交通事故の慰謝料|やまない耳鳴り…後遺障害認定をあきらめないで!
交通事故にあってから、耳鳴りが止まらない…。
この記事は交通事故後から続く耳鳴りでお悩みの方に向けた「慰謝料」の解説記事です。
耳鳴りは症状の出方に個人差があります。
音の種類(ジー・ジーン・キーン・ピーンなど)、音の高さ、頻度など様々です。
耳鳴りは、外見上は症状が分からないので、周囲からの理解が得づらいという難点があります。
ですが泣き寝入りすることはありません。
耳鳴りで受けとれる慰謝料について、解説します。
交通事故後の耳鳴りはなぜ起こる?
首の損傷や、軽度外傷性脳損傷(MTBI)などにより、耳鳴りが起こっている可能性があります。
- ① 頸部への衝撃によるむちうち
- ② 頭部を打ちつける・揺さぶられるなど軽度外傷性脳損傷(MTBI)
むちうち
首に不自然な力が加わり、まるでむちのようにしなって捻挫している状態をむちうちといいます。
首のことは「頸椎」「頸部」ともいい、頸椎捻挫や外傷性頚部症候群などの診断名がつきます。
▶関連記事:むちうちの慰謝料相場
軽度外傷性脳損傷(MTBI)
MTBIは、Mild Traumatic Brain Injuryの頭文字をとっています。
まずは、TBIの意味を知ると考えやすいですよ。
民主医療機関連合会(略称:民医連)によると、TBIは次のように説明されています。
「頭にものがぶつかる」「急に頭が動かされる、もしくは急に動きが止まる」などによって、脳の神経細胞の軸索が損傷すると外傷性脳損傷(TBI)を発症します。
出典:https://www.min-iren.gr.jp/?p=26397
むちうちは「頸部」ですが、TBIは「頭」への損傷ですね。
ちなみに「M」のMildは「軽度」とされていますが、これは脳損傷時の意識障害が軽度をさします。
「軽症」の意味ではないので、放っておいていい状態ではなさそうです。
耳鳴りと交通事故の因果関係は色々な説があるようです。
今回は2つを紹介しましたが、この2つでないと耳鳴りが発生しない!というわけではありません。
たとえば「外傷性鼓膜穿孔」など、耳そのものを受傷したときにも耳鳴りが残る可能性があります。
交通事故後に病院を受診した時は、どんなところを打ったかなどの詳細を医師にきちんと伝えるようにして、あなたの怪我と耳鳴りの関連を調べる必要がありますね。
耳鳴りで通院したら慰謝料はもらえる?増額のポイントは?
耳鳴りで受けとる可能性がある慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料です。
慰謝料を算定する時のポイントも併せてみていきましょう。
入通院慰謝料はいくら?
入通院慰謝料の金額は、慰謝料を算定する方法によって変わります。
算定する方法のことを、「〇〇基準」と呼びます。
具体的には、自賠責保険の基準、任意保険の基準、弁護士基準という3つがあります。
自賠責保険の基準
自賠責保険の基準というのは、交通事故の相手方の「自賠責保険」の基準に基づいて計算することです。
といっても、自賠責保険の基準はどの保険会社でも一律です。
自動車の運転者は自賠責保険への加入義務があります。
入通院慰謝料の計算
(1)入院日数 × 4,200円 + 通院期間(実治療日数 × 2) × 4,200円
あるいは
(2)入院日数 × 4,200円 + 通院期間 × 4,200円
1日あたりは4,200円とされています。
どれだけ通院したかによるので、4,200円と通院期間で掛け算します。
注意したいのは「通院期間」の考え方です。
(1)の実際に通院した日数を2倍した数と(2)の通院期間を比べて少ない方を計算に使うのです。
(例)
通院期間4ヶ月(120日)/実際の通院日数55日
55日を2倍すると110日になり、通院期間の120日より少ないですね。
ですから、計算には実際の通院日数の2倍である110日を使うことになります。
→ 4,200円✖110=462,000円
任意保険の基準
任意保険の基準は、現在非公開とされていて保険会社ごとに異なります。
以前は任意保険の基準は統一されていて、一般にも公開されていました。
実際は、以前の統一基準通りの保険会社もあるようです。
ですので、参考として旧任意保険支払基準を紹介します。
入院月数・通院月数の交わるところが、入通院慰謝料の金額です。
弁護士基準
弁護士基準は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称・赤い本)にて確認できる基準です。
原則は「重傷」を参照しますが、症状の存在が画像検査(MRIなど)で確認できないむちうちは「軽傷」の表を使うことになります。
任意保険の基準と比べると、弁護士基準で算定するほうが金額は高くなります。入院月数・通院月数の交わるところが、入通院慰謝料の金額です。
後遺障害慰謝料|もらえる人・もらえない人
このイラストは損害賠償の内訳を示しています。
後遺障害慰謝料は、治療終了後(症状固定後)の損害賠償項目とされていますね
症状固定
症状固定とは、これ以上治療を続けても、良くも悪くもならない状態を言います。
つまり、怪我が完治せずに何らかの後遺症が残っている状態のことです。
症状固定となったら、身体に残った後遺症を後遺障害として認定してもらうための申請をします。
申請した結果、「後遺障害等級」に認定されると、その等級を元に後遺障害慰謝料が算定されます。
ポイント
後遺障害慰謝料は後遺障害認定された人だけが受けとれる慰謝料です。
後遺障害認定の申請は2つの方法があります。
(1)事前認定
(2)被害者請求
どちらの方法をとるかは被害者自身で決めることができます。
それぞれの申請フローは次の通りです。
事前認定
▼事前認定のポイント
- 被害者は「後遺障害診断書」を医師に作成してもらい、加害者の任意保険会社に提出する。
- 加害者の任意保険会社がその他の資料をそろえて、後遺障害等級認定の申請の仕上げを行う。
- 資料の用意などの手間が最小限で済む点が被害者にとってはメリットである。
- 最終的にどんな資料を添えて申請されたのか、被害者は分からない点がデメリットと言える。
次に、被害者請求の流れです。
▼被害者請求のポイント
- 被害者は医師が作成した「後遺障害診断書」のほか、検査結果などの資料をそろえて、加害者の自賠責保険会社に提出する。
- 申請資料を精査するなど、後遺障害認定を受けられるような工夫ができるメリットがある。
- 被害者にとっては資料の用意などの手間や時間がかかるというデメリットがある。
より詳しく後遺障害認定の流れを知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
▶関連記事:後遺障害認定とは?
耳鳴りは後遺障害認定される?
耳鳴りは後遺障害認定されうるものです。
詳細を見ていきましょう。
耳鳴りの後遺障害等級
12級または14級に認定される可能性があります。
12級相当 | 耳鳴りにかかる検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できる |
---|---|
14級相当 | 難聴に伴い常時耳鳴りがあることが合理的に説明できる |
検査で示せるものが12級という判断になるようです。
耳鳴りの後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとにおおよその目安が定められています。
もちろん個別の事情を考慮して、目安額からの増減も有り得ます。
入通院慰謝料と同様に、後遺障害慰謝料についても慰謝料を算定する基準が3つあります。
同じ後遺障害等級ですが、金額が変わります。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準※1 | 自賠責基準 |
---|---|---|---|
12 | 290 | 100 | 93 |
14 | 110 | 40 | 32 |
※1 旧任意保険支払基準を参照、現在は保険各社が独自に設定
※2 慰謝料の単位は万円
このように、金額には違いが出ますね。
弁護士基準で算定する時、後遺障害慰謝料は最も高い相場になります。
12級・14級でも随分金額差があります。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級によって大きく変わります。
慰謝料の適正な獲得は後遺障害等級の認定を適正に受けることから始まっているのですね!
耳鳴りの後遺障害認定|4つの鉄則
適正な後遺障害等級で認定を受けるために、耳鳴りで後遺障害認定を申請する時のポイントをまとめてみます。
おさえるべきポイントは4つあります。
ポイント① :事故との因果関係
後遺障害認定のポイントとしては、その症状が一定して表れることが重要です。
交通事故のすぐ後には耳鳴りがないのに、しばらく経ってから耳鳴りを主張しても、交通事故との因果関係がうまく示せません。
たとえば、最初の受診日から半年後に耳鳴りを訴えても、その耳鳴りが本当に交通事故に起因しているかの判断がつかないのです。
ポイント② :後遺障害診断書
後遺障害診断書に耳鳴りがあることを記載してもらいましょう。
後遺障害の認定において、後遺障害診断書は重要な判断材料です。
後遺障害診断書にかかれていない内容は、後遺障害認定はされないでしょう。
また、十分な治療を尽くしたが改善されない、ということも記載すべきポイントです。
ポイント③ :具体的な主張
医師に耳鳴りの具体的な症状を報告し、詳細を後遺障害診断書に記載してもらいましょう。
後遺障害は労働能力の低下を伴うものだと示すことが重要です。
ですから、耳鳴りの症状が仕事にどんな影響を与えているかを丁寧に述べましょう。
耳鳴りで仕事ができない、ではなく、耳鳴りによりどんな仕事が、どれくらいできなくなったのかが大事です。
ポイント④ :耳鳴りの検査
耳鳴りは自覚症状になり、他の人からは目に見えません。
こういった症状の場合は特に、検査結果でその症状の存在を示すことが求められます。
- ピッチ・マッチ検査
- ラウドネス・バランス検査
特に、この2つは耳鳴りの存在を示すためには欠かせません。
耳鳴りの存在が検査でも確認できれば、12級認定の可能性が高まるそうです。
【慰謝料計算機】使えば便利さを実感できるはず!
計算機で見えてくる「あなたの慰謝料」
耳鳴りに関する入通院慰謝料、後遺障害慰謝料を解説してきました。
交通事故の損害賠償は、慰謝料だけではありません。
怪我によって会社を休んだ場合の補償(休業補償)や、耳鳴りが後遺障害として残ったことで失われてしまった将来の利益(逸失利益)も、もちろん損害賠償してもらうべきものです!
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※計算結果は「弁護士基準」にて算定されています。相手方から提案される金額は、計算機の結果と異なる可能性があります。
まとめ
耳鳴りは何かの怪我によって引き起こされるものです。
その怪我の治療費や、手術代、通院にかかった交通費などは「慰謝料計算機」の結果とは別モノです。
それらをくまなく算定し、請求していくのは一苦労ですね…。
弁護士に依頼をすれば相手方とのやり取りの窓口になってくれるなど、被害者にとって心強い味方になってくれそうですね。
交通事故の慰謝料と耳鳴りに関するQ&A
耳鳴りは耳を直接痛めていなくても起こる?
起こる可能性があります。耳鳴りは、直接耳そのものを受傷して発生する場合と、むちうち/軽度外傷性脳損傷(MTBI)のように、直接耳に外傷を負わなくても起こる場合があげられます。交通事故後に病院を受診した時は詳細を医師にきちんと伝えるようにして、怪我と耳鳴りの関連を調べる必要があります。
耳鳴りは後遺障害に認定される?
後遺障害に認定される可能性があります。認定される可能性がある後遺障害等級は、後遺障害12級相当/14級相当があります。12級相当は「耳鳴りにかかる検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できる」、14級相当は「難聴に伴い常時耳鳴りがあることが合理的に説明できる」と規定されています。
耳鳴りの後遺障害慰謝料はいくら?
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて算定されます。慰謝料の算定基準は、自賠責保険の基準・任意保険の基準・弁護士基準、の3つがあり、同じ等級でも基準によって金額が変わります。後遺障害12級相当のとき、弁護士基準:290万円/任意保険基準(旧基準):100万円/自賠責基準:93万円、後遺障害14級相当のとき、弁護士基準:110万円/任意保険基準(旧基準):40万円/自賠責基準:32万円が相場です。
耳鳴りで後遺障害認定を受けるポイントは?
① 事故との因果関係を示す/② 後遺障害診断書をきちんと記載してもらう、③ 具体的に症状を伝える、④ 検査で耳鳴りの存在を明らかにする、の4つがポイントでしょう。耳鳴りは自覚症状ですので、周囲からは存在しているのかもわかりません。耳鳴りの存在が検査でも示せれば、後遺障害12級認定の可能性が高まるでしょう。