交通事故の死亡慰謝料|計算方法や金額基準は3種類ある?
交通事故によって被害者の方が亡くなられた場合、ご遺族は被害者の方に代わって加害者側に賠償金を請求することになります。
中でも死亡慰謝料は、亡くなられたご本人やご遺族の方々の精神的苦痛に対する補償ですので、きちんと妥当な金額の死亡慰謝料を受け取ることは、ご遺族の方にとっても重要なポイントなのではないでしょうか。
そこでこの記事では、
- 死亡慰謝料の金額はどのように決められるのか
- どれくらいの金額が妥当で、どれくらいの金額を加害者側から提示されるのか
ということについて解説しています。
交通事故の死亡慰謝料と3つの金額基準
死亡慰謝料とは?遺族も請求できる?
死亡慰謝料とは
交通事故で亡くなられた被害者ご本人やご遺族の方々の、精神的苦痛に対して支払われる補償のこと
被害者ご本人は突然の事故で命を奪われ非常に無念だと思われますし、事故に遭って痛い思いや怖い思いをしたと考えられます。
残されたご遺族の方々は、突然ご家族を失い、とてつもない喪失感や寂しさ、辛さを感じていたり、加害者に対する怒りを感じていたり、将来に対する不安を感じていたりすると思います。
こうした精神的苦痛はお金によって癒えるものではありませんが、せめてもの補償として、死亡慰謝料が支払われます。
そのため、死亡慰謝料は被害者ご本人だけではなく、ご遺族にも支払われます。
支払い対象となるご遺族は、基本的に
- 父母(養父母を含む)
- 配偶者
- 子(養子、認知した子及び胎児を含む)
とされています。
兄弟姉妹や内縁の妻など、上記以外のご遺族でも、上記のご遺族と同じくらい被害者の方と近しい関係にあり、精神的苦痛も同じくらい大きいと認められれば、死亡慰謝料の支払い対象となります。
ただしこれについては加害者側との交渉が必要になりますので、交渉によっては認められない可能性もあります。
死亡慰謝料の3つの金額基準とは?
死亡慰謝料の金額・計算方法についてご説明する前に、死亡慰謝料の3つの金額基準をご紹介しておきます。
交通事故の死亡慰謝料には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」といった3つの金額基準があります。
- 自賠責基準:交通事故の被害者が受け取ることのできる、最低限の金額基準。国によって定められている。
- 任意保険基準:示談交渉の際に、加害者側保険会社が提示してくる金額基準。
- 弁護士基準:示談交渉の際に、被害者側の弁護士が提示する基準。3基準の中で最も高額。過去の判例をもとに決められているため、最も妥当性が高い。
実際に受け取ることのできる死亡慰謝料の金額は、示談交渉によって決められます。
つまり、
- 被害者側は、自賠責基準の金額を最低ラインとして、示談交渉で決められた金額を受け取ることができる
- 示談交渉では加害者側は任意保険基準の金額を、被害者側は弁護士基準の金額を(弁護士を立てた場合)主張する
ということです。
基準別|死亡慰謝料の計算方法・金額は?
自賠責基準の死亡慰謝料は?
上でもご紹介した通り、自賠責基準の金額は、被害者側が受け取ることができる最低限の金額基準です。
その計算方法は、金融庁と国土交通省が告示している「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」で定められています。
では、自賠責基準での死亡慰謝料の金額をご紹介します。
自賠責基準では、死亡慰謝料は「被害者ご本人への金額+支払い対象となるご遺族の人数に応じた金額」となっています。
ご本人 | 350万円 |
---|
請求者 | 慰謝料 |
---|---|
1名 | 550万円 |
2名 | 650万円 |
3名以上 | 750万円 |
扶養者あり | 上記+200万円 |
任意保険基準の死亡慰謝料は?
任意保険基準の金額は、各保険会社ごとに異なり非公開です。
目安としては、自賠責基準の金額に少し上乗せした程度と言われています。ここでは、以前各社共通で使われていた、旧任意保険基準をご紹介します。
旧任意保険基準では、死亡慰謝料の金額は、被害者の方が生前家族内でどのような立場にあったかによって決められます。
一家の支柱 | 1500万~2000万円 |
---|---|
母親 配偶者 |
1300万~1600万円 |
18歳未満で未就労 | 1200万~1600万円万円 |
65歳以上 | 1100万~1400万円 |
旧任意保険基準の場合は、ご遺族に対する金額も上記の金額に含まれています。
なお、任意保険基準は示談交渉で加害者側任意保険会社が提示してくる金額ですが、場合によっては任意保険基準より低額な自賠責基準の金額を提示してくることもありますので、ご注意ください。
弁護士基準の死亡慰謝料は?
弁護士基準の死亡慰謝料も、旧任意保険基準と同じように、被害者の方が生前家族内でどのような立場にあったかによって決まります。
そしてこの金額は過去の判例をもとに決められたものですので、3基準の中で最も妥当性が高いと言われています。
つまり、示談交渉で合意した金額が弁護士基準に近いほど、妥当な金額で合意できたと言えるということです。
一家の支柱 | 2800万円 |
---|---|
母親 配偶者 |
2500万円 |
その他 | 2000万~2500万円 |
弁護士基準の場合も、ご遺族に対する金額は上記の金額に含まれています。
ただし、一家の支柱の金額については、扶養家族3人(配偶者1人、子供2人)を想定した金額になっていますので、扶養家族がもっと多い場合には、増額される可能性があります。
他にも、
- 事故の悪質性が高い場合
- 加害者側に不誠実な対応があった場合
- 遺族が死亡事故を目撃してしまった場合
- 被害者の死を受け、遺族が精神疾患を患った場合
- 新婚や幼い子供の死など、被害者や遺族の無念が特に大きいと思われる場合
には、増額される可能性があります。
しかし、弁護士基準は弁護士が主張しないと説得力がないとして受け入れられない可能性が高いです。
増額についても、弁護士による交渉でないと認められない可能性が高いです。
示談交渉で弁護士基準の金額を主張したい場合や増額を主張したい場合は、弁護士に交渉を依頼することが望ましいです。
まとめ|交通事故の死亡慰謝料
ここまで、交通事故の死亡慰謝料について解説してきました。要点をまとめると、以下のようになります。
ポイント
- 死亡慰謝料は、被害者や遺族の精神的苦痛に対する補償
- 死亡慰謝料の金額には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3種類のものがある
- 最も妥当な金額は弁護士基準によるもの
- 扶養家族が多い場合や加害者の過失が大きい場合など、死亡慰謝料が増額される場合がある
どんなにお金をもらっても、ご家族を失った悲しみや辛さが癒えるわけではないと思います。
また、ご家族を亡くしてしばらく何も手につかない、お金のことは考えたくないという場合もあると思います。
しかし、交通事故の損害賠償請求には時効がありますし、一度示談が成立すると、基本的には二度と交渉を再開したり追加の賠償請求をしたりすることはできません。
そのため、後から後悔しないよう交渉することが大切です。
被害者のご遺族で示談に対応することが難しい場合は、示談の準備や示談交渉を弁護士に代理してもらうこともできますので、検討してみても良いかと思います。
死亡慰謝料についてのQ&A
死亡慰謝料は遺族ももらえる?
死亡慰謝料は、ご遺族も受け取ることができます。対象となるご遺族は、① 養父母を含む父母、② 配偶者、③ 養子、認知した子や胎児を含む子となっています。ただし兄弟姉妹や内縁の妻でも、こうしたご遺族と同じくらい被害者の方と近しい関係にあり、精神的苦痛も同等である場合は、慰謝料が認められる可能性があります。
死亡慰謝料の金額基準は3つある?
死亡慰謝料の3つの金額基準とは、① 自賠責基準、② 任意保険基準、③ 弁護士基準のことです。自賠責基準は自賠責保険基準が算出する被害者が最低限受け取れる金額基準、任意保険基準は示談交渉で加害者側保険会社が提示してくる金額基準、弁護士基準は弁護士を立てた場合に示談交渉で被害者側が提示する金額基準です。
死亡慰謝料の最も妥当な金額基準は?
死亡慰謝料の3つの金額基準のうち、最も妥当なのは弁護士基準です。弁護士基準は過去の判例をもとに決められた基準で、3基準の中で最も高額になっています。ただしこの金額基準は、弁護士が主張しなければ受け入れられない可能性が高いです。