交通事故の民事裁判を徹底解説!費用や流れ・期間・注意点は?
交通事故に遭い慰謝料請求をする場合、その金額は示談交渉で決められます。
しかし場合によっては示談では金額が決まらなかったり、そもそも加害者側が示談に応じなかったりすることもあります。
そうした場合の対処法の1つに、民事裁判を起こすというものがあります。しかし、民事裁判と言われても具体的な想像がつかないという方も多いと思います。
民事裁判は刑事裁判とどう違うの?
民事裁判の費用はどれくらいかかるの?
民事裁判場どのように進められるの?
この記事では民事裁判の流れや費用等の情報について簡潔にまとめています。裁判を検討している方は、ぜひご確認ください。
交通事故の民事裁判|事前に知っておきたい基本情報
民事裁判と刑事裁判の違いは?
この記事では交通事故の民事裁判についてお伝えしていきますので、まずは「民事裁判」と「刑事裁判」の違いをご説明します。
刑事裁判と民事裁判の違いは主に、
① 当事者
② 目的
③ 判決の内容
に違いがあります
①当事者
民事裁判では、裁判を起こす側のことを原告と言います。
民事裁判の場合は、裁判を起こすのは個人や法人、つまり私人です。
それに対して刑事裁判を起こすのは、検察(国)です。
交通事故でも刑事裁判を行うことがありますが、この場合の原告は、交通事故の被害者ではなく検察なのです。
②目的
民事裁判は、個人と個人の争いや個人と法人の争い、法人と法人の争いといった私人同士の争いを解決するために行われます。
裁判では両者がそれぞれの主張をし、その主張の正当性を示していきます。
それに対して刑事裁判では、起訴された被告人が本当に有罪なのか、有罪である場合どういった刑を与えるかを決めることが目的となります。
裁判では検察が、被告人が有罪であることやどれくらいの刑が妥当であるかということを主張していきます。
③判決の内容
民事裁判では、賠償金や相続金などについての内容が判決となります。
ここで被告側に金銭の支払いが命じられると、被告人は原告に対して金銭を支払います。
これに対して刑事裁判では、被告人は無罪か有罪か、どういった刑事罰を与えるかということが判決の内容となります。
刑事事件でも金銭の支払いが命じられることがありますが、これは罰金であり、刑事事件の被害者ではなく国に支払われます。
訴訟はどこに起こす?
民事裁判は、
- 被害者の所在地
- 加害者の所在地
- 交通事故が発生したエリア
のうちどこかを管轄する裁判所で行います。
裁判所の種類は加害者に対する請求額によって異なり、
- 140万円未満:簡易裁判所
- 140万円以上:地方裁判所
となります。
裁判のために必要な資料は?
裁判の際に必要になる資料は、被害者の方がけがをされた事故なのか、亡くなられた事故なのかによって異なります。
傷害事故の場合 | ・交通事故証明書 ・事故発生状況報告書 ・診断書 ・後遺障害診書 ・診断報酬明細書 ・収入を証明するもの ・休損証明書 ・諸々領収書 |
---|---|
死亡事故の場合 | 上記に加えて ・死亡診断書 ・除籍謄本、戸籍謄本 |
これらの書類は、裁判の中での主張の正当性を裏付ける資料として重要です。
費用はどれくらいかかる?
裁判を起こすためには、郵便料と申立手数料が必要です。
- 郵便料:裁判所から事件当事者等に郵便物を送付するための郵便料
- 申立手数料:裁判所に訴えを起こすための手数料
郵便料は裁判所によって異なり、例えば東京地裁の場合は以下のようになります。
東京地裁の郵便料
- 原告被告1名ずつで各6000円。
- 1人増えるごとに2144円増額。
申立手数料は、訴額(加害者に対して請求する金額)に応じて、以下のように決まります。
訴額 | 手数料 |
---|---|
~100万円 | 1000円/10万 |
100万~500万 | 1000円/20万 |
500万~1000万 | 2000円/50万 |
1000万~10億 | 3000円/100万 |
10億~50億 | 1万/500万 |
50億~ | 1万/1000万 |
交通事故の民事裁判|流れとかかる期間は?
民事裁判の流れは?
民事裁判は、以下のような流れで進められます。
①訴状の提出
裁判所に訴えを起こすためにはまず、訴状を裁判所に提出します。
訴状には、原告・被告の氏名や住所、訴えの趣旨や訴えを起こすに至った理由を記載します。
②第一回口頭弁論期日の指定
訴訟が受理されると、1~2ヵ月以内に裁判所から第一回口頭弁論の期日を指定されます。
③口頭弁論
口頭弁論では、弁護士を含む当事者が法廷で主張・反論をしたり、証拠を提出したりして、論点が整理されます。
このやり取りは主に主張内容を記した書類・証拠となる書類の提出によって行われます。
口頭弁論は、お互いの主張が出尽くすまで月に1回程度のペースで複数回行われます。
④和解勧告
口頭弁論で出た主張や証拠資料を基に、裁判所が和解案を提示します。
そこで和解に至れば裁判は終了ですが、和解に至らなかった場合には、尋問へと続きます。
⑤尋問
裁判所から提示された和解案を原告や被告が受け入れなかった場合には、尋問へと続きます。
尋問では、被害者と加害者が相手方や裁判官からの質問に答えます。
⑥判決
尋問の後は、裁判所から判決を言い渡されます。
もしその判決に納得いかないということがあれば、2週間以内に控訴・上告をして再び争い、判決を受けます。
裁判はどれくらいの期間かかる?
裁判がどれくらいの期間で終わるのかは、口頭弁論を何回行うか、控訴・上告をするかなどによって変わりますので一概には言えません。
ただ、割合としては半年~1年で終わることが多いようです。
交通事故の民事裁判|注意点も要チェック!
民事裁判の注意点①出廷
上でもご説明した通り、口頭弁論では主に書類の提出が行われます。
そのため、弁護士を立てて訴訟を起こした場合には弁護士だけが出廷し、被害者ご自身は出廷しないということが多いです。
ただし尋問の日は、被害者ご自身が裁判官からの質問に答えることになるため、出廷する必要があります。
また、判決が出る日には被害者ご自身も弁護士も出廷しないことが多いです。
判決の言渡しでは判決だけが読まれ理由は読まれませんし、出廷してもその日のうちに判決書を受け取れるわけではないからです。
判決自体は判決言い渡しの後に裁判所に電話すれば教えてもらえます。
そして後日、弁護士が裁判所に判決謄本をとりに行くか、裁判所から送付されるかすることになります。
民事裁判の注意点②費用の負担
裁判にかかる費用は、まずは裁判を起こした側が負担し、その後敗訴した側が負担することになります。
勝訴すれば裁判費用は加害者側に負担してもらえますが、敗訴したときにはたとえ被害者であっても裁判費用を負担しなければならないということです。
民事裁判の注意点③弁護士の有無
民事裁判は、弁護士を立てなくても行うことができます。
しかし、
- 敗訴すれば裁判費用を負担することになる
- 民事裁判になった場合には加害者も弁護士を立てる可能性がある
ということから、弁護士を立てる方が良いかと思われます。
まとめ|交通事故の民事裁判
ここまで、交通事故の民事裁判についてご紹介してきました。
民事裁判を検討するうえで特に意識しておくべきことは、以下の通りです。
ポイント
- 民事裁判での主張は、主に書類を通して行う
- 交通事故の被害者であっても敗訴する可能性がある
- 敗訴した場合は、たとえ交通事故の被害者でも裁判費用を負担しなければならない
- 民事裁判を行う場合は、弁護士を立てておいた方が安心
示談交渉でも話がまとまらない、加害者側が示談に応じようとしないという場合には、民事裁判を検討するのも一つの手です。
とはいえ、民事裁判は普段の生活ではあまり関わることがないと思いますので、参考程度にでも一度弁護士に相談しておくと安心かと思います。
交通事故の民事裁判についてのQ&A
民事裁判とは?
民事裁判は、個人と個人の争いや、個人と法人の争い、法人と法人の争いといった、私人同士の争いを解決するためのものです。判決の内容は、賠償金や相続金の金額などです。訴えられた被告人が無罪か有罪か、有罪ならどんな刑罰を与えるかを決める刑事事件とはこの点で異なります。
民事裁判にかかる費用は?
民事裁判を起こすためには、郵便料と申立手数料が必要です。郵便料は裁判所によって異なり、申立手数料は訴額(加害者に対して請求する金額)によって異なります。
民事裁判の流れは?
民事裁判の流れは、① 訴状の提出、② 第一回口頭弁論期日の指定、③ 口頭弁論、④ 和解勧告、⑤ 尋問、⑥ 判決となっています。④ の和解勧告を受け入れた場合は、尋問や判決までは行われません。