交通事故慰謝料の計算|後遺障害7級で「1,000万円」はホント?
後遺障害7級の慰謝料の仕組み、もらえるお金の目安を知っておくと、相手方とのやり取りに役立ちますよ。
「後遺障害7級の慰謝料を計算したい人」
「後遺障害7級の認定を目指す人」
こういった方にはぜひ読んでほしい記事です。
まず「慰謝料」という言葉について整理しましょう。
交通事故の損害賠償で使う「慰謝料」ですが、後遺障害7級の「慰謝料」は2つあります。
慰謝料ってどんなお金?
- ① 入通院慰謝料:入院や通院治療を受けたという「精神的苦痛」への金銭的補償
- ② 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったという「精神的苦痛」への金銭的補償
<例>
交通事故の被害者全員に後遺障害が残るとは限りません。
治療を続けた結果、完治となることもあるでしょう。
完治となった場合は「治療期間」への精神的苦痛に対しては「入通院慰謝料」が該当します。
しかし、後遺障害は残らなかったので「後遺障害慰謝料」は請求できません。
何に対する慰謝料なのかが違うということを知っておきましょう!
この記事は、「後遺障害慰謝料」がメインテーマになっています。
「入通院慰謝料」については、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」でくわしく解説していますので、そちらをお役立てください。
後遺障害7級|後遺障害慰謝料ってどう決まる?計算式がある?
後遺障害慰謝料は〇〇でほぼ決まる
後遺障害慰謝料は後遺障害等級でほぼ決まります。
計算式などで算出できるものではありません。
後遺障害等級は1級から14級まで分かれており、1級が最も障害の程度が重い等級となります。
それぞれの後遺障害等級ごとに「どれだけ労働能力を失ったか」を示す「労働能力喪失率」の目安も設けられています。
「7級」ときくと「1~14級の中ではちょうど真ん中あたりだからそこまで重症ではないのかな?」と感じる人もいるようですが、それは違います。
労働能力喪失率は56%と半分以上にのぼる、日常生活にも大きな影響を与える後遺障害です。
後ほど一覧表で掲載しますが、後遺障害7級は
- 1眼が失明、もう片方も矯正視力が0.6以下
- 神経系統の機能や精神的な障害により軽易な労務しかできない
のように重い障害が該当しうるものです。
慰謝料「1,000万円」もらえる人はどんな人?
後遺障害慰謝料の金額をほぼ決める「後遺障害等級」。
後遺障害7級については以下のように金額の目安が決まっています。
自賠責基準 | 任意保険の基準* | 弁護士基準 |
---|---|---|
409万円 | 500万円 | 1,000万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
金額は一つではなく、基準ごとに3つあることが分かりました。
「基準」というのは、
- ① 自賠責保険の基準
- ② 任意保険の基準
- ③ 弁護士基準
この3つになります。
3つの基準はどれも「後遺障害7級」の後遺障害慰謝料です。
「誰が」計算するかで変わってきます。
自賠責保険の基準 | |
---|---|
誰が使う? | 加害者側の自賠責保険会社 |
どんな基準? | 自動車の運転者は義務加入。交通事故の相手が自動車であれば、被害者は必ず保険金対象となる。 |
任意保険の基準 | |
誰が使う? | 加害者側の任意保険会社 |
どんな基準? | いわゆる「保険会社の自社基準」。 加入は任意なので、加害者の加入有無によって保険金を受け取れるかが変わる。 |
弁護士基準 | |
誰が使う? | 弁護士・裁判所(裁判官) |
どんな基準? | 被害者からの依頼を受けた弁護士が交渉する時に用いる基準。 3つの基準の中で最も慰謝料の相場が高くなる。 |
同じ後遺障害等級でも、算定する人によって差が出ています。
相手方の保険会社が提示する金額は、自賠責保険の基準か任意保険会社の基準に基づいているので、1,000万円の提案を受けることはほぼないでしょう。
1,000万円をもらえる可能性のある人は、弁護士に依頼をして交渉した人ということになります。
自賠責保険の基準で1,051万円もらえるって聞いた!
1,051万円は「後遺障害慰謝料」+「逸失利益」の合計金額です。
あとから解説しますが、後遺障害7級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の2つから成り立ちます。自賠責保険の基準で後遺障害7級の場合、基準額は1,051万円ですが、それは逸失利益も含まれた金額です。
先ほどとりあげた後遺障害慰謝料:409万円が、自賠責保険の基準による「後遺障害慰謝料」に間違いありません。
逸失利益というのは、後遺障害が残ったことで失われてしまった「本来得られるはずの収入」をいいます。
たとえば、
- 昇進が難しくなり昇給が見込めなくなった(→後遺障害がなければ受けとれていたはずなのに)
- 仕事を転職しなくてはならず給与が下がった(→後遺障害がなければ続けていたのに)
個人によって背景は違いますが、こういったお金も受けとることができます。
自賠責保険の基準で「1,051万円」と数字を見ると弁護士基準の1,000万円より一見高いですが、弁護士基準は1,000万円+逸失利益なので、最終的に受けとる総額は弁護士基準が高くなります。
後遺障害7級|逸失利益とは?いくらもらえる?
交通事故の逸失利益とは
後遺障害が残ったことで失われてしまった「本来得られるはずの収入」
逸失利益には計算式があります。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
被害者が18歳未満の未就労者の場合は下式を使います↓
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
聞きなれない言葉をチェックしておきましょう。
基礎収入
基礎収入は交通事故にあう前に被害者が得ていた収入です。
労働能力喪失率
労働能力喪失率は後遺障害によりどれくらい労働能力が失われたかの割合です。
後遺障害等級ごとに目安が設けられています。
後遺障害7級なら56%と、半分以上の労働能力が失われたと考えるのが基本です。
就労可能年数
前提として、18歳から67歳までが就労可能年齢にあたります。
症状固定時に40歳であれば「あと27年働けたはず」と考え、27年分の「本来得られる利益が失われた」と考えます。
ライプニッツ係数
中間利息控除ともいわれます。
たとえば1,000万円の逸失利益を受け取り、金融機関に預けると、時間の経過と共に利息が発生します。
すると損害賠償金よりも多くのお金が、結果として被害者に入ります。
損害以上のお金を被害者が受けとることも認められませんので、あらかじめ「増えるであろうお金」が控除されます。
症状固定時に40歳であれば27年間かけて1,000万円から増額分が発生する可能性があります。
ですから、27年にあたるライプニッツ係数を掛け算して控除します。
ライプニッツ係数は症状固定時の年齢が若ければ若いほど、67歳までの年数が長くなるので、控除される割合も高くなる傾向があります。
詳しくは年齢別のライプニッツ係数をチェックしておいてください。
POINT
逸失利益は個人の収入や年齢などで金額が変わりますので「相場」は一概には言えません。
後遺障害7級|当てはまる症状をすべて公開
後遺障害7級がまるわかり!一覧表あり
内容 | |
---|---|
1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
2号 | 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
3号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
6号 | 1手のおや指を福井3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの |
7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
8号 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい障害を残すもの |
11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
13号 | 両側の睾丸を失ったもの |
後遺障害7級認定のポイント~外貌醜状~
後遺障害7級には目から足の先まで全身の症状が該当する可能性があります。
ここでは「7級12号」の外貌に著しい醜状を残すものについて考えてみたいと思います。
外貌醜状で認定される可能性がある後遺障害等級のなかで、7級12号は最も重い等級です。
外貌醜状の定義
「外貌」とは、頭部・顔面・頸部(首)のように、上肢や下肢以外で日常的に露出している部分をいいます。
「著しい醜状」は次のようなものが当てはまります。
頭部 | てのひら大以上の傷あと てのひら大以上の欠損 |
---|---|
顔 | 鶏卵大面以上の傷あと 10円玉以上の組織陥没 |
首 | てのひら大以上の傷あと |
「著しい」というのは具体的には傷あとなどの大きさを指しています。
なお、後遺障害の補償対象は人目につく程度以上のものとされていますので、眉毛や頭の髪の毛で隠れるところは補償の対象とはなりません。これは7級に限らず、他の等級(9級16号・12級14号)にも当てはまることです。
また、外貌醜状は「後遺障害等級の認定」においても他の障害にはない特徴があります。それは、後遺障害等級の認定において面談を行う可能性がある点です。
外貌醜状以外の場合、「後遺障害診断書」などを提出して認定を待つことになります。
そういった「等級認定の違い」も覚えておくと、いきなり面談を打診されても安心ですね。
逸失利益が認められにくい!?
労働能力率について、加害者側が認めないことも多いのです。
たとえば顔に傷が残っても、労働能力自体は失われないだろうと主張をされるようです。
たしかに、腕が動かしにくくなったり、身体に麻痺が残ってしまうと、労働能力が失われたというのも納得されやすいのです。
しかし、被害者の個別の事情をきちんと主張することで労働能力喪失率が適正に認められ、その結果として逸失利益の金額も適正化されるでしょう。
労働能力率が争点となった判例より、認められた経緯を探りました。
- 職種(容貌が収入に影響:ホステスなどの接客業)
- 外向性、社交性の低下(顔の傷により内向的になり、間接的に労働能力が低下)
被害者自身の困りごとを丁寧に主張していくことが重要と言えるでしょう。
【交通事故の慰謝料計算】自動計算機におまかせ!
最終的に受けとる後遺障害7級の補償は、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」です。
後遺障害慰謝料だけでなく、計算が複雑な逸失利益や入通院慰謝料など「他の損害賠償」の目安も知っておきたいところです。
そこでオススメなのが「慰謝料計算機」です。
※治療や手術費用、入院雑費や通院交通費は別
慰謝料計算機の結果は「弁護士基準」となっています。
保険会社による提案額は、本当に「適正」なのでしょうか?
もし今、示談内容の提案を受けている方なら、その金額と比べてみましょう。
まとめ
後遺障害7級の後遺障害慰謝料・逸失利益、そして外貌醜状について深く解説しました。
この記事で分かったことをまとめると
- 「後遺障害慰謝料」は等級ごとに一定の「基準」が決まっている慰謝料
- 後遺障害7級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」に分けられる
- 後遺障害7級の慰謝料は弁護士基準で1,000万円、自賠責保険の基準では409万円となり2倍以上の違いが出る
後遺障害等級認定において重要なことは、被害者自身の身体にある不自由・不利益を、客観的に主張することです。
検査結果や医師の見解など、できるだけ第3者から見ても分かる資料を用意し、認定を目指しましょう。
そして、既に後遺障害認定を受けた方は、相手方と意見が食い違う可能性も考慮しておきましょう。どのように主張すれば相手にも理解され認めてもらえるのかが重要です。
後遺障害7級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害7級の慰謝料相場は?
後遺障害慰謝料の金額は、算定する基準によって違います。自賠責保険の基準:409万円/任意保険の基準:500万円(旧統一基準)/弁護士基準:1000万円です。任意保険基準の金額は、以前公開されていた「旧基準」です。今では任意保険会社ごとに決められており、詳細は非公開となっています。
後遺障害7級の逸失利益の計算方法は?
基本の計算式は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。被害者が18歳未満・未就労の場合は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数>と計算式が違うので注意しましょう。後遺障害7級の場合、労働能力喪失率は56%が目安です。
後遺障害7級ってどんな等級?
7級は1号~13号まであります。片目の失明(他目も視力低下)/聴力低下/神経系統の機能や精神の障害で軽易な労務以外につけない状態/胸腹部臓器の障害で軽易な労務以外につけない状態/複数の指の用を廃したもの/1足をリスフラン関節以上で失った状態/1上肢または1下肢の偽関節で著しい運動障害がある状態/両足の全ての指の用を廃したもの/外貌に著しい醜状を残す状態/両側の睾丸を失ったもの、が該当します。
7級12号の外貌醜状とはどういうもの?
外貌醜状に関する後遺障害で最も重い等級が<後遺障害7級12号:外貌に著しい醜状を残すもの>です。「外貌」とは、頭部・顔面・頸部(首)のように、上肢や下肢以外で日常的に露出している部分をいいます。たとえば、顔面の著しい醜状とは<鶏卵大面以上の傷あと/10円玉以上の組織陥没>が該当します。傷あとなどの大きさが等級認定の決め手です。
慰謝料計算が難しくてわからないときは?
計算に必要な情報を入力するだけで慰謝料を算定してくれる「慰謝料計算機」がおすすめです。後遺障害慰謝料の他にも、入通院慰謝料や休業損害、後遺障害逸失利益までチェックできます。相手方の保険会社から示談内容を提案された時、その金額が妥当なのかを確認するツールとしても使えます。