交通事故の慰謝料|捻挫でいくらもらうのが妥当?計算法と相場を公開
交通事故の慰謝料について「捻挫」の場合を特集しました!
捻挫というと軽傷に聞こえるかもしれませんが、その損傷の程度によっては身体に後遺症が残ることも。
適切な慰謝料に向けて必要な情報をまとめましたので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
交通事故で気を付けたい「頸椎捻挫」「腰椎捻挫」
捻挫とは、不自然な形にひねることで関節などが傷つくことをいいます。
痛みや腫れを伴うので、受傷直後、外観からは骨折や脱臼など明確な判別を付けることが難しいです。
病院では、MRIやレントゲンを使って骨折や脱臼などが起こっていないことを確かめることから始めます。
「骨折や脱臼が起こっていない」ことが確かめられたら、捻挫という診断を受けることになります。
交通事故で発生頻度の高い捻挫は次の2つがあります。
- ① 頸椎捻挫(けいついねんざ)
- ② 腰椎捻挫(ようついねんざ)
「椎」というのはどこの部分でしょう…?
人体においては「脊椎」、いわゆる背骨が重要な役割を果たしています。
脊椎の役割を調査した結果、4つの大切な役割が分かりました。
脊椎の役割
- ① 脊髄などの大切な神経を保護する
- ② 上半身を支える
- ③ 上半身を動かす
- ④ 肋骨との組み合わせで内臓を保護する
出典:http://www.sekitsui.com/function/
脊椎はたくさんの「椎骨」が連なっており、頸椎や腰椎もその一部です。
頸椎は脊椎の首の部分、腰椎は脊椎の腰の部分になります。
① 頸椎捻挫
いわゆる「むちうち」状態のことです。
むちうちは傷病名ではなく状態を指しますので、むちうちの場合記載される診断名は「頸椎捻挫」と記載されることが多いようです。
② 腰椎捻挫
いわゆる「ぎっくり腰」に近い状態です。
腰椎に無理な外力が加わることで、損傷を受けている状態です。
頸椎捻挫・腰椎捻挫(むちうち)|慰謝料の相場はある?
2つの慰謝料に注目しよう!
交通事故にあい、頸椎捻挫や腰椎捻挫と診断された…。
なかには、「軽傷かもしれないけど慰謝料ってそもそももらえるのかな?」と疑問を持つ人もいるようです。
結論
頸椎捻挫や腰椎捻挫でも、交通事故の慰謝料を受けとることは可能です。
まずは、慰謝料がどんなお金なのかを知っておきましょう!
慰謝料とは
交通事故で被害者が負った精神的苦痛に対する金銭的補償のこと。
頸椎捻挫や腰椎捻挫でもらえる慰謝料は次の2つがあります。
- ① 入通院慰謝料
- ② 後遺障害慰謝料
2つの違いはどんな精神的苦痛に対して支払われているのかということです。
下表にその違いをまとめました。
入通院慰謝料 | 後遺障害慰謝料 | |
---|---|---|
どんな精神的苦痛 | 入院、通院、治療をすること | 後遺障害が残ったこと |
後遺障害あり | 請求できる | 請求できる |
後遺障害なし | 請求できる | 請求できない |
入院や通院、治療をすることへの精神的苦痛が入通院慰謝料となりますので、交通事故被害者のほぼ全員が受けとることができる慰謝料といえますね。
一方の後遺障害慰謝料は、「後遺障害」が残った場合に請求が認められています。
治療を通して完治した場合、後遺症が残っていても「後遺障害」と認定されない場合は、後遺障害慰謝料を受けとることはできないのです。
まずは、ほぼ全員が当てはまる「入通院慰謝料」からみていきましょう。
交通事故慰謝料の相場と3基準
慰謝料の計算方法は、3通りあります。
慰謝料とは精神的苦痛に対して支払われるものです。
ですが、精神的苦痛とは本来はお金で算定するのは難しいですよね。
治療費や通院交通費といった実費は、実際にかかったお金を加害者側が支払うことで説明できます。
ですが精神的苦痛というのは、本当は一人ひとり感じ方が違います。
それを一定のお金に算定するときには、「ものさし」を決めることが重要です。
そのものさし、つまり<はかる時の基準>が一つではないということです。
慰謝料の計算①自賠責保険の基準
一つ目の基準は、自賠責保険の基準といわれています。
自賠責保険とは、自動車の運転者に加入義務のある保険です。交通事故の相手方が自動車であれば、少なくとも相手方の自賠責保険からの保険金を慰謝料として受けとることができるのです。
算定方法
計算式は2通りあります。
(1)入院日数 × 4,200円 + 通院期間(実治療日数 × 2) × 4,200円
あるいは
(2)入院日数 × 4,200円 + 通院期間 × 4,200円
日額を4,200円として、該当する日数を掛け算します。
入院日数は、入院した日数をそのまま掛け算すればOKです。
通院期間は、(1)あるいは(2)の短い方を採用します。
例えば、通院期間が1ヶ月(30日)、実治療日数(実際の通院日数)が17日だとしましょう。
この場合、実治療日数17日✖2=「34日」のほうが通院期間の「30日」より長くなります。
計算は少ない方を採用しますので、この場合は通院期間「30日」を4,200円で掛け算します。
慰謝料の計算②任意保険の基準
算定方法
それぞれの保険会社独自の基準を持っています。
以前は、一般にも公開された統一基準がありましたが、今は各保険会社が独自で設定しています。
以前の統一基準に近かったり、踏襲されている傾向にあるようです。
下表は、以前に公開されていた基準です。
慰謝料の計算③弁護士基準
算定方法
一定の基準がありますので、個別に計算式では算定しません。
上表のように、入院月数と通院月数で交わる部分を見ます。
▶入院0ヶ月・通院2ヶ月→36万円
▶入院3ヶ月・通院5ヶ月→142万円
自賠責保険の基準で紹介した計算式とは違い、通院の期間で計算します。
後遺障害認定されたら慰謝料は増額
入通院慰謝料は、極端にいえば通院1日からでも支払われます。
ですが「後遺障害慰謝料」は、後遺障害に認定されないと請求できません。
このイラストは、交通事故の損害賠償金の内訳です。
「逸失利益」と「後遺障害慰謝料」という2つの費目が、青色で書かれていますね。
青色の項目は治療終了後(症状固定後)の発生するものと書かれています。
症状固定とは
症状固定とは、これ以上治療を続けても良くも悪くもならない状態になったことを言います。
これは、医師の判断が尊重されます。
「症状固定」とされるということは、治療を続けても良くならないということです。
この場合、加害者からの治療費は打ち切られます。
そのかわりに、身体に残った後遺症も明らかになります。
たとえば頸椎捻挫であれば、治療を続けてもしびれがとれない、などの「しびれ」が後遺症と言えるでしょう。
後遺症が「後遺障害等級認定の申請」を経て、「後遺障害」と認められると、後遺障害慰謝料の請求が可能です。
後遺障害等級認定を経て、被害者の身体に残った症状に後遺障害の等級が認定されることで、請求できる費目が増えるから、結果として受けとる慰謝料も増額するのです。
頸椎捻挫・腰椎捻挫(むちうち)|後遺障害等級・後遺障害慰謝料
後遺障害等級は12級か14級
頸椎捻挫・腰椎捻挫で認定される可能性のある後遺障害等級は12級13号または14級9号です。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
---|---|
痛みやしびれが残っており、受傷部分のX線写真・MRI画像などで異常が確認できる | |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
X線写真やMRI画像などで受傷部分に異常を確認することはできないが、しびれや痛みがあることが合理的に推測できる |
後遺障害の中では神経症状として認定される可能性があります。
12級13号と14級9号の違いは「頑固な」という表現のみです。
この「頑固さ」が認められるかどうかは、画像検査の結果がポイントになります。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料は、基本的には後遺障害等級で決まります。
後遺障害等級ごとに慰謝料金額の目安があり、個別の事情が反映されて増減する可能性があります。
12級 | 14級 | |
---|---|---|
自賠責保険の基準 | 93万円 | 32万円 |
任意保険の基準 | 100万円 | 40万円 |
弁護士基準 | 290万円 | 110万円 |
入通院慰謝料と同様に、後遺障害慰謝料の算定基準も3つあります。
慰謝料相場は弁護士基準が最も高くなりますね。
また、12級と14級どちらで認定を受けるかも慰謝料の金額を左右するポイントです。
あらためて画像検査の結果の重要性が分かります。
慰謝料はこう計算する!頸椎捻挫・腰椎捻挫(むちうち)の算定フロー
<一緒に計算してみよう>分かりやすく解説
計算式に当てはめてみましょう。
事例
- 入院:なし
- 通院:3ヶ月
- 通院中の実治療日数:65日
- 後遺障害認定:なし
自賠責保険の基準
まずは入通院慰謝料を計算してみましょう。
1日あたりの日額は4,200円です。
通院期間は、「通院期間」か「実治療日数✖2」の短い方を採用します。
通院期間3ヶ月は「90日」となり、実治療日数✖2では「130日」となります。
計算には少ない方を使いますので、通院期間3ヶ月(90日)で計算します。
▼入通院慰謝料の計算式
通院分:4,200円✖90日=378,000円
入院分:なし
入通院慰謝料(通院+入院):378,000円
後遺障害は非該当ですので、もらえる慰謝料は「入通院慰謝料」のみです。
任意保険の基準
現在は各保険会社により基準は異なり、非公開とされています。
以前の統一基準を用いて考えてみましょう。
入院0ヶ月・通院3ヶ月の交わるところなので、378,000円となります。
後遺障害は非該当ですので、もらえる慰謝料は「入通院慰謝料」のみです。
弁護士基準
弁護士基準も、先に示した表を用いましょう。
入院0ヶ月・通院3ヶ月の交わるところなので、530,000円となります。
後遺障害は非該当ですので、もらえる慰謝料は「入通院慰謝料」のみです。
まとめ
入院なし・通院3ヶ月の入通院慰謝料↓
- 自賠責保険の基準、任意保険の基準:378,000円
- 弁護士基準:530,000円
後遺障害に認定されたら、後遺障害慰謝料を追加します。
【慰謝料計算機】あなたの「捻挫の慰謝料」を知る近道!
スマホで簡単に慰謝料をチェック
慰謝料計算機を使えば、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料はもちろん、休業損害や逸失利益なども一気に分かって便利です。
自動計算するので、面倒くさい計算から解放されますよ。
計算結果の中には、治療費や入院雑費、投薬料などは含まれていません。
実費については別途請求していきましょう。
なお、この慰謝料計算機の結果は弁護士基準に基づいています。
保険会社の算定結果とは異なる可能性が高いことを念頭においてくださいね。
まとめ
腰椎捻挫や頸椎捻挫は、交通事故の怪我としては軽傷の部類に入るでしょう。
しかし、痛みや苦痛の感じ方は人それぞれ。神経症状をかかえたまま生活していくというストレスは、本人にしか分かりえないことです。
捻挫であっても慰謝料を受けとることは必要です。正しい慰謝料獲得を目指しましょう!
捻挫の交通事故慰謝料に関するQ&A
交通事故で捻挫したら慰謝料はもらえる?
捻挫とは、不自然な形にひねることで関節などが傷つくことをいいます。痛みや腫れを伴うので、受傷直後、外観からは骨折や脱臼など明確な判別を付けることが難しいです。通院治療したなら、通院慰謝料の対象になります。また、首の捻挫(頸椎捻挫:むちうち)や腰の捻挫(腰椎捻挫:ぎっくり腰)なども、受傷程度によっては後遺障害がのこり、慰謝料の対象となる場合があります。
後遺障害に認定されたら慰謝料は増える?
後遺障害慰謝料は、入通院慰謝料とは別に支払われるお金です。つまり、後遺障害に認定されたら受けとるお金が増額します。後遺障害慰謝料を受けとるには、症状固定となってから、後遺障害等級認定の申請をおこないましょう。そして、後遺障害等級が認定されれば、その結果に応じて後遺障害慰謝料が算定されます。
頸椎捻挫・腰椎捻挫の後遺障害等級は?
頸椎捻挫・腰椎捻挫で残った「痛み」「しびれ」などの神経症状は、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号は「局部に神経症状を残すもの」とされ、「頑固な」という表現の違いがあります。
頸椎捻挫・腰椎捻挫の後遺障害慰謝料相場は?
後遺障害12級であれば、自賠責保険の基準:93万円/任意保険基準(旧基準):100万円/弁護士基準:290万円となります。後遺障害14級であれば、自賠責保険の基準:32万円/任意保険基準(旧基準):40万円/弁護士基準:110万円となります。