は大きく違います。
各基準について詳しく見ていきます。
自賠責保険の基準について
自賠責保険の基準では、1日4,200円の通院慰謝料が認められます。
ですが、90日・120日・150日と通院日数が増えても慰謝料金額が変わっていないですよね。
これは、計算式をもう一度思い出せば解決しますよ。
↓
自賠責保険の基準の入通院慰謝料
入院日数 × 4,200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4,200円
あるいは
入院日数 × 4,200円 + 通院期間 × 4,200円*
※通院期間は短い方を採用
4,200円という金額は一定です。
つまり、通院期間で計算するのか、実治療日数の2倍で計算するのかが金額を決定するのです。
90日までは、実治療日数を2倍しても、通院期間の6ヶ月(半年)を上回ることはありませんでした。
だから計算には、実治療日数の2倍が使われていて、治療日数が増えるたびに慰謝料の金額も増えてきました。
しかし、91日になると2倍した時に通院期間(6ヶ月・180日)を超えますね。
計算には通院期間(6ヶ月・180日)が採用されるので、慰謝料はずっと変わりません。
弁護士基準について
弁護士基準では、原則として「通院期間」をもとに算定します。
ですから、表の通り、通院日数によって慰謝料は変動していません。
弁護士基準で慰謝料が大幅ダウン?回避するためには?
しかし「(注意)」と記載しているとおり、注意点があります。
それは通院期間の長さに対して通院日数が少ない場合などには、減額の可能性があることです。
減額されるかは実際の個別の事情、たとえば
- 通院日数が少ない
- 治療内容が傷病に対して適切でない
などから総合的に判断されます。
減額される時には、<通院日数の3~3.5倍=通院期間>とみなされ計算されます。
↓
大幅に減額されてしまいます。
たとえば、通院6ヶ月・実通院日数が7日間の事例で減額されてしまった場合を考えてみましょう。
治療日数が少なく、弁護士基準でも減額されてしまうとこうなります。
7(日)✖3=21(日)
↓
通院期間21日=1ヶ月未満
※重傷の場合は3.5倍で計算されます。
6ヶ月通院したのに、慰謝料が1ヶ月にも満たない…。
これだけは避けたいところですよね。
- そもそも、それだけの通院期間が必要な怪我だったのか?
- 真剣に治療していないんじゃないか?
こんな風に思われかねませんし、何より治るものも治らない恐れがあり、結局は被害者自身の首を絞めてしまうことにも…。
通院日数の少なさについてはもう少し詳しく解説している記事もあります。あわせてお読みください。
▼関連記事:通院日数が少ない時の慰謝料
あるいは、交渉の専門家である弁護士への問い合わせも有効でしょう。
これまでの事例を踏まえたアドバイスがもらえるかもしれません。
むちうち通院6ヶ月|慰謝料早見表はココ
これまでの情報から、むちうちの慰謝料早見表を作成しました。
むちうちは弁護士基準では「軽傷」と区分されますので、軽傷の場合の算定表を基にしています。
実際の通院日数 | 自賠責 | 弁護士 (軽傷) |
---|---|---|
30日 | 378,000円 | 890,000円 (注意) |
60日 | 630,000円 | 890,000円 |
90日 | 756,000円 | 890,000円 |
120日 | 756,000円 | 890,000円 |
150日 | 756,000円 | 890,000円 |
比べてみると、やはり自賠責保険の基準による補償が最低限でしかないことが分かりますね…。
また、この場合も同様に、通院の頻度はポイントになります。
- 湿布をもらいつづける
- 電気治療を受けつづける
こういった、同じような行為を整骨院・接骨院でつづけて6ヶ月になっても、すべてが認められるとは限りません。
治療に有効であるかをしっかり医師と相談し、進めていきましょう!
慰謝料早見表|通院6ヶ月・入院〇ヶ月
まず、6ヶ月の通院の前に1ヶ月入院していたケースです。
入院1ヶ月 +実通院日数 |
自賠責 | 弁護士 (軽傷) |
弁護士 (重傷) |
---|---|---|---|
入院1ヶ月 +30日 |
252,000円 | 1,130,000円 (注意) |
1,490,000円 (注意) |
入院1ヶ月 +60日 |
504,000円 | 1,130,000円 | 1,490,000円 |
入院1ヶ月 +90日以上 |
882,000円 | 1,130,000円 | 1,490,000円 |
次に、入院〇ヶ月の時の慰謝料早見表を作成しました。
自賠責保険の基準
6ヶ月中の 実通院日数 |
入院1ヶ月 | 入院2ヶ月 | 入院3ヶ月 |
---|---|---|---|
30日 252,000円 |
126,000円 | 252,000円 | 378,000円 |
60日 504,000円 |
入院4ヶ月 | 入院5ヶ月 | 入院6ヶ月 |
90日 756,000円 |
504,000円 | 630,000円 | 756,000円 |
120日 756,000円 |
入院7ヶ月 | 入院8ヶ月 | 入院9ヶ月 |
150日 756,000円 |
882,000円 | 1,008,000円 | 1,134,000円 |
表の見方
一番左が、通院期間6ヶ月・通院日数別の慰謝料金額です。
別途、入院月数分の慰謝料を足し算すれば、〇ヶ月分の入通院慰謝料+通院期間6ヶ月(実通院日数に応じる)がわかります!
ただし、自賠責保険の基準で補償される上限は「傷害部分:120万円」となります。
ですので、120万円を超えた場合は、相手方の任意保険により補てんされます。
任意保険の基準
以下は、以前の任意保険基準による入通院慰謝料基準表です。
現在はこの基準とは違う任意保険会社もあると思いますので、参考程度に閲覧してくださいね。
弁護士基準
弁護士基準は次の2つの算定表で求めます。
「軽傷」「重傷」とわかれていますので、当てはまる傷病の表をご覧ください。
▼むちうち、打撲(うちみ)、擦り傷、捻挫
▼上記以外の傷病
通院6ヶ月で症状固定?後遺障害認定で増額を実現
6ヶ月の通院をつづけても、怪我が完治せず後遺症が残った…。
これ以上治療を続けても、良くも悪くもならない時期のことを症状固定といいます。
そして、身体や精神に残った怪我の結果を、「後遺症」といいます。
むちうちで残った「しびれ」「痛み」。
骨折で折れた骨はくっついたけれど「曲げづらさ」「変形」が残った。
傷病に応じて後遺症もさまざまです。
損害賠償では、身体に残った後遺症が「後遺障害」であると認定されれば、受けとるお金が増えます。
後遺症と後遺障害の違い
医師から「後遺症が残った」と言われるのと、「後遺障害」に認められるのは別です。
両者の違いを簡単にまとめました。
後遺症 | 後遺障害 | |
---|---|---|
主治医の判断 | 〇 | × |
後遺障害慰謝料 | × | 〇 |
後遺症が残っただけでは、後遺障害慰謝料を受けとることはできません。
認定申請を行い、審査を経て「後遺障害等級」が認定されて初めて、後遺障害慰謝料の請求が可能です。
むちうちは12級?14級?後遺障害等級とは?
後遺障害等級は1級から14級まであり、後遺症の残った部位や程度に応じて、等級が定められています。
ですから、どんな部位のどんな後遺症であれば〇級に認定される可能性がある、などと推測することは可能です。
(例)むちうちによる痺れであれば、後遺障害等級12級13号または14級9号で、神経症状として認定される可能性があります。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じておおよその目安が決められています。
ですから、後遺障害等級が何級に認定されるかはとても重要なんです。
「後遺障害認定の申請についてもう少し知りたい!」
「むちうちのことを詳しく知りたい!」
という方は、下記の記事もお役立てください。
▼関連記事:後遺障害の認定・慰謝料について
▼関連記事:むちうちについて
示談前に使う必須ツール!慰謝料計算機はこちら
慰謝料の計算は複雑で、手計算するのはちょっと面倒…。
そんなあなたにぜひ使ってほしい便利なツールが「慰謝料計算機」です。
入通院慰謝料はもちろん
- 後遺障害認定された時の「後遺障害慰謝料」
- 怪我の入通院で会社を休んだ時の「休業補償」
なども一発計算!情報入力だけでいいので便利ですよ。
この慰謝料計算機の結果は、弁護士基準の算定です。
示談は加害者側から示談案を提示されてスタートしますが、提案金額は相手方の保険会社や、自賠責保険の基準によるもの。
つまり、慰謝料計算機で算定した結果よりも基本的には低くなります。
見比べてみると、増額交渉できそうな費目もわかりますよね。
ですから、示談前には必ずこのツールを使っておいてほしいのです。
一度示談で結んだ内容は、被害者と言えども、後から追加修正は原則できないんです…。
まとめ
通院6ヶ月の場合の慰謝料について解説してきました。
幸いにも完治した人もいれば、残念ながら後遺症が残ってしまった人もいるでしょう。
この記事で計算の仕組み・計算の仕方が分かったかと思います。
相手方からの提案金額を「適切か」「適切でないか」見極めることから交渉は始まります。
適切な入通院慰謝料の獲得の一助になりましたら幸いです。
通院6ヶ月の交通事故慰謝料についてのQ&A
通院慰謝料ってどんなお金ですか?
交通事故の被害にあい、痛みや治療、入院・通院などで負った精神的苦痛に対して支払われるお金のことです。精神的苦痛は目には見えませんし、感じ方には個人差があります。そのため、共通の基準として、入院・通院期間の長さをつかって慰謝料の金額を決めます。
自賠責保険でもらえる通院慰謝料はいくら?
自賠責保険の基準では1日あたり4200円で計算すると、<通院60日:504000円、通院90日:756000円>となります。ただし、計算式の仕組み上、<実際の通院日数:91日以降>の場合も変わらず756000円です。自賠責保険の基準で算定する時、実際の通院日数が増えるのと比例して慰謝料の金額が増えるとは限らないのです。
後遺症と後遺障害は同じ?
後遺症と後遺障害は厳密にいうと違います。例えば、後遺症が残ったと判断するのは、主治医が被害者自身でしょう。しかし、後遺障害が残ったと認定するのは主治医ではありません。そして、後遺症が「後遺障害」として認められることで、後遺障害慰謝料などの賠償金を請求できるのです。
むちうちは12級?14級?
むちうちの後遺症である「しびれ」「痛み」は、神経症状として12級13号・14級9号、どちらかに認定される可能性があります。後遺障害等級は、後遺症の残った部位・程度に応じて決められます。数字の小さい方が障害の程度が大きいとされているので、神経症状としては12級認定の方が症状が重いといえます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて金額算定が行われます。