交通事故の慰謝料|請求手続きの流れは?振り込み時期や請求の時効も解説!
交通事故に遭った場合に気になることの一つとして、慰謝料や賠償金の請求の流れ、支払い時期があるのではないでしょうか。
交通事故の慰謝料や賠償金はどう請求する?
交通事故の慰謝料や賠償金はいつ支払われる?
支払い時期を早めてもらうことはできる?
交通事故の慰謝料に関するこうした疑問や不安を解消するため、この記事では
- 慰謝料や賠償金の振り込み時期
- 慰謝料請求の流れと時効
- 慰謝料が支払われない、治療費が打ち切られたなどのトラブル対処法
について解説しています。
交通事故の慰謝料の振り込み時期と請求の流れ
交通事故の慰謝料はいつ振り込まれる?
交通事故の慰謝料や賠償金の振り込み時期は、項目によって異なります。主な慰謝料・賠償金の振り込み時期は以下の通りです。
項目 | 振込時期 |
---|---|
入通院慰謝料 | 示談成立後 |
死亡慰謝料 | |
後遺障害慰謝料 | 事前認定* 全額示談成立後 |
被害者請求* 一部示談前、残りは示談成立後 |
|
治療費 | 基本的に通院と並行して |
休業損害 | 毎月 |
その他の示談金 | 示談成立後 |
*後遺障害等級認定の申請方法のこと。くわしくは下記「慰謝料請求の流れ②」参照
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交通事故の慰謝料・賠償金の支払い時期については、こちらの記事もご覧ください。
具体的な請求の流れについては次の項からご説明していきますので、ご確認ください。
慰謝料請求の流れ①示談交渉で請求する場合
示談成立後に振り込まれる項目については、示談交渉で加害者側に請求することになります。
示談交渉の流れは以下のようになります。
示談交渉の流れ
- ① 交通事故による損害額が確定したら、請求金額を計算しておく
- ② 加害者側の保険会社から示談の申し入れがある
- ③ 加害者側の保険会社と交渉
- ④ 示談成立後、加害者側の保険会社から示談書が届く
- ⑤ 示談書に署名・捺印して返送
⑥保険会社側での事務処理終了後、示談金が振り込まれる
示談は多くの場合、加害者側の任意保険会社が提示する金額が記載された書類が届くことで始まります。
ただ、待っていても一向に連絡が来ないということもあり、そうした場合には被害者側から示談開始を申し入れることもできます。
示談成立後、示談書を返送して示談金が振り込まれるまでには、2週間程度かかります。
慰謝料請求の流れ②示談交渉前に請求する場合
示談交渉前に請求する項目には、
- 治療費
- 休業損害
があります。
また、後遺障害慰謝料については全額示談交渉後に支払われる場合もあれば、一部示談前に支払われることもあります。
これらの請求方法についてご紹介します。
①治療費請求の流れ
治療費は基本的に、治療と並行して加害者側の保険会社が病院に直接支払います。
そのため、被害者の方は加害者側の保険会社に通院先を伝えておいてください。
なお、場合によっては治療費は被害者の方が立て替えておいて、示談交渉の際に請求するということもありますので、ご注意ください。
②休業損害の請求の流れ
休業損害を請求するためには、勤務先で作成してもらった休業損害証明書を加害者側の保険会社に提出します。
そうすることで、毎月休業損害の支払いを受けることができます。
③後遺障害慰謝料請求の流れ
後遺障害慰謝料を請求するためには、後遺障害等級という等級を獲得することが必要です。
後遺障害等級を獲得するためには審査を受ける必要があるのですが、その審査への申請方法には「事前認定」「被害者請求」という2種類の方法があります。
示談交渉前に後遺障害慰謝料を受け取りたい場合には、「被害者請求」を行います。
被害者請求
加害者側の自賠責保険会社を介して審査の申請をする方法。
この場合、後遺障害慰謝料は一部示談前に、残りは示談後に支払われる。
事前認定
加害者側の任意保険会社を介して審査の申請をする方法。
この場合、後遺障害慰謝料は全額示談交渉後に支払われる。
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後遺障害慰謝料の請求方法についてさらに詳しくはこちらの記事をご覧ください。
交通事故の慰謝料請求には時効がある!
交通事故の慰謝料請求には、時効があります。この時効が過ぎてしまうと、加害者に慰謝料を請求できなくなりますので、それまでに示談を成立させる必要があります。
物損事故 | 事故日~3年 |
---|---|
人身事故 (後遺障害等級なし) |
|
人身事故 (後遺障害等級あり) |
症状固定日~3年 |
死亡事故 | 死亡日~3年 |
加害者不明の事故 | 事故日~20年* |
*加害者が判明したらその日から3年
慰謝料を前払いしてもらう方法とは?
交通事故の慰謝料・賠償金の振り込み時期はここまでご説明した通りです。
ただ、上でご紹介した時期よりも前に、前払いという形で慰謝料を受け取ることもできます。
その方法は、
- 加害者側の自賠責保険会社への直接請求
- 仮渡制度
です。
①自賠責保険会社への直接請求
交通事故の慰謝料・賠償金は、基本的に加害者側の自賠責保険会社と任意保険会社から支払われます。
実際の支払いの際は、任意保険会社が自賠責保険会社の支払い分もまとめて支払うため、被害者の方が自賠責保険に直接請求することはありません。
しかしそこをあえて自賠責保険会社に直接請求すると、自賠責保険の支払分だけ一足先に受け取ることができるのです。
②仮渡制度
仮渡制度とは、けがの状態や入通院日数に応じた金額を、後に支払われる慰謝料・賠償金から前払いという形で支払ってもらえる制度です。
仮渡制度で支払われる金額は、以下のようになっています。
金額 | 条件 |
---|---|
40万円 | ・14日以上の入院と30日以上の治療 ・大腿または下腿の骨折 など |
20万円 | ・入院14日以上 ・入院と30日以上の治療 ・上腕または前腕の骨折 |
5万円 | 11日以上の治療 |
290万円 | 死亡事故 |
ただし仮渡制度については、
仮渡金が慰謝料や賠償金を上回った場合には、超過分を返金しなければならない
という注意点があります。
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慰謝料・賠償金の前払いについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
慰謝料の支払いが遅い!原因と対処法は?
慰謝料の支払いが遅い原因4つ
示談が成立して、慰謝料や賠償金の金額が決まったはずなのになかなか振り込まれない…そのようなときに考えられる理由をご紹介します。
支払いが遅い理由4つ
- ① 示談書が保険会社に届いていない
- ② 保険会社側の処理の遅れ
- ③ 弁護士の口座を介して振り込まれる
- ④ 加害者自身が振り込むことになっている
示談が成立してから慰謝料や賠償金が支払うまでの間には、
1. 被害者の方が署名・捺印した示談書が保険会社に届く
2. 保険会社内で事務処理が行われる
という工程があります。
個々の工程に何らかの理由で遅れが出ていた場合には、振り込みが遅くなります。
また、示談交渉を弁護士を介して行った場合には、慰謝料や賠償金はまず弁護士の業務用の口座に振り込まれ、そこから被害者の方の口座に振り込まれます。
そのため、その分慰謝料や賠償金の受け取りが遅くなることもあります。
また、加害者が任意保険に入っていなかった場合には、任意保険の支払分は加害者自身が支払うことになります。
しかし中には資力がなくて支払えなかったり、決まった慰謝料や賠償金を支払おうとしなかったりする加害者もいて、そうした理由で振り込みが遅れていることもあります。
慰謝料の支払いが遅い場合の対処法は?
まず、任意保険会社から慰謝料や賠償金が振り込まれる場合は、保険会社に確認をしてみましょう。
弁護士を介している場合には、弁護士に問い合わせてみてください。
加害者自身から慰謝料や賠償金が支払われる予定なのになかなか支払われないという場合は、加害者に問い合わせをしてみてください。
連絡がつかない、支払う意思がなさそうだという場合には、内容証明郵便を送りましょう。
内容証明郵便とは
- その郵便を出した人、日付、内容を郵便局が証明してくれる郵便
- 加害者に心理的圧力を与える
- たとえ加害者が郵便を捨てていても、裁判で証拠になる
内容証明郵便を出しても支払われる気配がない場合には、法的手段が必要になる可能性もありますので、弁護士に相談してみてください。
また、加害者による慰謝料・賠償金の踏み倒しを事前に防ぐ方法として、「示談書を公正証書にしておく」という方法もあります。
公正証書とは
- 公証人(元裁判官や元検察官など長年法律の専門家であった公務員)が作成した書類
- 裁判所の確定判決と同じ効力を持つ
- 公正証書に記載された賠償金を加害者が支払わない場合には、裁判を起こさず資産を差し押さえることができる
治療費の打ち切りは慰謝料にも影響する?
治療費が打ち切られる時期とは?
交通事故で治療が必要になると、基本的には加害者側の保険会社が治療と並行して、病院に直接治療費を支払ってくれます。
しかしこの治療費は、
- 一般的な治療期間が過ぎた
- 通院頻度が低い
- マッサージ、湿布の処方のみなど惰性的な治療
- 交通事故と治療の関連性が薄い
などの理由で打ち切られる場合があります。
まだ治療が必要なのに治療費打ち切りを理由に治療をやめてしまうと、
- 入通院慰謝料が少なくなる
- 後遺障害等級が認定されず、後遺障害慰謝料を請求できない
というように、慰謝料にも影響が出ます。
治療費が打ち切られた場合の影響と対処法は?
まだ治療が必要なのに治療費を打ち切られた、という場合には、
- 打ち切り延期の交渉をする
- 打ち切り後の治療費は被害者で立て替えておき、示談交渉時に請求する
- 仮差押仮払処分の申請をする
という対処法があります。
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治療費打ち切りのタイミングや対処法の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
まとめ|交通事故の請求手続きの流れ
ここまで、交通事故の慰謝料請求の流れやトラブル対処法について解説してきました。
ここで解説した内容を細分化しさらに詳しく解説した記事をまとめておきますので、こちらも是非ご確認ください。
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慰謝料の請求手続きの流れについてのQ&A
慰謝料はいつ振り込まれる?
交通事故の慰謝料・賠償金には、示談前に支払われるものと示談成立後に支払われるものがあります。ただし、示談成立後に支払われるものでも、「被害者請求」「仮渡制度」といった制度を利用することで、金額の一部を示談前に受け取ることができます。なお、交通事故の損害賠償請求権には、消滅時効があります。
慰謝料の支払いが遅いのは何故?
示談が成立したのになかなか慰謝料が振り込まれない、という場合は、① 示談書が保険会社に届いていない、② 保険会社側の処理が遅れている、③ 弁護士の口座を介して振り込まれる、④ 加害者自身が慰謝料を支払うことになっているということが考えられます。いずれにせよ、保険会社に確認をとったり、加害者に内容証明郵便を送ったりといった対応が必要です。
治療費の打ち切りは慰謝料に影響する?
加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診され、まだ治療が必要であるにもかかわらず治療をやめてしまうと、① 入通院慰謝料が少なくなる、② 後遺障害等級が認定されず、後遺傷害慰謝料が得られなくなる、といった影響が考えられます。まだ治療が必要な場合は、治療費打ち切りの延期を交渉したり、一旦被害者側で治療費を立て替えて治療を継続したりといった対応が必要です。