交通事故慰謝料の計算|後遺障害11級の相場と「あなたの慰謝料」
「交通事故の慰謝料がいくらになるのか計算したい…」
この記事では後遺障害11級の慰謝料について徹底解説!
実際の判例も紹介しているので、実際どれくらいの慰謝料が認められているのかが分かります。
後遺障害11級の慰謝料について知識が深まることで、慰謝料の提案を受けた時にも判断がしやすくなりますよ。記事の最後にはあなたの慰謝料がわかる「慰謝料計算機」も設置。ぜひ使ってみてください!
後遺障害11級の慰謝料について調べた結果、どうしても先にお伝えしたいことがあります。それは受けとれる慰謝料は2つあったという事実です!
慰謝料とは
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
- 後遺障害慰謝料
ざっくりわけると
- 入通院慰謝料:交通事故による怪我、通院・入院をした精神的な苦痛に対する慰謝料
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことの精神的な苦痛に対する慰謝料
と区別されているようです!
交通事故で怪我をした被害者全員(原則)が受けとれるのが入通院慰謝料、後遺障害があると認定された被害者のみが受けとれるのが後遺障害慰謝料とするとイメージがしやすいですね。
入院や通院に関する「入通院慰謝料」は、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」でくわしく取り上げています。
この記事は、後遺障害11級の後遺障害慰謝料がメインテーマです。
慰謝料の相場・算定の仕組み・後遺障害認定のポイントなど、後遺障害に関するあらゆる疑問をまとめました。
後遺障害11級|後遺障害慰謝料の計算方法は?相場は?
慰謝料は135万円?331万円?420万円?
慰謝料の金額を調査してみると、色んな数字が出てきました。
これはなぜなのかをまとめた表が次の通りです。
自賠責基準 | 任意保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
135万円 | 150万円 | 420万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
慰謝料には3つの基準があり、その基準によって同じ後遺障害11級でも差が出ているようです。
3基準の違いは「誰が用いる基準なのか」にありました!
自賠責基準 | 任意保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
相手方の保険会社 | 弁護士や裁判所 |
自賠責保険の基準や任意保険の基準は、相手方の保険会社が慰謝料算定に使う基準です。
一方、弁護士基準とは弁護士が交渉する時に使ったり、裁判で用いられたりする基準だそうです。金額を見ると、弁護士基準が圧倒的に高額ですね。
相場は?
先ほどの3基準が相場ということになるようです。
- ① 自賠責保険の基準:135万円
- ② 任意保険の基準:150万円
- ③ 弁護士基準:420万円
あくまで基準なので、個別の事情による増減はあり得ます。
増額が認められた事例から「3つの増額ポイント」を探ってみました。
(1)加害者による飲酒や速度超過など事故様態が悪質
(2)交通事故が起こった時に加害者がその場から逃げている
(3)加害者が合理的ではない説明を繰り返している
基準額を原則としつつも、一つひとつの交通事故に合わせて慰謝料は算定されています。
【検証】自賠責保険の慰謝料は331万円ってホント?
「後遺障害11級の慰謝料は、自賠責保険の基準で331万円と聞いたことがある。」
このような情報もあったので、徹底検証してみました!
調べてみると、「331万円=後遺障害11級の慰謝料」とは言えないようです。
「331万円」は自賠責保険の基準での「後遺障害11級に対する全補償」を指すもの
つまり、先ほど表に記載したとおり後遺障害慰謝料自体は135万円で正しいのです。
331万円の内訳に135万円が含まれているのが真実です!
では残りのお金は?それは「逸失利益」という金銭的補償です。
慰謝料以外に受けとれるお金があるのです。
後遺障害慰謝料以外のお金「逸失利益」
- 後遺障害が残らなければ仕事を辞めなくて済んだのに…。
- 後遺障害が残らなければ昇進して収入は増えていたはずなのに…。
- 後遺障害が残らなければこういう進路に進んで就職していたはずなのに…。
逸失利益は、後遺障害を負うことで失われてしまった「本来得られるはずの利益」です。
逸失利益を出す計算式を紹介します。被害者の年齢(就労の有無)によって計算式は2パターンあります!
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
被害者が18歳未満の未就労者であれば、式が以下のように変わります。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
「基礎収入」「労働能力喪失率」「就労可能年数」とはどんなものでしょうか。
基礎収入 | 交通事故にあう前の被害者の収入 |
---|---|
労働能力喪失率* | 20% |
就労可能年数 | 67ー(症状固定時の年齢) ※18歳から67歳までを就労可能な年齢と考える |
*後遺障害等級ごとに異なる、11級の場合は20%
就労可能年数とは?
逸失利益というのは「将来働いて得られるはずが後遺障害により失ってしまった利益」のことです。
逸失利益を考える時には、18歳から67歳までを「働ける年齢(労働で収入を得られる年齢)」とみなしています。
だから、症状固定時から67歳(労働できる上限の年齢)まで、何年分の収入が失われたかを考える必要があるのです。
ライプニッツ係数とは?
計算式にあるライプニッツ係数は、「中間利息控除」ともいわれています。
例えば、「逸失利益」として受けとったお金を金融機関に預けると「利息」がつき、時間が経つにつれて金額は増えていきます。すると、結果的には本来の損害賠償金よりも多いお金を被害者が受けとっている…このように考えられているそうです。そこで、「増加分」をあらかじめ引いておく、その割合をいいます。
67歳までの期間が長い方が「増加分」も多いと考えられるので、控除される割合は高くなります。ですから、ライプニッツ係数(控除される割合)も、年齢(67歳まであと何年あるか)で変わってきます。
年齢 | 就労可能年数 | ライプニッツ係数 |
---|---|---|
25 | 47 | 17.423 |
45 | 37 | 13.163 |
55 | 27 | 9.899 |
詳細な年齢別のライプニッツ係数の一覧であなたのライプニッツ係数もチェックできますよ。
後遺障害11級|どんな症状?
後遺障害11級とは
後遺障害11級にはどんな症状が該当するかをまとめてみました。
内容 | |
---|---|
1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
4号 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
6号 | 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
7号 | 脊柱に変形を残すもの |
8号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの |
9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
症状は全身にわたっています。
特に「脊柱」に関する後遺障害は12~14級ではなかったものです。
【超重要】後遺障害11級認定のコツ
後遺障害11級の認定を受けるために大事なことは、11級に相当する「症状」と自分の身体に残る「後遺障害」が同じであると客観的に主張し、認めてもらうことです。
等級認定は原則「書面」で行われますので、書面で明らかにしなくてはいけません。
たとえば、11級8号をみてみましょう。
11級8号:1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
失う、と聞くとどんな状態をイメージしますか?
実は次のように「失う」状態にも定義があります。
「指を失う」の意味は1つじゃない!?
失う:欠損障害
手指を失うことは「手指の欠損障害」にあたります。
- ① 手指の中手骨又は基節骨で切断したもの
- ② 近位指節間関節(おや指は指節間関節)において基節骨と中節骨とを離断したもの
このように2つあります。
- 「切断」は物理的に切り離されていること
- 「離断」は骨に傷はないが関節が外れてしまっていること
つまり後遺障害11級8号は、片方の手の「ひとさし指」か「なか指」か「くすり指」が
- 第2関節かそれより指の根元に近い部分で切断したもの
- 第2関節で関節が外れてしまったもの
と読み替えることができます!
専門用語や医学用語が多くてよくわからない…となってしまいそうですが、後遺障害11級の定義に自分の症状が当てはまることを明確に記載しましょう。11級認定を目指しているのに11級に当てはまる要件を知らない…これでは、想定している等級認定は受けられません。
検査結果を提示する
検査結果を示すことも重要です。
例えば、11級5号・11級6号の聴力障害について考えてみましょう!
聴力障害は
- ① 純音聴力レベル
- ② 明瞭度
を検査して、障害の程度をみていきます。
① 純音聴力レベル
「オージオメーター」という機器を用いた検査。
検査の感覚を7日程度あけて、3回実施します。
2回目と3回目の平均値で後遺障害等級を決めます。
▶結果のみかた
デシベル(dB)の数値が大きさと聞こえにくさが比例します。
② 明瞭度
「スピーチオージオメーター」を用いて検査。
検査結果が適正であると判断できれば1回で検査は終わります。
▶結果のみかた
ヘルツごとに明瞭度が決まっているのでその最高値を採用します。
11級5号・11級6号の内容には、具体的なdBやヘルツは書かれていませんでした。
ですが実際の等級認定ではこういった「検査結果の数値」がある程度決まっているようです。
「聴力」は被害者本人にしか体感できない感覚です。だからこそ、誰もが分かる検査結果は重要といえます!
いくらもらったの?11級慰謝料の判例を徹底調査!
ここからは「結局いくらもらえるの?」という疑問にお答えします!
後遺障害11級でもらえる「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の実際の判例を徹底調査してみました。
実際にもらえる損害賠償金は、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の他にももちろんあります。
それ以外のお金は、休業損害だったり、治療費だったりと、より個々に変動する部分です。
ですから、これからあげる3つの事例についても参考程度に読んでみてくださいね。
判例①後遺障害11級7号:脊柱変形
認定等級 | 後遺障害11級7号 |
---|---|
被害者の年齢 | 45歳 |
後遺障害慰謝料 | 420万円 |
逸失利益 | 2,369万3,400円 |
この他にも、傷害慰謝料80万円、弁護士費用224万円などが認められました。
2,456万725円が最終的な損害賠償金となりました。
逸失利益は次のような計算式となっています。
900万円(基礎収入) ✖ 0.2(労働能力喪失率) ✖ 13.163(22年間のライプニッツ係数)
11級7号の脊柱変形は、労働能力を喪失したのかが争点になりやすい後遺障害だそうです。
この判例では就労上の支障が認められたケースと言えます。
ちなみに、900万円という収入が「役員報酬」に当たるのではないかという相手方の主張に対しては、被害者の会社の業務状況をきちんと示し、被害者自身による労務提供が会社の基盤となっていたことを主張。そのため900万円が収入として認められているようです!
計算式からも分かるように、基礎収入は逸失利益の金額を左右する項目。だからこそ相手方とも揉めがちです。
判例②後遺障害11級6号:1耳の聴力障害
認定等級 | 後遺障害11級7号 |
---|---|
被害者の年齢 | 28歳 |
後遺障害慰謝料 | 420万円 |
逸失利益 | 1,005万8,551円 |
この他にも、傷害慰謝料76万2,750円、弁護士費用100万円などが認められました。被害者側の過失割合が1割あると認定されました。
最終的な損害賠償金は1,325万146円でした。
逸失利益は次のような計算式となっています。
295万5,442円(基礎収入) ✖ 0.2(労働能力喪失率) ✖ 17.170(39年間のライプニッツ係数)
この事例では、実際には減収は生じていませんでした。
しかし、交通事故後に勤務地の変更がおこなわれており、将来の昇任などでの不利益は否定できないとされました。就労・日常生活での支障がないとはいえないとし、逸失利益が算定されたのです。
労働能力喪失率を認めてもらうには、交通事故の後遺障害によってどんな不利益を被ったかを丁寧に主張することがポイントと言えそうですね。
判例③後遺障害11級7号:脊柱変形
認定等級 | 後遺障害11級7号 |
---|---|
被害者の年齢 | 52歳 |
後遺障害慰謝料 | 400万円 |
逸失利益 | 2,065万6,340円 |
この他にも、治療費289万5,651円、休業損害849万2,666円などが認められました。被害者の5%の過失割合となり、3,521万4,809円が損害賠償金となっています。
被害者の職業は医師であり、事故前に力を発揮してきた専門分野において後遺障害による不利益が起こっています。被害者本人の努力によって減収はないものの、将来的な不利益は否定できないと判断されました。労働能力喪失率は9%と11級の基準よりも低く認められましたが、医師という職業柄「75歳」まで働けるとして23年間の労働能力喪失期間が認定されました。
逸失利益の計算は次の通りです。
1,701万5,472円(基礎収入) ✖ 0.09(労働能力喪失率) ✖ 13.4886(23年間のライプニッツ係数)
この事例では被害者の職業が医師であることから、基礎収入が比較的高額であり、通常は67歳までの就労可能年齢が75歳まで認められたことが特徴と言えそうです。労働能力喪失率は、11級であれば20%なのですが認定されたのは9%にとどまりました。
減収こそ生じていなくても、それが本人の努力によるものと主張することが大切です。また、この事例以外でも医師・開業医や税理士などの就労可能年齢は67歳よりも長く認定される傾向があるそうです。
「慰謝料計算機」で「あなたの慰謝料」を確かめよう!
「慰謝料計算機」慰謝料計算の便利ツール
「後遺障害慰謝料」は後遺障害等級ごとにおおよそ決まること、逸失利益も受けとれる可能性が高いことをみてきました。ここで「慰謝料計算機」という便利なツールを紹介します。「慰謝料計算機」は、情報を入力するだけで簡単にあなたの後遺障害慰謝料、あなたの逸失利益などの目安が分かります!
一度計算してみませんか?
計算結果は「弁護士基準」に基づいた結果になっています。
相手方の保険会社からの提案金額と違いがあるなら、「慰謝料を算定している基準」が違う可能性がありますね。
まとめ
後遺障害11級の「後遺障害慰謝料」については次のようなことが分かりました。
- 後遺障害慰謝料は「計算式」で出すのではなく、等級ごとに既に基準額がある
- 後遺障害11級への補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の2つがある
- 11級7号の脊柱変形など「労働能力が失われているか」が争点になる後遺障害は、具体的に困っていること・不利益をきちんと説明していく必要がある
後遺障害11級は腰椎圧迫骨折による脊柱変形や、眼の機能・運動・欠損障害、手や足の指や臓器に関するものまで幅広く該当します。後遺障害慰謝料を適正に受けとるためには、まず「適正な後遺障害等級」で認定を受けることが重要でしょう。ひとつ等級が変わるだけで後遺障害慰謝料はぐんと金額が変わります!
後遺障害11級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害11級の慰謝料相場は?
慰謝料には3つの基準があり、基準によって同じ後遺障害11級でも金額は違います。自賠責保険の基準:135万円/任意保険の基準:150万円(旧統一基準)/弁護士基準:420万円です。任意保険の旧統一基準とは、以前適用されていたものです。各保険会社によって異なり、詳細は非公開とされているため、参考程度の金額です。
後遺障害11級の逸失利益の計算方法は?
逸失利益は、後遺障害により、本来は働いて得られるはずが失ってしまった将来の利益のことです。計算式は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。被害者が18歳未満・未就労の場合は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数>の式になります。後遺障害11級の場合、労働能力喪失率は20%が目安です。
後遺障害11級ってどんな等級?
11級は1号~10号まであります。両眼の著しい調節機能・運動機能障害/両まぶたの著しい運動障害/1眼のまぶたに著しい欠損/10歯以上への歯科補てつ/聴力低下/脊柱の変形/手指を失ったもの/1足の足指の用を廃したもの/胸腹部の機能に障害を残し労務遂行に相当程度の支障が出るもの 、が該当します。詳しい定義は下記で確認してください。
後遺障害11級認定のポイントは?
検査結果を示すことは重要です。たとえば、聴力障害については① 純音聴力レベル② 明瞭度の2点を検査して、障害の程度をはかります。後遺障害認定を申請する時には、「検査結果の数値」で聴力低下を証明しましょう。
相手方に提案された慰謝料が適正かはどう見分ける?
慰謝料計算機を使ってみましょう。慰謝料には、自賠責保険の基準・任意保険の基準・弁護士基準と3つの算定基準があります。弁護士基準は最も相場が高くなる計算基準で、慰謝料計算機も弁護士基準にもとづいて算定しています。慰謝料計算機の結果と異なる場合は、相手方からは自賠責保険の基準や任意保険の基準で算定した結果で提案されている可能性があります。