慰謝料と生活保護|慰謝料獲得で生活保護を返還?返還免除の場合とは?
生活保護を受けている方が交通事故に遭い、慰謝料や賠償金を受け取ると、一定期間分の生活保護費を返還しなくてはなりません。
なぜ生活保護費を返還するの?
どれくらいの生活保護費を返還するの?
生活保護の返還が免除になることはあるの?
この記事では、こうした疑問にお答えしていきます。
慰謝料をもらったら生活保護は返還する?
生活保護を返還しなければならない場合とは?
まず前提となるお話として、どのような場合に生活保護費を返還しなければならないのか、ご説明します。
生活保護費を返還しなければならないのは、以下の場合です。
- ① 生活保護費を不正受給した場合(生活保護法第78条)
- ② 資力があるのに生活保護費を受給してしまった場合(生活保護法第63条)
生活保護を不正に受給した場合にはその分を返還しなければならない、ということはわかると思います。
もう一つの、資力があるのに生活保護費を受給した場合については、生活保護の目的を考えるとわかります。
生活保護の目的
生活に困窮している方に対して必要な保護を行うことで、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長すること。
つまり、健康で文化的な最低限度の生活ができる程度の資力がある場合は、生活保護の対象にはなりません。
そのため、資力があるにもかかわらず生活保護費を受け取ってしまった場合には、生活保護費を返還しなければならないのです。
なお、ここでいう資力とは収入の他、持ち家や貯金といった資産のことも指します。
持ち家などの資産を売り払っても生活に十分な資力がないという場合には、生活保護を受け取ることができます。
交通事故の慰謝料は収入と見なされる?
交通事故に遭うと、加害者側から賠償金や慰謝料を受け取ります。
実はこの慰謝料や賠償金は、生活保護の観点からは収入と見なされてしまいます。
そのため、生活保護費を受け取りながら交通事故の慰謝料や賠償金を受け取った場合、それは「資力があるのに生活保護を受け取ってしまった」ということになります。
つまり、生活保護費を返還しなければならないということです。
どの期間の生活保護を返還する?
交通事故の慰謝料や賠償金を受け取ったら、その後はずっと生活保護を受けられない、というわけではありません。
交通事故の慰謝料や賠償金を受け取った場合に返還しなければならないのは、「交通事故の慰謝料や賠償金が発生した期間」の生活保護費です。
交通事故の慰謝料や賠償金は、交通事故に遭ってから治療終了までの期間に対して支払われます。
そのため、その期間中に受け取った生活保護費は返還しなければならないのです。
また、
- 慰謝料や賠償金によって当面は生活保護は必要ないと判断された場合は支給が一時停止
- 半年以上生活保護が必要ないくらいの慰謝料や賠償金を得た場合は支給が停止
になります。
ただし、具体的な返還金額に関する規定は、生活保護費を支給している都道府県や市町村によって異なります。
そのため、生活保護費の返還が必要になった場合には、まずは担当のケースワーカーの方に相談することをお勧めします。
また、交通事故によるけがの治療のために病院に行くと、生活保護から医療補助が出ます。
この医療補助も、全額返還しなければなりません。
交通事故によるけがの治療費は、生活保護からの医療補助を受けなくても加害者側から支払ってもらえるからです。
生活保護の返還が免除される場合とは?
交通事故に遭って後遺症が残った場合、家に手すりを付けたり家の中を改造したりすることがあります。
その時にかかる費用も生活保護から出ますが、これについては返還の必要はありません。
これは、被害者の方がこれから生活していくために必要なものだからです。
また、受け取った慰謝料や賠償金が少額で、生活の困窮を改善できる程度でない場合には、返還が免除される可能性があります。
生活保護はどこに返還する?
生活保護費は、それを支給した都道府県または市町村に対して返還します。
このことは、生活保護法第63条に定められています。
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県または市町村に対して、すみやかにその受けた保護金品の相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない
出典:生活保護法第63条
具体的な返還方法としては、生活保護費を支給している機関への口座振り込みとなります。
まとめ|慰謝料と生活保護の返還
ここまで、交通事故の慰謝料・賠償金を受け取った場合の生活保護返還についてご紹介してきました。
要点をまとめると、以下のようになります。
ポイント
- 資力があるのに生活保護費を受け取った場合、その生活保護費は返還しなければならない
- 交通事故の慰謝料・賠償金は、生活保護の観点からは収入と見なされる
生活保護費の返還について、大まかなことはどこの都道府県や市町村でも同じです。
しかし、具体的な返還額などについては自治体ごとに異なりますので、まずは生活保護費を支給している自治体や、担当ケースワーカーの方に相談することをお勧めします。
慰謝料と生活保護についてのQ&A
慰謝料と生活保護、両方はもらえない?
受け取った慰謝料によって「健康で文化的な最低限度の生活」ができると判断された場合は、同時に生活保護をもらうことはできません。もし慰謝料を受け取りながら生活保護も受け取っていた場合は、生活保護を返還することになります。
慰謝料をもらったら生活保護は停止される?
「健康で文化的な最低限度の生活」が半年以上できる程度の慰謝料を受け取った場合には、生活保護の支給は停止されます。それより金額は少ないが、当面は生活していける程度の慰謝料であれば、生活保護の支給は一時停止となります。しかし具体的な規定は各都道府県・市町村によって異なります。
生活保護の返還が免除されることはある?
① 交通事故により必要になった家のリフォームのため、生活保護を受け取った場合、② 慰謝料が少額で生活の困窮は変わらない場合、には生活保護の返還や停止は免除されます。