交通事故の慰謝料とは別!「通院付き添い費」のお悩みにお答えします
交通事故の被害者がケガの治療やリハビリなどで通院するために、近親者による付き添いが必要になることもあるでしょう。
この記事では「通院付き添い費」のよくある質問にお答えします。
Q&A形式だから、知りたいことがスグ分かりますよ。
「通院付き添い費」のよくある疑問にお答えします!
【Q1】「慰謝料」と「通院付き添い費」は別?
慰謝料と通院の付添い費は別です。
慰謝料とは、交通事故の被害者に対して支払われるお金です。
交通事故にあうことで、被害者が負った精神的苦痛に対する金銭的補償が「慰謝料」なのです。
慰謝料との関係
- 「怪我の痛み」や「通院しなくてはいけなくなった」などの事故にあった被害者の精神的苦痛に対して支払われるものが「入通院慰謝料」です
- 「通院付き添い費」は精神的苦痛に対して支払われるものではありません
通院付き添い費は、交通事故の被害者に付き添った人への補償とされています。
※交通事故の被害が相当に重篤である場合、近親者への慰謝料が認められることはあります。しかし、これは「通院付き添い費」とは別ものです。
ちなみに、どんな通院手段でも認められるということではありません。被害者の怪我の状況、通院先との距離、交通事情などを考慮して適切なものが認められます。
【Q2】通院付き添い費の相場はあるの?
相場は決まっています。
金額は自賠責保険の基準、任意保険の基準、弁護士基準で異なります。
交通事故では、慰謝料をはじめとする「損害賠償」を算定する時の基準が複数あります。
自賠責保険の基準、任意保険の基準、弁護士基準の3つがあり、算定結果も変わってきます。
任意保険の基準については現在非公開となっていますので、正式な金額は分かりません。
しかし、非公開ではありますが、おおよそ自賠責保険の基準と変わらない金額と推定されています。
そこで、下表に「自賠責保険の基準」と「弁護士基準」の通院付き添い費の基準をまとめました。
自賠責保険の基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
日額 | 2,050円 | 3,300円 |
怪我の程度、被害者の年齢などを考慮して増額されることもあります。
【Q3】何歳まで認められる?中学生は?
原則として12歳以下に認められます。
12歳以下であれば、特に条件はなく認められます。
13歳以上の場合は、一人で通院できる、一人で自分の身の回りのことがある程度できる、と考えられるので基本的には認められません。
医師の指示により通院付添が必要になった場合は例外です。
医師の指示は被害者の怪我や症状によることが多いそうです。
13歳以上でも通院付き添い費が認められるのは、例えば次のような場合があります。
- 見守りが必要(例:高次脳機能障害の症状のため)
- 骨折しており通院に際して誰かの介助が必要
怪我の症状によって被害者一人で身の回りのことができない、通院に対して不便のある怪我をしている、これらが背景にあるようです。
通院の付き添いのために仕事を休むのは認められる?
客観的に、通院の付き添いのために仕事を休むことが必要と認められれば、付き添い者の休業損害が認められます。
休業損害の算定方法
休業損害の求め方も、算定する基準があります。
自賠責保険の基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
日額 | 5,700円 | 事故前3ヶ月の給与から日額を算定 |
自賠責保険の基準は「5,700円」としていますが、5,700円を上回ることが証明できれば、その金額を求めることも可能です。
会社を休んだ場合は、会社から「休業を証明する書類」を作成・発行してもらうことを忘れないでくださいね。
職業別の休業補償・休業損害について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
▶関連記事:交通事故の休業補償・休業損害
「通院の付き添い費」と「入院の付き添い費」がある
入院付き添い費の相場は?
「入院」と「通院」では、付き添い費にも違いがあります。
自賠責保険の基準、弁護士基準での金額を見てみましょう。
自賠責保険の基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
通院 | 2,050円 | 3,300円 |
入院 | 4,100円 | 6,500円 |
このように金額設定が異なります。
ちなみに、表に記載の金額は基準額です。
被害者の怪我の程度や年齢によって、入院付き添い費が増額されるケースもあるようです。
通院付き添いのために予定をキャンセルした場合の補償は?
既にその予定の参加費等を振り込んでしまい、返金不可であるという場合は、振り込んでしまった金額を相手方に求めることができます。
交通事故は急に起こってしまいます。
たとえば、「明日、家族で旅行に行くはずだったのに子どもが交通事故で意識不明に…。」
これは旅行どころではありませんね。
既にお金を振り込んでいて、キャンセルしても旅費が返金されないという場合は、交通事故の損害賠償として相手方に補償を求めることができます。
「通院付き添い費」以外にも認められるかも!?判例を調査
通院付き添い費と関連して、よくある疑問について調査をしました。
ここから紹介するものはすべて裁判で認められたものばかりです。
該当するものがないかチェックしていきましょう!
事故の治療で進級遅れ→授業料・補習費を認定
交通事故の怪我の治療、入院や通院などで進級が遅れてしまった場合は、授業料や補習費用を請求することができます。
横浜地判昭57.1.28
- 被害者は高校生
- 交通事故の入通院により1年休学
→退院後1年前後にわたる補習費47万円が認められました。
千葉地判平24.8.28
- 被害者は大学生
- 事故により半年卒業は伸び、学費が発生
→増額分31万円余が認められました。
事故によって支払い済の教育費が無駄に→加害者への請求を認定
交通事故の被害にあい、既に支払った教育費が意味を持たなくなった場合、相手方に請求することができます。
東京地平判22.10.13
- 被害者は大学生
- 左股関節の機能障害、歯牙障害、外貌醜状などで秋学期を欠席
→支払い済の授業料83万円余が認められました。
東京高判平14.6.18
- 被害者は22歳
- 免許取得に向けて自動車教習所に通っていたが事故のため修了できない
→教習所代全額32万円が認められました。
兄弟・姉妹を保育所に→保育料を認定
被害者への付き添いのため、他の子どもたちへの保育サービスが必要になることもあるでしょう。
保育料については、損害の一部として相手方に請求することができます。
山口地平判4.3.19
- 被害者は3歳
- 母親が付き添い看護のため、2歳と0歳の乳幼児2人の面倒を見ることが困難となり、保育所に預けざるを得なくなった
→保育園・幼稚園入園が一般的にみられる満4歳になるまでの保育料166万円余が認められました。
東京地判平28.2.25
- 被害者は7歳
- 生後間もない子の緊急一時保育を32日間利用した
→利用料金4万円が認められました。
一人での通学が困難→通学付き添い費を認定
社会復帰後の通学について、被害者一人では難しい場合の付き添いも認められる可能性があります。
横浜地平判11.2.24
- 被害者は17歳
- 脳挫傷で後遺障害5級認定済。
→1年間留年した学費約13万円、1年分(183日)の付添い日額3,000円が認められました
神戸地判平22.7.13
- 被害者は専門学校生
- 腰部やその他全身の痛みのため1ヶ月間は一人で公共交通機関で通学できない
→母の自家用車による送迎日額3,000円、15日間が認められました。
被害者の怪我の具合によって認められる補償は、通院付き添い費用だけではありません。
全ての交通事故で認められるとは限りませんが、発生した損害を一つずつ精査して丁寧に主張することがポイントと言えそうです!
まとめ
交通事故にあうことで発生する損害はたくさんあります。
どんな費目が認められるのかを知っておくことは、損をしない交渉のポイントです。
一度示談を結べば、その内容を変更したり、追加で新たな損害賠償を求めることは難しくなります。
「えっ!?このお金も請求できたの!?」という後悔のないようにしたいですね。
交通事故慰謝料と付き添い費に関するQ&A
慰謝料と付き添い費用は別のお金?
「慰謝料」と「通院の付き添い費用」は別物です。交通事故の慰謝料は、交通事故の被害にあうことで、被害者が負った精神的苦痛に対して支払われる金銭的補償です。一方で、付き添い費用は、交通事故の被害者に付き添った人への補償とされています。
通院付き添い費用に相場はある?
通院付き添い費用に相場はあります。自賠責保険の基準:2050円/弁護士基準:3300円が相場とされています。もっとも、被害者の怪我の程度や年齢などを考慮して増額されることもあります。なお、任意保険の基準は非公開とされています。
入院の付き添い費用も認められる?
入院の付き添い費も認められる可能性があります。金額は、自賠責保険の基準:4100円/弁護士基準:6500円が相場です。通院付き添い費と同様に、被害者の怪我の程度や年齢などを考慮して増額される可能性があります。なお、任意保険の基準は非公開とされています。