通院7ヶ月・8ヶ月・9ヶ月の慰謝料は?増額や減額のケースは?
交通事故に遭い通院・入院をすると、「入通院慰謝料」を請求することができます。この金額は基本的に、通院期間や入院日数から算出されます。
そこでこの記事では、通院7ヶ月・8ヶ月・9ヶ月の方を対象に、
- 入通院慰謝料の金額算出方法
- 通院回数や頻度の注意点
- 整骨院通院の注意点
- 増額や減額が発生するケース
について解説しています。
交通事故で骨折や重いけがを負った場合には、通院が7ヶ月~9ヶ月程度かかる可能性があります。大きなけがをされた方は、この記事をご確認ください。
交通事故|通院した場合の慰謝料は?
交通事故の通院で請求できる慰謝料は?
交通事故でけがをして通院・入院すると、「入通院慰謝料」を請求することができます。
入通院慰謝料
交通事故による通院・入院で受けた精神的苦痛に対する補償
交通事故で通院・入院することになると、その分自由な時間が奪われてしまいます。また、治療や手術で怖い思いや痛い思い、辛い思いをすることもあるかと思います。
そうした精神的苦痛に対する補償が、入通院慰謝料なのです。
入通院慰謝料の金額は、基本的に通院期間と入院日数から導き出されます。
慰謝料の3つの金額基準とは?
入通院慰謝料の金額や算出方法をご紹介する前に、慰謝料の3つの金額基準を知っておくことが大切です。
交通事故の慰謝料金額には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの基準があります。
- 自賠責基準:被害者が受け取ることができる最低限の金額基準
- 任意保険基準:示談交渉で加害者側の保険会社が提示してくる金額基準
- 弁護士基準:示談交渉で被害者側の弁護士が提示してくる金額基準
交通事故の慰謝料は、示談交渉で加害者側と話し合って決められます。この時、基本的には加害者が加入している任意保険担当者が、加害者の代理人として交渉を行います。
その際、加害者側の保険会社は、その会社が定めた基準に従って慰謝料金額を算出します。この金額基準が、「任意保険基準」です。
一方、被害者はご本人が示談交渉に臨むこともできますが、弁護士を代理人として立てることもできます。
弁護士を代理人として立てた場合に加害者側に提示できる金額基準を、「弁護士基準」といいます。
入通院慰謝料の金額|通院7~9ヶ月の場合
弁護士基準の場合|表をご紹介
弁護士基準の入通院慰謝料は、「入通院慰謝料算定表」という表を見て算出されます。
この表に記載されている金額は、過去の判例をもとに決められています。ここではその一部をご紹介します。
表全体は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部編)に記載されています。これは図書館でも確認できますので、そちらで確認してみても良いかと思います。
入院 | 軽傷 | 重傷 |
---|---|---|
0カ月 | 97万円 | 124万円 |
1ヶ月 | 119万円 | 157万円 |
2ヶ月 | 139万円 | 188万円 |
3ヶ月 | 152万円 | 217万円 |
4か月 | 166万円 | 244万円 |
5ヶ月 | 175万円 | 266万円 |
以下略 | … | … |
入院 | 軽傷 | 重傷 |
---|---|---|
0カ月 | 103万円 | 132万円 |
1ヶ月 | 125万円 | 164万円 |
2ヶ月 | 143万円 | 194万円 |
3ヶ月 | 156万円 | 222万円 |
4か月 | 168万円 | 248万円 |
5ヶ月 | 176万円 | 270万円 |
以下略 | … | … |
入院 | 軽傷 | 重傷 |
---|---|---|
0カ月 | 109万円 | 139万円 |
1ヶ月 | 129万円 | 170万円 |
2ヶ月 | 147万円 | 199万円 |
3ヶ月 | 158万円 | 226万円 |
4か月 | 169万円 | 252万円 |
5ヶ月 | 177万円 | 274万円 |
以下略 | … | … |
任意保険基準の場合
任意保険基準の場合も、弁護士基準と同じように表を用いて金額を算出します。ただし表に書かれている金額は弁護士基準よりも低いです。
これは各保険会社により異なり非公開ですが、一般的には
- 弁護士基準の1/2~1/3程度
- 自賠責基準に少し上乗せした程度
と言われています。
弁護士基準やこの後ご紹介する自賠責基準を参考にしてみてください。
自賠責基準の場合|計算式をご紹介
自賠責基準の場合は、弁護士基準や任意基準とは違い、計算式によって金額を算出します。
その計算式は以下の通りです。
自賠責基準の計算式
4200円×入通院日数
入通院日数は、
- 入院日数+通院期間
- 入院日数+(実通院日数×2)
のうち少ない方を採用
任意保険基準はこの自賠責基準の金額に少し上乗せした程度と言われていますが、実際には自賠責基準の金額を提示してくる場合もあるようです。
入通院慰謝料の注意点
通院頻度は最低月1回以上
交通事故で通院する場合は、最低でも月に1回以上の頻度で通院してください。
前回の通院から1ヶ月以上あいてしまうと、もうけがが治ったと判断され、それ以降の通院は入通院慰謝料の対象外とされてしまう可能性があります。
通院回数10回未満は減額の可能性も
任意保険基準で金額を算出する場合には、ひと月の通院回数が10回未満だと減額されてしまう可能性があります。
通院回数/月 | 減額の程度 |
---|---|
1~4 | 1/3~1/2に減額 |
5~9 | 1/2~2/3に減額 |
もともと示談交渉で加害者側保険会社が提示してくる金額は低額ですが、減額されるとさらに低くなってしまいますので、この点にもご注意ください。
入通院慰謝料が増額される3つのケース
弁護士基準で金額を算出する場合、以下のケースでは表に記載されている金額が増額される可能性があります。
- ① 子育てや仕事でやむを得ず入通院日数を短縮した場合
- ② 手術で特に大きな苦痛を経験した場合
- ③ ギプスによる自宅療養期間や入院待機期間があった場合
② は、繰り返し手術をした、麻酔をせずに手術をした、長時間の手術をしたなどの場合が当てはまります。
③ の場合は、実際には入院していない自宅療養期間や入院待機期間も入院日数に数えることで、結果的に入通院慰謝料が増額することになります。
整骨院通院には要注意
交通事故の治療で整骨院に通いたいという方もいらっしゃいますが、この場合、
- 必ず医師の許可を得てから通院する
- 整骨院通院を始めても、病院への通院も継続する
ということを心がけてください。
整骨院での施術は厳密には医療行為ではありませんし、整骨院の先生は柔道整復師であり医師ではありません。
そのため、医師の許可なく整骨院に通っていた場合や、整骨院に通って病院へは通わなかった場合には、入通院慰謝料が認められない恐れがあるのです。
交通事故の入通院慰謝料まとめ
ここまで、通院が7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月の場合の入通院慰謝料について解説してきました。
このことから、
- 加害者側から提示される金額は最低限の金額とあまり変わらない
- 弁護士基準の金額が最も高い
ということが分かったかと思います。
また、金額の算出方法は決まっていても、実際には細かい事情を考慮して増額されたり減額されたりするので、必ずしも計算通りの金額、表通りの金額になるとは限りません。
本当に妥当な金額を知りたい場合には、弁護士に問い合わせてみるのも良いかと思います。
通院7・8・9ヶ月の慰謝料についてのQ&A
通院で請求できる慰謝料とは?
交通事故で病院に通院した場合、「入通院慰謝料」を加害者側に請求することができます。入通院慰謝料とは、入通院で生じた精神的苦痛に対する補償のことです。入通院慰謝料の金額には、弁護士基準・任意保険基準・自賠責基準という3つの基準があります。弁護士基準が最も高額で、自賠責基準が最も低額となります。
入通院慰謝料の算出方法は?
入通院慰謝料の算出方法は、弁護士基準・任意保険基準・自賠責基準によって異なります。弁護士基準では、入通院慰謝料算定表という表を用います。任意保険基準でも入通院慰謝料算定表を用いますが、こちらは各保険会社によって内容が異なり、非公開です。自賠責基準では、「4200円×入通院日数」という計算式を用いて計算します。
入通院慰謝料が増額・減額される場合とは?
入通院慰謝料が増額されるのは、① やむを得ない事情で入通院を短縮した場合、② 手術で特に大きな苦痛を経験した場合、③ ギプスによる自宅療養期間や入院待機期間があった場合などが挙げられます。一方、入通院慰謝料が減額されるのは、① 通院頻度が低い場合② 整骨院に通院していた場合が挙げられます。