交通事故の慰謝料|鎖骨骨折|金額算定方法は複数!損しない方法は?
交通事故では、転倒、圧迫などの様々な接触により、鎖骨を骨折してしまうことがあります。
鎖骨骨折で受けとる慰謝料について解説します。
交通事故で鎖骨を骨折した…|慰謝料はどう計算する!?
一般社団法人 日本骨折治療学会によると、鎖骨骨折は次のように示されています
鎖骨とは首のすぐ下の胸の上前面にある皮膚から触れやすい骨で左右対称のS字型をした骨です。この鎖骨が折れる骨折は、全骨折中約10%を占めるほど多い骨折のひとつです。
原因はスポーツや交通事故による転倒などによって肩や腕に衝撃力を受けて折れる場合が多く、比較的お子さんにも多いのが特徴です。
出典:https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip03.html
具体的に、交通事故で鎖骨骨折となった場合の慰謝料をみていきましょう。
鎖骨骨折の慰謝料|慰謝料算定の3基準
これは慰謝料金額の相場を表したものです。
「え?慰謝料の金額って色々あるの?」
このように思う人は多いでしょう。慰謝料の金額は色々あります。
「算定する基準」によって変わります。
基準は3つありますので、順番にみていきましょう。
自賠責保険の基準
自賠責保険は、「じばいせきほけん」と読みます。
自動車を運転する人は義務加入です。
自動車による交通事故の被害者救済を目的としています。
相手方が自動車であれば、相手方の自賠責保険から保険金が出て、そのお金を損害賠償金として受けとることができます。
しかし、支給される金額には一定の上限が設けられています。
例えば、鎖骨骨折でオペをした、薬が処方された、通院交通義がかかったなどの治療費を含む傷害に関するお金は120万円までと決まっています。
被害者の怪我の具合によっては、120万円じゃ足りない…これはよくあることです。
そこで、不足分をカバーするのが相手方の任意保険です。
任意保険の基準
任意保険は「上乗せ保険」や「上積み保険」とも呼ばれています。
被害者への損害賠償金が、自賠責保険で支払える金額を超えているとき、相手方が任意保険で補います。
任意保険の加入は義務ではないので、相手方の加入状況次第になります。
時々、任意保険を使いたくないと拒否する加害者もいるようです。
これは保険を使うことで保険等級が下がり、月々の保険料が上がる場合があるからです。
弁護士基準
弁護士基準は、被害者からの依頼を受けて、相手方と交渉をする弁護士が使う基準です。
裁判基準とも呼ばれているとおり、裁判所でも使われている公正なものです。
冒頭のイラストで見た通り、慰謝料の相場が最も高い算定方法です。
鎖骨骨折で受けとる慰謝料は
- ① 入通院慰謝料
- ② 後遺障害慰謝料
の2つがあります。
①入通院慰謝料|鎖骨骨折の場合
具体的に慰謝料を計算してみましょう。
自賠責保険の基準
自賠責保険の基準では、1日あたり4,200円で計算します。
4,200円と通院期間を掛け算すると、慰謝料は算定できます。
ポイントは通院期間を何日とするかです。
通院期間は2通りの考え方があり、どちらか少ない方を計算に使います。
- 治療開始日から治療終了日までの日数
- 実際に通院した日数✖2
たとえば、3ヶ月(150日)通院し、そのうち病院に行ったのが65日だとします。
65日を2倍すると、130日となりますね。
150日>130日なので、計算する時の通院期間は130日になるのです。
(計算式)4,200円✖130(日)=546,000円
任意保険の基準
任意保険の基準は、現在は非公開となっています。各保険会社によってバラバラだからです。
以前は任意保険の基準は統一されており、一般にも公開されていました。
実情を調べてみると、どうやら以前の統一基準に基づいている任意保険会社も多いそうです。
ですので、参考として旧任意保険支払基準を紹介します。
▼この表の見方
入院・通院それぞれの月数の交わるところをみます。
入院3ヶ月/通院4ヶ月→1,084,000円
入院1ヶ月/通院2ヶ月→504,000円
弁護士基準
弁護士基準は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称・赤い本)とよばれる本に掲載されています。
軽傷・重傷で基準は異なります。鎖骨骨折の場合は、重傷の方を見ましょう。
▼この表の見方
入院・通院それぞれの月数の交わるところをみます。
入院3ヶ月/通院4ヶ月→1,960,000円
入院1ヶ月/通院2ヶ月→980,000円
任意保険の基準と比べると、弁護士基準で算定するほうが金額は高くなります。
②後遺障害慰謝料|鎖骨骨折の場合
後遺障害慰謝料の金額は、入通院慰謝料のように計算をしたり、通院期間の長さでは計算しません。
後遺障害等級により目安額が決められており、個別の事情で増減されます。
鎖骨骨折で認定される可能性がある等級は後述しますので、このまま読み進めてください。
鎖骨骨折|後遺障害認定されると慰謝料は増える
認定されうる後遺障害は?
後遺障害として残りうる鎖骨骨折の症状は次の通りです。
症状
- 痛みやしびれ
- 腕・肩があげられない
- 変形・ぐらぐらする
それぞれ症状の度合いによって、後遺障害等級は変わります。
イラストは損害賠償の全体イメージです。
後遺障害認定を受けたら、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を受けとることができます。後遺障害認定されると慰謝料が増えるのです。
※完治した場合は、後遺障害には認定されず、後遺障害慰謝料も支払われません。
【痛み・しびれが続いている】鎖骨骨折の慰謝料
痛みやしびれ:後遺障害等級
鎖骨骨折により、骨自体はくっついても、痛み・しびれなどの神経症状が残ってしまうことがあります。痛みやしびれは「神経症状」として、後遺障害認定されうる症状です。
具体的には次のように、12級・14級に認定される可能性があります。
等級 | 内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級と14級を分けるものは、「頑固な」という表現の有無です。
頑固さは、被害者の主観ではなく検査結果を用いて客観的に説明していきましょう。
POINT
12級と14級の違いは検査結果で明らかにしましょう。
検査方法には
- 神経学的検査
- レントゲン、MRIなどの画像診断
が有効です。
- 検査結果で神経症状の存在が証明できる→12級13号
- 検査結果では証明できないが神経症状の存在を合理的に説明・推定できる→14級9号
痛みやしびれ:後遺障害慰謝料の相場
痛みやしびれは、12級や14級に認定される可能性があります。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じた目安額が決められています。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準※1 | 自賠責基準 |
---|---|---|---|
12 | 290 | 100 | 93 |
14 | 110 | 40 | 32 |
※1 旧任意保険支払基準を参照、現在は保険各社が独自に設定
※2 慰謝料の単位は万円
どちらの等級も、弁護士基準で算定すると慰謝料相場が高くなります。
【腕・肩があげられない】鎖骨骨折の慰謝料
腕・肩が上がらない:後遺障害等級
鎖骨は、胸骨と肩甲骨をつなぐ役割を持ちます。
鎖骨の骨折箇所によっては、後遺障害として肩や腕の上げづらさが残ることもあります。
「鎖骨遠位端骨折」と診断を受けたら、特に気を付けたほうがよさそうです。
まずは、認定される可能性がある後遺障害等級から確認しましょう。
等級 | 内容 |
---|---|
8級6号 | 上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級10号 | 上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 上肢の三3関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
「上肢の3大関節」は、肩・ひじ・手首の3つの関節です。
ひじや手首にも障害が生じている場合は、さらに重い後遺障害等級認定の可能性があります。
ちょっと難しい言葉が並んでいるので、もう少しなじみのある言葉で考えてみましょう。
関節の用を廃する
定義
関節がまったく動かない
または
障害のない肩関節と比べて、動かせる範囲が1/10程度以下のもの
肩関節の動きについては、
- 身体の前方に腕を上げる動き(屈曲)
- 身体の側面で頭から下半身まで腕を上げ(外転)、下げ(内転)する動き
を測定して判断するようです。
内容 | |
---|---|
用を廃する 8級6号 |
以下のいずれか ・まったく動かない ・障害のない関節と比べて動かせるのは1/10程度以下 |
条件 | 以下の両方を満たす ・屈曲:20度以下 ・外転:20度以下 |
著しい障害 10級10号 |
・障害のない関節と比べて動かせるのは1/2程度以下 |
条件 | 以下のいずれか ・屈曲:90度以下 ・外転:90度以下 |
障害を残す 12級6号 |
・障害のない関節と比べて動かせるのは3/4程度以下 |
条件 | 以下のいずれか ・屈曲:135度以下 ・外転:135度以下 |
※目安
10級や12級では、屈曲・外転の角度が記載の角度を少し上回っていても認められることはあるそうです。
その時には、参考運動という他の動きの具合も見て判断されます。
腕・肩が上がらない:後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料をみてみましょう。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準※1 | 自賠責基準 |
---|---|---|---|
8 | 830 | 400 | 324 |
10 | 550 | 200 | 187 |
12 | 290 | 100 | 93 |
※1 旧任意保険支払基準を参照、現在は保険各社が独自に設定
※2 慰謝料の単位は万円
後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料は変わります。
どの等級においても、自賠責保険の基準だと低くなってしまいますね。
【変形している…ぐらぐらする…】鎖骨骨折の慰謝料
変形や偽関節:後遺障害等級
鎖骨が正しい位置でくっつかず、ずれた状態でくっついてしまうこともあります。
そうなると鎖骨が変形したり、まるで関節のようにぐらぐらと動いてしまう「偽関節」の状態となってしまう可能性があります。
等級 | 内容 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
骨の異常はレントゲン(X線)で検査して分かりますが、変形の後遺障害は外観から眼で見てわかるものをいいます。
検査してみたら変形していた、というものは該当しません。
偽関節が生じた結果、変形してしまった場合も12級5号に認定される可能性があります。
ちなみに後遺障害8級に「上肢の偽関節」がありますが、鎖骨は上肢にはあたりませんので、鎖骨の偽関節は8級認定とはなりません。
変形や偽関節:後遺障害慰謝料の相場
後遺障害12級5号の後遺障害慰謝料目安は次の通りです。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準※1 | 自賠責基準 |
---|---|---|---|
12 | 290 | 100 | 93 |
※1 旧任意保険支払基準を参照、現在は保険各社が独自に設定
※2 慰謝料の単位は万円
慰謝料計算の黄金ルール!「慰謝料計算機」はこちら
情報入力=計算結果をスグ表示!
交通事故の慰謝料計算の便利ツール「慰謝料計算機」を使ってみませんか?
使うメリットの一部をご紹介します。
- 簡単に「入通院慰謝料」も「後遺障害慰謝料」もわかる!
- 慰謝料だけじゃない!仕事を休んだことへの補償金額もわかる!
- 複雑な計算がいらないので、手間をかけずに結果がわかる!
慰謝料計算機の計算結果のほかにも、治療にかかった費用、交通費などは別途求めていくことになります。
リハビリ費用も別途になるので、請求し忘れがないように注意が必要ですね。
まとめ
鎖骨骨折の慰謝料について確認してきました。
入通院慰謝料はもちろんですが、後遺障害が残った時の慰謝料も、算定基準によって金額はバラバラですね…。
あなたは、何基準で算定された慰謝料なら納得できそうですか?
鎖骨骨折の交通事故慰謝料に関するQ&A
鎖骨骨折で受けとれる慰謝料は?
鎖骨骨折で受けとれる慰謝料は① 入通院慰謝料、② 後遺障害慰謝料の2つに分けることができます。① 入通院慰謝料に関しては、鎖骨骨折の治療のために入院・通院、治療をせざるを得なかったという精神的苦痛に対して支払われる金銭です。一方、② 後遺障害慰謝料は、鎖骨骨折の結果に身体に残った後遺障害に対する慰謝料です。後遺障害が残った場合のみ、受けとることができます。
鎖骨骨折ではどんな後遺障害が想定される?
後遺障害に認定される可能性がある症状としては、痛み・しびれ/腕・肩があげられない/変形・ぐらぐらするなどがあげられます。折れた骨がくっついても、このような症状が残っている場合は、後遺障害認定を検討することをオススメします。
鎖骨骨折で認定される可能性がある後遺障害等級は?
痛み・しびれでは後遺障害12級または14級/肩や腕の上がらなさでは8級、10級または12級/変形では12級に認定される可能性が考えられます。後遺障害等級は1級から14級まであり、数字の小さい方が障害の程度は重くなります。
「痛み」「しびれ」の後遺障害慰謝料はいくら?
鎖骨骨折の後遺障害「痛み・しびれ」は、後遺障害等級12級または14級となるでしょう。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに目安が決まっています。後遺障害12級は、自賠責保険の基準:93万円/任意保険基準:100万円/弁護士基準:290万円となります。14級は、弁護士基準:110万円/任意保険基準:40万円/自賠責保険の基準:32万円です。弁護士基準で算定するとき、最も相場は高くなります。
「腕・肩が上がらない」の後遺障害慰謝料はいくら?
鎖骨骨折の後遺障害「腕・肩が上げづらい」は、後遺障害等級8級、10級、12級となるでしょう。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに目安が決まっています。後遺障害8級は、自賠責保険の基準:830万円/任意保険基準:400万円/弁護士基準:324万円となります。12級は、自賠責保険の基準:93万円/任意保険基準:100万円/弁護士基準:290万円となります。弁護士基準で計算した時、相場は最も高くなります。