交通事故の慰謝料「主婦手当」とは?休業補償の一種?相場をチェック
交通事故の損害に対する慰謝料(=損害賠償)は、
- 怪我の治療費用
- 怪我を負ったことに対する精神的苦痛への慰謝料
- 家事ができなかった期間の補償
などさまざまな損害項目を合計したものとなります。その中で本記事は「主婦手当」について解説していきたいと思います。
本記事ではテーマ上「主婦」と明記していますが、男性の「主夫」もふくむとご理解ください。
交通事故の被害で主婦業ができない…
主婦といった家事労働者の方が交通事故の被害にあったことで家事ができなくなったら、主婦手当(=休業補償)として損害を請求することができます。
主婦手当とは
交通事故の怪我が原因で働けなかった期間の補償
家事労働は労働社会のなかで金銭的に評価される労働だと認められています。たとえば家事ができないことの代わりに家政婦やハウスキーパーを利用した場合は利用料が発生します。このように家事労働は労働による対価として実際の収入はありませんが、収入がある人とおなじように「仕事」としてみなされています。
週30時間以上のフルタイムで働いている場合は、兼業主婦ではなく「給与所得者」と同等に扱われるのが原則です。
<関連記事>実際に収入がある場合の休業補償について詳しくはこちら
主婦手当に該当する対象日・期間は、怪我が完治した場合/後遺症が残った場合で異なるので注意が必要です。
完治 | 後遺症 | ||
---|---|---|---|
対象日 | 現に休業した日 | ||
期間 | 起点日 | 事故日 | |
終点日 | 治療終了日 | 症状固定日 |
現に休業した日が休業日数になるといっても主婦だとはっきりと分かりません。そこで主婦の場合は「実通院日数」に基づいて割り出されることが多くなっています。
交通事故の主婦手当の算定で登場する基準
主婦手当をはじめとした交通事故の慰謝料(=損害賠償)は、算定するときに登場する基準があります。
3つの基準
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
どの基準で計算するかによって最終的に手にする金額に差がでることになります。主婦手当以外の慰謝料といった損害賠償を算定するときにもこれらの基準は重要なカギをにぎります。3つの基準の違いを簡単におさえておきたいと思います。
自賠責基準
自動車損害賠償保障法に基づいた省令で設定された基準。最低限度の補償を目的としているため、3基準のうち最も低い基準となっている。
* 自賠責保険における慰謝料(=損害額の総額)が「120万円以下」の場合に採用
任意保険基準
各任意保険会社がそれぞれ独自に設定した基準。自賠責基準と比較すると多少高い基準にはなっている。
弁護士基準
過去の裁判例を参考に設定された基準。3基準のうち最も高い基準となっている。
主婦手当の算定方法における任意保険基準は、自賠責基準と弁護士基準のいずれかの基準で算定したときに支払われる金額が少ないほうが採用されることが多いようです。
では、ここからはそれぞれどのようにして主婦手当が算定されることになるのか解説していきたいと思います。
特に、主婦のような家事従事者の場合は実際の収入がないので損害をどのようにあつかうかが争点になります。その点にも注目してみてみたいと思います。
自賠責基準の「主婦手当」相場
日額5,700円で計算される?
自賠責基準による主婦手当の支払いは、「一日あたりに失われた収入(基礎算定日額)」と「実際に休んだ日数(実休業日数)」をかけて求められます。式にするとつぎのような計算式になります。
自賠責基準|主婦手当の計算式
基礎算定日額(5,700円) × 実休業日数
自賠責基準における基礎算定日額は「一律5,700円」として計算されます。もっとも自賠責基準の日額5,700円で限定されてしまうのはいわゆる専業主婦の場合になります。
兼業主婦の場合は?
週30時間未満のパートといった兼業主婦の方は自賠責基準の日額5,700円では、一日当たりに失う収入がさらに高額である可能性があります。兼業主婦の場合は、基礎算定日額は5,700円に限定されていません。
兼業主婦|自賠責基準の基礎算定日額
5,700円
または
事故前3ヶ月の収入の平均
これらのいずれか高い方が採用されることになります。
弁護士基準の「主婦手当」相場
事故前年の賃金センサスで計算される
弁護士基準による主婦手当の支払いは、自賠責基準の場合と同じように「一日あたりに失われた収入(基礎算定日額)」と「実際に休んだ日数(実休業日数)」をかけて求められます。式にするとつぎのような計算式になります。
任意・弁護士基準|休業補償の計算式
算定基礎日額(賃金センサスによる女性の平均賃金÷365日) × 実休業日数
弁護士基準における基礎算定日額は「賃金センサスによる女性の平均賃金÷365日」として計算されます。近年の女性の平均賃金を日額にすると大体「1万円」程度となる傾向にあるようです。
(参考)賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額の日額
平成29年(2017年):10,351円
平成30年(2018年):10,483円
兼業主婦の場合は?
週30時間未満のパートといった兼業主婦の方は賃金センサスの日割り額では、一日当たりに失う収入がさらに高額である可能性があります。
兼業主婦|弁護士基準の基礎算定日額
賃金センサスによる女性の平均賃金÷365日
または
事故前3ヶ月の収入÷ 90日
これらのいずれか高い方が採用されることになります。
まとめ
主婦手当は、休業補償とおなじように交通事故の怪我で家事ができなかった期間を金銭に換算して補償される損害賠償の一部であることが分かりました。実際の収入がない主婦でも家事業は「仕事」として認められ、補償を請求することができます。
自賠責基準では原則1日あたり5,700円として主婦手当が計算されますが、賃金センサスによる女性労働の賃金平均に基づいて計算できる弁護士基準では1日当たりおおよそ1万円で計算することができます。このような相場があることを知らないと損をしてしまうかもしれません。不足のない慰謝料が得られるように、十分に主婦手当について理解しておきましょう。
交通事故慰謝料・主婦手当の相場に関するQ&A
交通事故で思うように主婦業ができないとき補償はある?
主婦手当(=休業補償)として損害を請求することができます。家事労働については、収入がある人と同じように「仕事」とみなされているからです。主婦手当に該当する対象日・期間は、怪我が完治したケース/後遺症が残ったケースで違いますので、注意しましょう。
主婦手当はみんな同じ金額?
主婦手当を算定するにあたって、① 自賠責基準② 任意保険基準③ 弁護士基準、の3つの基準があります。この3つの基準は主婦手当に限らず、慰謝料といった損害賠償を算定する時にも使います。どの基準で算定するかで、主婦手当の金額は変わります。
自賠責保険の基準なら主婦手当はいくら?
1日あたり5700円とされています。自賠責基準による主婦手当の支払いは、「一日あたりに失われた収入(基礎算定日額)」と「実際に休んだ日数(実休業日数)」をかけて求められます。計算式は<基礎算定日額(5700円)×(実休業日数)>です。
弁護士基準なら主婦手当はいくら?
「一日あたりに失われた収入(基礎算定日額)」と「実際に休んだ日数(実休業日数)」をかけて求められます。計算式は<算定基礎日額(賃金センサスによる女性の平均賃金÷365日)×(実休業日数)>です。基礎算定日額は「賃金センサスによる女性の平均賃金÷365日」として計算されます。近年の女性の平均賃金を日額にすると大体「1万円」程度となる傾向のようです。