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判例番号30
昭和61年2月27日
最高裁判所

パトカーの追跡により逃走車が事故を起こしても、被害者は国家賠償請求できない場合がある!

基本情報

判決日時 昭和61年2月27日
裁判所 最高裁判所
事件番号 昭和58年(オ)第767号

事故の内容

事件概要 加害者運転の普通乗用車が交差点で、A車に衝突し、A車が被害車両に激突。被害車両の運転者と2名の同乗者が負傷しました。
場所 交差点
被害者
加害者

裁判の詳細

原告 被害者
被告 富山県
請求内容 国家賠償
本件事故はパトカーが加害車両を追跡中に発生したものです。 被害者はパトカーの追跡行為が違法であるとして、県に国家賠償請求をしました。 本件事故の具体的な事情は以下のとおりです。 ・パトカーは赤色灯とサイレンをつけて追跡を開始し、県内各署に加害車両の車両番号、車種、車色、逃走方向等の無線手配を行った。 ・パトカーは、加害車両との車間距離約20~50メートル、時速約100キロメートルで追跡した。 ・加害車両は、時速100キロメートルで逃走を続け、途中で車を反対車線にはみ出して追い越し、少なくとも一か所は赤信号を無視して走行した。 ・加害車両は、交差点で先行車が信号待ちのため停車していたのに、減速しつつ右折車線から大回りで、赤信号を無視して逃走し、パトカーも同様の方法で追跡した。 ・左折後事故現場に至る道路は、途中まで四車線、その後は二車線で歩道を含む道路幅員が約12メートル、最高速度時速40キロメートルで、道路両側に商店や民家が立ち並び、交差する道路も多かった。 ・加害車両は左折後時速約90キロメートルに加速して逃走したが、振り切ったものと考えていったん時速70キロメートルに減速した。 ・パトカーは、左折後時速約80キロメートルに加速して加害車両との車間距離を縮め、巡査は、逃走方向を無線で手配した。 ・加害者は追跡に気付き、時速約100キロメートルに加速して進行し、黄色点滅信号、2点の赤色点滅信号を無視して進行した。 ・本件パトカーは、道路が片道一車線になつているうえ道路がカーブしていて加害車両が見えなくなつたため、赤色灯は点灯したまま、サイレンを消し、減速して進行した。 ・事故発生時刻は午後11時頃であった。

争点と結論

主な争点 パトカーの追跡により逃走車が事故を起こした場合、被害者は国家賠償請求ができるか?
判決文抜粋
パトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被つた場合において、右追跡行為が違法であるというためには、右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要する。
ポイント ・パトカーの追跡行為が被害者との関係で違法となるのは、追跡が不必要または不相当な場合に限られます。 ・本件では、逃走者の氏名等が未確認で、無線手配や検問があっても、究極的には追跡が必要であること、格別危険な道路交通状況でなかったことなどから、追跡行為の違法性は認められませんでした。