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判例番号36
平成25年4月24日
宇都宮地方裁判所

てんかんによる交通事故につき、直接の加害者でなくとも加害者と同居の親に損害賠償請求できる場合がある!

基本情報

判決日時 平成25年4月24日
裁判所 宇都宮地方裁判所
事件番号 平成23年(ワ)第948号

事故の内容

事件概要 通学のために歩道上を歩行していた6名の被害児童らに加害者運転のクレーン車が衝突。被害児童らは死亡しました。
場所 歩道
被害者
加害者

裁判の詳細

原告 被害者遺族
被告 加害者Y1,クレーン車の保有会社Y2,加害者と同居する母親Y3
請求内容 損害賠償
Y1がクレーン車を運転中にてんかんで意識を失ったため本件事故が発生しました。 被害者遺族はY1の母親に対し、不法行為責任に基づく損害賠償請求をしました。 本件事案の具体的な事情は以下のとおりです。 ・Y3はY1と同居しており、Y1が小学校3年生の時にてんかんに罹患していることを認識した。 ・Y3はY1が処方された抗てんかん薬を服用しなければ発作を起こす可能性が高いことを認識していた。 ・本件事故当日、Y3は、Y1がその前夜に服用すべきであった抗てんかん薬を服用していないことを認識していた。 ・Y3は、Y1が免許の欠格事由に該当することを認識していながら、Y1に自動車等を何度も買い与え、クレーン車の運転免許試験当日も、Y1が発作を起こしていたにもかかわらず、Y1を最寄りの駅まで自動車で送った。 ・Y1はてんかんの発作に起因する交通事故を5回も起こし、そのうちの1回は自動車運転過失致傷罪として起訴されたが、Y3は同事件の公判廷で、事故の原因は発作によるものであることを認識していながら、Y1の供述内容に沿うように寝不足が原因である旨の証言をした。

争点と結論

主な争点 てんかんによる事故に関し、加害者と同居する母親は、加害者による自動車の運転を阻止しなかったことにつき不法行為責任を負うか?
判決文抜粋
Y3は、…Y1による自動車の運転行為により…事故が発生することを予見することができた一方で、Y2に通報すればY2において漫然とY1をクレーン車の運転に従事させることはなく,本件事故の発生を防止することができたものと認められ、Y1が自宅を出た直後にY3がY2に通報することは容易であったことから…Y3が通報しなかったことには違法性が存する。
ポイント ・直接の加害者でなくとも、本件のような事実関係の下においては、てんかんによる交通事故が発生しないように措置をとる義務があり、かかる義務に違反すると不法行為責任を負うことになります。 ・事故の発生の予見可能性があり、防止措置をとることが容易であったことから、防止措置をとる義務があるとされました。