交通事故の慰謝料は通院1日いくら?1日の通院先が複数なら増える?
交通事故にあって、幸いにも軽症であった場合、通院が1日だけで済むこともあるでしょう。重傷でなくて本当に良かったです。
この記事では、通院日数が1日だけの場合、慰謝料はどれくらいもらえるのかを解説します。
また、1日だけの通院だからこその「よくあるお悩み」についても徹底調査しました!
交通事故の通院慰謝料|通院1日だといくら?
交通事故の慰謝料のうち、怪我の治療のために通院するという精神的苦痛に対して支払われる通院慰謝料があります。
1日からでも請求できますので、交通事故の慰謝料は1日の通院でも受けとることは可能です。
注意したいのは、通院慰謝料の計算には方法が3つあることです。
それぞれに算定方法が異なります。
1日あたりだとどのように算定するのかみていきましょう。
計算方法①自賠責保険の基準
算定式
入院日数 × 4200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4200円
あるいは
入院日数 × 4200円 + 通院期間 × 4200円*
通院期間(※)はどちらかの短い方を採用することになります。
通院1日の場合は、通院期間も実治療日数も1日ということですので、4,200円が通院慰謝料となります。
自賠責保険とは、自動車の運転者に加入義務のある保険になります。
ですから、事故の相手方が自動車であれば、「自賠責保険の基準」で算定した慰謝料は、まず受けとることが可能でしょう。
計算方法②任意保険の基準
算定方法
現在は各任意保険会社が独自に基準を設けており、非公開とされています。
以前は統一された基準があり、内容は公開されていました。
下表は以前の任意保険の基準をまとめたものです。
自賠責保険の基準とは違い、計算式は使いません。
入通月数と通院月数の交わるところを見ます。
通院1日は入院0ヶ月・通院1ヶ月のところをみます。
通常はひと月単位で算定されますが、今回は1日と日数が少ないこともあり、126,000円を30日で割って算定してみます。
126,000円÷30(日)=4,200円
1日あたり4,200円となり、自賠責保険の基準と同額ですね。
表の基準は過去のものですので、正確な数字とは言えません。
おそらく1日だけの通院であれば、自賠責保険の基準と同額で提案を受けることになるでしょう。
もっとも、任意保険は強制加入の保険ではありません。
交通事故にあったら、相手方に、任意保険の加入状況は必ず確認しておきましょう。
計算方法③弁護士基準
算定方法
裁判所でも使われている基準表を用います。
「軽傷」「重傷」と表は2つに分かれています。
打撲(打ち身)、擦り傷、むちうちなどは軽傷の表を参照します。
下表のように、入院・通院の月数の交わるところをみます。
通院1日ですので、入院は0ヶ月ということになりますね。
1日だけの通院であれば、おそらくは軽傷ということになるかと思います。
入院0ヶ月・通院1ヶ月だと190,000円となります。
190,000円まるまるは受けとれないので、この金額を元に日割りされるでしょう。
交通事故の慰謝料が8,400円になると聞いた!
慰謝料の日額は4,200円です
「交通事故の慰謝料が8,400円になるって聞いた!」
インターネット上だけでもそのような声を目にしました。
「8,400円説」は自賠責保険の基準で計算した時の考え方のようで、おそらく計算式の「見た目」だけをさしています。
先ほど紹介した自賠責保険の基準による通院慰謝料の計算式をもう一度確認します。
算定式
入院日数 × 4200円 + 通院期間(実治療日数 × 2)* × 4200円
あるいは
入院日数 × 4200円 + 通院期間 × 4200円*
※通院期間は短い方を採用
通院期間というのは、最初に通院を開始した日から医師によって「完治した」と診断された日までの期間を指します。
交通事故の損害賠償では、ひと月を30日としてカウントするようです。
通院慰謝料が8,400円にみえるのは、次のような場合かと思われます。
(例)
- 通院期間:30日
- 実治療日数:14日
実治療日数は2倍しますので、14日✖2=28(日)です。
30日と比較すると少ないので、計算には28日を使うことになります。
では計算式は、こうなります。
4,200円✖(14日✖2)=117,600円
人によっては、このように見えるのかもしれません。
↓
(4,200円✖2)✖14日=117,600円
あたかも、4,200円の2倍のお金(つまり8.400円)が14日間支払われるようにみえますね。
しかし、これは見た目だけの問題なのです。
通院1日の場合は、実治療日数も通院期間も「1日」なので
↓
4,200円✖1(日)=4,200円
となりますね。
通院は1日だけど手術をした!慰謝料は増額される?
「手術」だけを理由に慰謝料の増額提案はされない
「通院は1日だけど、その日のうちに手術を行った!」
通院1日ということは、その日のうちに手術をして、ご帰宅されたということでしょう。
残念ながら、手術をしたことだけで慰謝料増額を目指すのは少し難しいです。
あくまで「通院期間」を元に考えるためです。
相手方から「手術大変でしたね」と慰謝料を増やして提案を受けることは、おそらくないでしょう。
場合によっては、弁護士に依頼・相談をして裁判することで、手術による慰謝料の増額は見込めるかもしれません。
慰謝料の増額事由
慰謝料が増額されるポイントとしては、
- 加害者側の態度
- 交通事故態様の悪質性(飲酒運転や速度超過、ひき逃げなど)
- 被害者の怪我が重傷(軽傷と比べて慰謝料の設定が高い)
などがあげられるでしょう。
通院が1日だけの場合は、重傷事案には該当しなさそうです…。
1日で複数の科へ通院!慰謝料は増額される?
慰謝料はあくまで「通院期間」で算定
「通院は1日だけど、同じ日に色んな診療科を受けた!」
怪我や気になるところは1ヶ所とは限りませんね。
特に、お仕事をされていたり、お子さんが小さかったりすると、なかなか時間が作れないこともあるでしょう。
そんな時、一度に病院関係を済ませてしまいたい…ということもあるかと思います。
残念ながら、慰謝料は通院期間で算定することが原則です。
ですから1日ですべて済んだ場合、慰謝料はあくまで1日分で算定されます。
1日で複数の医療機関を受診したら治療費は?
通院慰謝料は1日分しか認められませんが、治療費は異なる治療をしたならそれぞれ支払われます。
例えば、子どもが顔を打ち付けたことで
- 眼科で念のため眼の検査を行った
- 小児科で傷の様子をみてもらった
このような場合、同じ怪我であっても治療内容や行っている検査がちがいますよね。
違いがある場合は、眼科・小児科それぞれの診察代、投薬料などがそれぞれ認められます。
気を付けたいのは、同じ怪我に対して同じ検査をしていたり、同じような処置をしている場合です。
それらは1ヶ所でしか治療費が認められない可能性があります。
1日だけの通院で慰謝料以外に認められるものは?
仕事を休んだ「休業損害」
通院のために
- 会社を休んだ
- 自営業のお店を臨時休業した
- 主婦だけどいつも通り家事ができなかった
交通事故の被害にさえあわなければ「休業」することはなかった…。
こんな時は1日単位でも休業したことへの補償がなされます。
「主婦でも休業損害を受けとれるの!?」という声も多いようですが、主婦の「家事」も労働のひとつです。
交通事故がなければ通常通り家事ができたのだから、もらえるものですよ。
自賠責保険の基準の場合
自賠責保険の基準であれば、1日あたり5,700円になります。
任意保険基準・弁護士基準の場合
休業損害を受けとるために、お勤めの方は、勤め先から休業証明を発行してもらいましょう。同時に、交通事故にあう前3ヶ月の給与明細もそろえておきましょう。
また、自営業の方は前年度の確定申告書でご自身の収入を明らかにする準備が必要です。
主婦の方は、任意保険の基準の場合、自賠責保険の基準と同じく5,700円で算定されることが多いようです。
しかし、弁護士基準でしたら「賃金センサス」という国の統計結果を用いて交渉するそうで、この方が金額は高くなるそうです。
給与所得者や自営業者についても、弁護士に依頼するほうが、被害者に有利な算定方法で交渉してくれる可能性が高いようです。
もし気になる方は、弁護士に相談してみるのもいいかもしれませんね!
休業への補償についてもっと詳しく知りたい方は、下記ページも参考にしてください。
▼関連記事:休業補償とは
1日だけの通院であっても、治療費はもちろん支払われます。
治療費の中には、通院交通費なども含まれます。
公共交通機関(電車・バス)などの場合は領収書は不要ですが、タクシーの場合は必要です。
また、診断書の作成費用等も実費として損害賠償請求可能です。
まとめ
交通事故の慰謝料については、通院1日でも支払われます。
そして、通院に際してお仕事を休んだ場合の補償や、治療費なども損害賠償すべきものです。
1日の通院で済んで本当に何よりです!
通院1日の交通事故慰謝料についてのQ&A
慰謝料算定の3基準とは?
交通事故の慰謝料には、① 自賠責保険の基準、② 任意保険の基準、③ 弁護士基準という3つの算定方法があります。自賠責保険の基準とは、相手方の自賠責保険会社から賠償金を受ける時の基準/② 任意保険の基準とは相手方の任意保険会社が損害賠償を算定する時の自社基準、③ 弁護士基準は、被害者の代わりに示談交渉をおこなう弁護士がつかう基準です。
通院慰謝料が8400円になるってホント?
そういうわけではありません。おそらくは、自賠責保険の基準で通院慰謝料を算定する時の、「計算式の見た目」の問題でしょう。1日あたり4200円というのは、法律で定められた金額です。その日額が増えるということはありません。くわしい解説は下記より確認してください。
1日で複数の医院を受診した場合の慰謝料は?
1日のうちに、色んな診療科を受診することもあるでしょう。その場合、通院先で「異なる治療」をした場合、それぞれの治療費を相手方に請求することができます。しかし、通院慰謝料は日額ですので、1日分だけが認められることになります。