計算機|高齢者(老人)の交通事故慰謝料|死亡慰謝料や逸失利益は?
交通事故に遭うと、加害者側に賠償請求を行います。
特に高齢者の方が被害に遭われた場合、
- 高齢者だからと慰謝料や賠償金を低くされるのではないか
- 高齢者でも逸失利益は請求できるのだろうか
という心配が多いようです。
また、交通事故で高齢のご家族を亡くされた方にとっては、
誰が交通事故の慰謝料や賠償金を相続するのか
ということも大切な問題です。
そうしたことを踏まえ、この記事は
- 慰謝料や賠償金の相場を簡単に確認できる計算機をご案内
- 高齢者(65歳以上)の交通事故慰謝料に関する疑問にお答え
という内容になっています。ぜひご確認ください。
計算機|高齢者の交通事故慰謝料の相場額は?
交通事故慰謝料の内訳は?
交通事故の慰謝料の内訳は、上の図のようになります。
被害者が高齢者の場合、条件が合えばどの項目も請求することができます。また、死亡事故の場合には死亡慰謝料、死亡逸失利益を請求することになります。
それぞれの項目の詳細は、次のようになります。
交通事故の賠償金
入通院慰謝料 | 交通事故でけがをしたことで痛みや苦しみを感じたり、入通院によって時間や自由が奪われて不自由さを感じたり不利益をこうむったりしたことに対する補償。 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 後遺症が残ったことで今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償 |
死亡慰謝料 | 交通事故で死亡した被害者やその家族の精神的苦痛に対する補償 |
治療関係費 | 治療費、入院費、看護費など |
逸失利益 | 後遺障害が残らなければ得られるはずだった将来の収入に対する補償(後遺障害逸失利益)。もしくは交通事故によって死亡しなければ得られるはずだった将来の収入に対する補償(死亡逸失利益)。 |
休業損害 | 交通事故による入通院で休業した間の収入に対する補償 |
高齢者の交通事故慰謝料・賠償金についての疑問には、次の章でお答えしています。気になる点がある方は、確認してみてください。
簡単!慰謝料計算機はこちら
高齢者の方の交通事故慰謝料の相場金額は、こちらの計算機からご確認ください。
入力していただく項目は、入院期間や事故時の年齢など簡単なものばかりですが、いくつか分かりにくい点についてご説明しておきます。
入力項目のご説明
休業日数
働いていない場合には、0日で構いません。働いておられる場合は実際の休業日数を、主婦の場合は主婦業ができなかった日数を入力してください。
後遺障害等級
後遺症が残らなかった場合は、「無等級」のままで構いません。
事故前の年収
働かれている方は実際の年収を、主婦の方は女性の全年齢平均(382万円)を入力してください。年金の金額は、ここには入力しないでください。
後遺障害等級については、等級を認定してもらうための手続きが必要です。
まだ手続きをしていない、手続きをして認定の結果待ちという場合でも、後遺症からある程度等級を予想することはできます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
実際の計算方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【要チェック】慰謝料請求時のポイント
この計算機で算出できるのは、示談交渉の時に被害者側の弁護士が提示する金額です。これは過去の判例に基づいて定められた金額基準なので、妥当性が高いということができます。
これに対し、示談交渉の時に加害者側が提示してくるのは、もっと低い金額です。
加害者側から提示された金額が妥当なのかを考えるときは、この計算機の結果と比較してみてください。
高齢者(老人)の交通事故慰謝料の疑問
高齢者でも逸失利益や休業損害は請求できる?
逸失利益や休業損害は、
- 働いて収入を得ている場合
- 家族の中で主婦業を担っている場合
に請求することができます。
これらは、「交通事故が収入に影響を及ぼした場合」に請求できるものだからです。(交通事故では、主婦業も賃金労働と同じように考えます。)
高齢で、すでに退職されている方は、請求することができません。また、年金を受給している場合も、休業損害や逸失利益は請求できません。年金は、交通事故に遭っても減額されるものではないからです。
死亡した場合の相続人は?
交通事故で被害者の方がけがをされた場合、賠償請求も賠償金の受け取りも被害者ご本人が行います。
しかし死亡事故の場合は、遺族の中から相続人を選び、その人が賠償請求と賠償金の受け取りを行います。
この「相続人」は誰でもいいというわけではなく、どのように選ぶかが決まっています。
相続人の決め方と慰謝料の分配
配偶者がいる場合、配偶者は以下の人とともに必ず相続人となる。
① 被害者の子(いなければ孫)
慰謝料の分配=配偶者1:子1
② ① がいなければ被害者の親
慰謝料の分配=配偶者2:親1
③ ② がいなければ被害者の兄弟姉妹(いなければその子)
慰謝料の分配=配偶者3:兄弟姉妹1
死亡慰謝料の相場は?
死亡事故の場合には、死亡慰謝料を加害者側に請求します。
死亡慰謝料は、被害者の方が生前、家族内でどのような立場にあったかを基準に金額が定められています。
高齢者の場合は、
・被害者側弁護士が提示する金額:2000万~2500万円
・加害者側保険会社が提示する金額:1100万~1400万円程度
となっています。
ただし、高齢者であっても家庭内で大黒柱や主婦としての役割を担っていた場合には、それが増額事由として扱われることもあります。
実際の事例を見てみましょう。
▼一家の大黒柱であった場合
無報酬の取締役(男・66歳、年金・配当収入あり)につき、本人分2500万円、妻300万円、子2人各100万円、合計3000万円を認めた(事故日平22.7.3 神戸地判平25.3.11 自保ジ1903・138)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
▼主婦であった場合
主婦(70歳)につき、本人分2400万円、夫200万円、子2人各100万円、合計2800万円を認めた(事故日平25.1.21 名古屋地判平26.10.31 交民47・5・1368)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
高齢者の交通事故慰謝料は低額?
高齢者の方が交通事故に遭われた場合、「高齢者だからと慰謝料や賠償金を低く見積もられるのでは?」と不安に感じる方が多いようです。
結論から申し上げますと、死亡慰謝料については、一家の大黒柱に比べると相場金額は低くなります。
また、年収を用いて計算する休業損害や逸失利益も、現役世代に比べると低くなる傾向にあります。高齢者の方は、働いていても再雇用などで現役世代に比べて収入が低いことが多いからです。
しかし、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料については高齢者の場合もそうでない場合も同じように金額を算出しますし、治療関係費は実費を請求しますので、高齢者だからという理由で低くなることはありません。
死亡慰謝料 | 一家の大黒柱、現役世代よりも低くなる傾向 |
---|---|
逸失利益 | |
休業損害 | |
入通院慰謝料 | 高齢者以外の場合と同じ基準で金額が決まる |
後遺障害慰謝料 | |
治療関係費 |
このように、交通事故の慰謝料・賠償金の中には、高齢者ということで金額が低めになるものもあれば、変わらないものもあります。
また、「高齢者である」ということに関係なく、加害者側の保険会社から提示される金額は低めであるということにもご注意ください。
高齢者(老人)の交通事故慰謝料まとめ
ここまで、高齢者の交通事故慰謝料について
- 計算機のご案内
- 逸失利益や相続人などに関する疑問へのお答え
をしてきました。
高齢者の交通事故慰謝料に関する疑問や不安は解消されたでしょうか。
交通事故の慰謝料やその仕組みは、多くの方にとってなじみがなく、分かりにくいものです。
また、様々な事情を考慮して柔軟に増額されたり減額されたりするものですので、計算機のような機械的な計算ではカバーしきれない部分もあります。
今は無料で相談ができる法律事務所も多いので、「こういう場合は増額されるだろうか?」「こういう理由で減額すると言われたけれどそれは妥当なのだろうか」など分からないことがあれば問い合わせてみることも良いかと思います。
高齢者の交通事故慰謝料についてのQ&A
高齢者でも休業損害や逸失利益は出る?
高齢者の場合は、① 働いて収入を得ている場合、② 家族の中で主婦業を担っている場合には、休業損害や逸失利益を請求することができます。すでに退職されている方は、年金による収入があったとしても休業損害・逸失利益を請求することはできません。
死亡した場合慰謝料は誰が受け取る?
交通事故で高齢者の方が死亡した場合、その慰謝料や賠償金は、相続人が受け取ることになります。相続人は誰でもいいというわけではなく、配偶者は必ず相続人になるとして、もう一人は子、子がいなければ孫、孫もいなければ親、というように、決め方が決まっています。また、配偶者ともう一人の相続人の相続の割合も決められています。
高齢者が被害者だと慰謝料は低い?
慰謝料や賠償金の計算方法の関係から、死亡慰謝料や休業損害、逸失利益は高齢者であることが理由で低くなる傾向にあります。しかし、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、治療関係費は、高齢者でも高齢者でなくても同じように計算されるため、高齢者であるという理由で低額になることはありません。