【自営業】交通事故の死亡慰謝料|家族内の立場で相場が異なる?
自営業(個人事業主)を営むご家族が交通事故で死亡された場合、ご遺族の方は死亡慰謝料などさまざまな損害項目を合計した賠償金を事故の相手方に請求することができます。
死亡したご本人の精神的苦痛に対して慰謝料が発生する?
死亡慰謝料は算定基準によって金額が変わる?
遺族の誰が死亡慰謝料を相続する?
本記事では、「死亡慰謝料」にしぼって解説していきます。
自営業が交通事故で死亡。慰謝料は?
死亡慰謝料とは?個人事業主本人分と遺族分
死亡慰謝料とは?
交通事故によって死亡したことで受けた精神的な苦痛に対して支払われる補償
死亡事故の場合、亡くなられたご本人に代わって遺族には「死亡慰謝料」を請求する権利があります。自営業(個人事業主)の方はもちろん、死亡慰謝料は事故で亡くなられた方すべての方が請求可能な補償です。
死亡慰謝料は、
- 亡くなられたご本人に対する慰謝料
- 遺族に対する慰謝料
このように大きく2つに分類することができます。
死亡慰謝料は損害賠償の一部?
交通事故の被害を補償するために支払われる金銭すべてをさして「慰謝料」と言われることが多いですが、慰謝料は損害賠償の一部にすぎません。慰謝料はあくまで精神的苦痛に対する補償のみをさしています。
つまり、死亡事故では死亡慰謝料以外にも損害として請求できる項目がいくつかあげられます。
死亡事故の主な損害賠償項目
- 死亡慰謝料
- 死亡の逸失利益
- 葬儀関係費用
逸失利益とは死亡しなければ将来的に得られたであろう収入・利益に対する補償です。自営業(個人事業主)の逸失利益に関しては、基本的に「青色申告控除額を含む事故前年の確定申告に基づく所得金額」にもとづいて計算されることになります。
治療を受けつづけたにも関わらず、残念ながら亡くなられてしまうケースもあります。このような場合はさらに死亡までに要した、
- 治療費
- 入院費
- 入院雑費
- 入通院慰謝料
- 休業損害
- 看護料
などもあわせて請求することが可能です。
相場計算|慰謝料の計算機
死亡事故の損害賠償はどのくらいの相場となるのか、かんたんに算出できる計算機を紹介します。
亡くなられたご本人の
- 家族内における立場
- 性別
- 扶養家族の数
- 年齢
- 年収
を入力するだけで計算機による相場の自動計算結果が表示されます。事前の会員登録などはまったく不要なので気軽にお試しください。
相場いくら?自営業の死亡慰謝料
基準で異なる死亡慰謝料相場
死亡慰謝料など交通事故における損害賠償がいくらか算定する際、ある基準が用いられます。基準は自賠責基準/任意保険基準/弁護士基準の3通りあり、それぞれの基準で設定されている金額が異なります。要するにどの基準を用いて算定するかで得られる慰謝料などの金額に差が出ることを意味します。
3つの算定基準のうち、最も高額で適正な慰謝料が算定されるのは弁護士基準です。
慰謝料算定の3基準
自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準
ご遺族のみで保険会社と示談交渉をおこなっている場合、適正額よりも相当低い金額が提示されている可能性が高いです。適正額となる弁護士基準による算定を実現するには弁護士の示談介入が必須です。弁護士の依頼を検討することをおすすめします。
基準比較|個人事業主の死亡慰謝料
3つの基準それぞれで死亡慰謝料の金額が異なることは先ほど述べたとおりなのですが、自賠責基準/任意保険基準/弁護士基準それぞれの基準のなかでも亡くなられた方の家族構成や立場などに応じて金額が異なってきます。各基準でどのように金額が異なるのかそれぞれ見ていきたいと思います。
自賠責基準の死亡慰謝料
自賠責基準の死亡慰謝料は、亡くなられたご本人に対して350万円が固定で支払われます。そこからご遺族の人数に応じた金額が加算されていきます。
自賠責基準
自営業(個人事業主)の死亡慰謝料
慰謝料 (万円) |
||
---|---|---|
本人 | 350 | |
+ | ||
遺族 | 1人 | 550 |
2人 | 650 | |
3人 以上 |
750 | |
+ | ||
被扶養者 | 200 |
任意保険基準の死亡慰謝料
任意保険基準の死亡慰謝料は、亡くなられたご本人が自営業を営む個人事業主として一家を支える役割にあったかどうかなどの属性を考慮した金額が設定されています。
任意保険基準
自営業(個人事業主)の死亡慰謝料
属性 | 慰謝料 (万円) |
---|---|
一家の支柱 | 1700 |
65歳以上 | 1250 |
上記以外 | 1450 |
旧任意保険の支払基準から作成。
現在、各保険会社それぞれに独自基準があるため、金額は参考程度にご確認ください。
任意保険基準では、ご遺族に対する固有慰謝料が含まれた金額となる点にご注意ください。
弁護士基準の死亡慰謝料
弁護士基準の死亡慰謝料は、亡くなられたご本人が自営業を営む個人事業主として一家を支える立場にあったかどうかなどの属性を考慮した金額が設定されています。
弁護士基準
自営業(個人事業主)の死亡慰謝料
立場 | 慰謝料 (万円) |
---|---|
一家の支柱 | 2800 |
その他 | 2000 〜 2500 |
弁護士基準では、ご遺族に対する固有慰謝料が含まれた金額となる点にご注意ください。
以上のとおり3つの基準それぞれの死亡慰謝料相場をみてきましたが、一番高額になるのは弁護士基準の相場であることが明白にお分かりいただけたと思います。
とはいえここで紹介した金額は一定の目安としてお考えください。亡くなられたご本人やご遺族の状況を個々で配慮されるため、死亡慰謝料の金額は前後する可能性があることを頭の隅に置いておいていただきたいと思います。
2800万を超える増額事例
死亡慰謝料を算定する基準のうち、弁護士基準の2800万円が最も高額になることが分かりました。しかし、これらは一定の目安としてお考えください。亡くなられたご本人が自営業を営まれていたかどうかという点が考慮されることもありますが、ご家族内での立場などさまざまな状況を総合的に鑑みて慰謝料の金額は決められることになります。
ここからは2800万円を超えた事例を紹介したいと思います。
死亡慰謝料① 3000万円
大学教授・男性(事故当時58歳)
本人分:2400万円
母:150万円
弟・妹の3人:450万円(各150万円)
事故日 平成10年12月16日 大阪地方裁判所 平成12年9月21日
死亡慰謝料② 3000万円
兼業主婦・女性(事故当時49歳)
本人分:2600万円
娘:400万円
事故日 平成15年12月5日 東京地方裁判所 平成17年7月12日
死亡慰謝料③ 3000万円
タクシー乗務員・男性(事故当時52歳)
本人分:2600万円
妻:200万円
子2人:200万円(各100万円)
事故日 平成16年5月15日 東京地方裁判所 平成18年5月10日
このように弁護士基準では2800万円を超えるような事例があることが分かりました。個別の事情を反映したうえで慰謝料の金額は決められます。
死亡慰謝料の受け取り|個人事業主のご家族
死亡慰謝料はご遺族に相続
亡くなられた自営業(個人事業主)の方ご本人に対して死亡慰謝料は支払われるとはいえ、亡くなられてしまっている以上ご本人は受け取ることができません。そのため死亡慰謝料は相続の対象となります。
相続人としてあげられるのはまずご遺族だと思いますが、誰がどの程度相続するかは法律で定められています。
配偶者・子だけが相続人?
自営業(個人事業主)の方が結婚されていれば常に第一順位は配偶者(妻または夫)となります。配偶者とは、婚姻届けが提出されて法律上の婚姻関係にある人をさします。
内縁関係の場合、亡くなられたご本人分に対する慰謝料を相続する権利は内縁者にはありません。しかし、内縁者でもご遺族に対する固有の死亡慰謝料は認められる可能性はあるようです。
配偶者と別にしての相続順は、子→直系尊属(父母・祖父母)→兄弟姉妹で優先順位が決まっています。
自営業(個人事業主)の相続割合についてはつぎの表をごらんください。
① | ② | ③ | |
---|---|---|---|
配偶者 | 1/2 | 2/3 | 3/4 |
子 | 1/2 | - | - |
直系尊属 | 0 | 1/3 | - |
兄弟姉妹 | 0 | 0 | 1/4 |
相続の基本的なルールは以上のとおりです。自営業(個人事業主)の方が交通事故で亡くなられた場合、交通事故の損害賠償はもとより事業用資産の相続も問題となります。遺言や生前贈与など個別の事情がある場合は相続割合が変更されることもあり、複雑になることが予想されますので、弁護士などの専門家に一度相談しておくことをおすすめします。
まとめ
自営業(個人事業主)の死亡事故では死亡慰謝料をはじめとし、治療費や休業損害などさまざまな損害賠償の合計を請求することができます。
- 死亡慰謝料は死亡という精神的な苦痛に対する補償
- 弁護士基準の死亡慰謝料は、家族内の役割などに応じて2000~2800万円が相場
- 配偶者がいる場合、続人は常に第一順位が配偶者
など死亡慰謝料にまつわる疑問について解説してきました。
保険会社との示談交渉では、提示される金額が相当低くなることが予想されます。適正額の慰謝料を得るには、過去におこなわれた裁判で認められた弁護士基準を適用させる必要があります。お金で大切なご家族を亡くした悲しみが癒されるわけではないと思いますが、突然人生をうばわれることになったご家族の無念の思いをはらすためにも適正な慰謝料を得ることは重要です。
示談交渉は心の整理が終わる前からはじめなければいけないこともあり、ご遺族にとって大きな心の負担も危惧されます。悩みをご家族だけで解決しようとしていませんか?交通事故を専門とする弁護士に相談すれば、より良い方向へ導くアドバイスが得られます。無料相談をおこなう弁護士も数多くいるので、このような機会を利用して気軽に悩みを相談してみてはいかがでしょうか。
自営業の死亡慰謝料についてのQ&A
自営業の方の死亡事故で請求できる慰謝料等は?
自営業の方が交通事故で亡くなった場合、死亡慰謝料・死亡の逸失利益・葬儀関係費用を加害者側に請求することができます。死亡慰謝料とは、交通事故によって死亡したことで受けた精神的な苦痛に対して支払われる補償のことです。死亡の逸失利益は、死亡しなければ将来的に得られたであろう収入・利益に対する補償のことを言います。
自営業の死亡慰謝料の相場は?
自営業をされている方が交通事故で亡くなった場合、死亡慰謝料の相場は弁護士基準基準で2000万~2500万円です。一家の支柱であった場合は、2800万円が相場となります。ただし弁護士基準とは、死亡慰謝料の算定に用いる3つの基準のうち最も高額なものです。その他の自賠責基準や任意保険基準を用いて金額を算定した場合には、もっと低額な金額になります。
個人事業主の死亡慰謝料は誰が相続する?
個人事業主の方の死亡慰謝料は、相続人が受け取ります。相続人の第一順位は配偶者です。配偶者をのぞく相続の優先順位は子→直系尊属→兄弟姉妹となります。こうした相続人の決め方や、どれくらいの割合で相続できるのかなどについては、法律によって決められています。