交通事故の通院日数と通院頻度は慰謝料に関わる?最低月1回は必要?
交通事故に遭い、病院へ通院・入院すると、入通院慰謝料を請求することができます。
この金額は通院日数や頻度によって決められるため、どれくらいの日数や頻度で病院に通えばいいのか悩まれる方も多いようです。
そこでこの記事では、
- 入通院慰謝料の金額を算出する方法
- 望ましい通院日数・通院頻度
- 通院日数が少ない場合の入通院慰謝料
について解説しています。
これから通院を始められる方はこの記事を参考にしてみてください。
基本|入通院慰謝料の計算方法は?
交通事故慰謝料の3つの金額基準とは?
入通院慰謝料の観点から適切な通院日数・通院頻度をご紹介する前に、入通院慰謝料の金額がどう決まるのかについて解説します。
実は入通院慰謝料には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの金額基準があり、それぞれで金額の決め方も異なります。
自賠責基準 | 被害者が受け取ることのできる、最低限度の金額基準。 計算式によって金額が決められる。 |
---|---|
任意保険基準 | 示談交渉で加害者側の保険会社が提示する金額。 各任意保険会社が定めた慰謝料算定表を見て金額を決める。 |
弁護士基準 | 示談交渉で被害者側の弁護士が提示する金額。 過去の判例をもとに定められた慰謝料算定表を見て金額を決める。 |
では、それぞれの基準でどのように金額が決められるのか、さらに詳しく解説していきます。
自賠責基準の入通院慰謝料の計算方法は?
自賠責基準では、入通院慰謝料の金額は以下の計算式で導き出されます。
4200円×入通院日数
入通院日数は、
- 入院日数+通院期間
- 入院日数+(実通院日数×2)
のうち少ない方を採用
この式を見てもわかる通り、実通院日数×2が通院期間の日数よりも多い場合、つまり通院頻度が2日に1回以上の場合は、入院日数と通院期間の日数が入通院慰謝料に影響します。
一方、通院頻度が2日に1回以下の場合は、入院日数と通院日数が入通院慰謝料に影響します。
任意保険・弁護士基準の入通院慰謝料は?
任意保険基準と弁護士基準の場合は、計算式ではなく「慰謝料算定表」という表を見て、金額を導き出します。
任意保険基準の金額は、各保険会社ごとに異なり非公開ですが、目安としては自賠責基準に少し上乗せした程度と言われています。参考にしてみてください。
弁護士基準の慰謝料算定表は、「赤い本」とも呼ばれる『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故センター東京支部編)に掲載されていますので、一部を抜粋してご紹介します。
なお、「赤い本」は図書館でも閲覧することができます。
1ヶ月 | 4ヶ月 | 7ヶ月 | |
---|---|---|---|
0カ月 | 19万円 | 67万円 | 97万円 |
1ヶ月 | 52万円 | 95万円 | 119万円 |
2ヶ月 | 83万円 | 119万円 | 139万円 |
3ヶ月 | 106万円 | 136万円 | 152万円 |
4か月 | 128万円 | 152万円 | 166万円 |
5ヶ月 | 145万円 | 165万円 | 175万円 |
以下略 | … | … | … |
(縦:入院月数、横:通院月数)
1ヶ月 | 4ヶ月 | 7ヶ月 | |
---|---|---|---|
0カ月 | 28万円 | 90万円 | 124万円 |
1ヶ月 | 77万円 | 130万円 | 157万円 |
2ヶ月 | 122万円 | 165万円 | 188万円 |
3ヶ月 | 162万円 | 196万円 | 217万円 |
4か月 | 199万円 | 226万円 | 244万円 |
5ヶ月 | 228万円 | 251万円 | 266万円 |
以下略 | … | … | … |
(縦:入院月数、横:通院月数)
この表からもわかる通り、任意保険基準や弁護士基準の場合は入院月数、通院月数が金額に影響することが分かります。
ただし、いくら通院月数が長くても、あまりに頻度が少ないと入通院慰謝料に悪影響が出ます。
そこで次の項からは、必要最低限度の通院回数と理想的な通院回数について解説していきます。
通院日数は最低月1回以上
交通事故で病院に通院される場合は、必ず月に1回以上通うようにしてください。
前回の通院から1ヶ月以上が経過してしまうと、もう通院は必要ないと判断され、入通院慰謝料の対象にならない可能性が高いです。
どんなに通院月数が多くても、1ヶ月半に1回の通院や2ヶ月に1回の通院などでは入通院慰謝料はもらえない可能性が高いということです。
通院日数が月10回未満だと減額の可能性も
入通院慰謝料の対象期間として認めてもらうためには、最低でも月に1回以上の通院が必要だとお伝えしました。
しかしこれはあくまでも最低限度の回数であり、望ましいのは月に10回以上の通院です。
通院回数が月に10回未満だと、示談交渉で加害者側が提示する金額(任意保険基準)が減額されてしまう可能性があるのです。
通院回数/月 | 減額の程度 |
---|---|
1~4 | 1/3~1/2に減額 |
5~9 | 1/2~2/3に減額 |
任意保険基準は、元々最低限度(自賠責基準)に近い低めの金額設定、つまり増額の余地がある金額になっています。
しかし、ここからさらに減額された金額を提示されてしまうと、増額交渉は一層厳しくなります。
そのため、通院回数は月10回以上が望ましいのです。
仕事や育児で通院日数が少なくなったら?
通院は最低月1回以上、理想は1月10回以上と言われても、実際には難しいということもあります。
特に働いている方や小さなお子さんがいらっしゃる方は、ご自分の都合だけではどうにもならないこともあるかと思います。
そうしたやむを得ない事情で通院日数が少なくなってしまった、通院や入院を早めに切り上げてしまった場合には、それを考慮して入通院慰謝料が増額される可能性があります。
ただしこれは弁護士基準で考えた場合のことです。また、こうした増額は、弁護士から加害者側の保険会社に交渉しなければ認められにくい傾向にあります。
仕事や育児でやむを得ず通院日数や通院期間などが少なくなった場合には、一度弁護士に問い合わせてみることをお勧めします。
まとめ|交通事故の入通院慰謝料と通院回数・頻度
ここまで、交通事故の入通院慰謝料と通院回数・通院頻度について解説してきました。要点をまとめると、以下のようになります。
まとめ
- 入通院慰謝料には3つの金額基準があり、それぞれ算出方法が違う
- 自賠責基準では、入院日数に加え、2日に1日以上の頻度で通院する場合は通院期間、2日に1回以下の頻度で通院する場合は通院日数が金額を左右する
- 任意保険基準・弁護士基準では通院月数と入院月数が金額を左右する
- 通院回数は最低月1回以上必要で、理想は月10回以上
- やむを得ない事情で通院回数・期間が少なくなった場合、弁護士に相談すると慰謝料が増える可能性がある
特に軽傷の方の場合は、通院の頻度が低くなりがちですので、この記事の内容をよく確認したうえで通院されることをお勧めします。
もちろん、通院の日数や回数はけがの状態や回復度にも左右されるものですので、医師の指示も仰ぎつつ、適切な治療を受けてください。
通院日数・頻度についてのQ&A
入通院慰謝料の3つの金額基準とは?
入通院慰謝料の金額には、① 弁護士基準、② 任意保険基準、③ 自賠責基準という3つの基準があります。弁護士基準は被害者が弁護士を立てた場合に、示談交渉で加害者側に対して提示する金額、任意保険基準は示談交渉で加害者側保険会社が提示してくる金額、自賠責基準は交通事故の被害者が最低限受け取ることのできる金額となります。
入通院慰謝料の計算方法は?
入通院慰謝料の計算方法は、何基準を用いるかによって異なります。弁護士基準を用いる場合は、「入通院慰謝料算定表」という表を使います。任意保険基準を用いる場合も「入通院慰謝料算定表」を使いますが、こちらの内容は各保険会社ごとに異なり非公開です。自賠責基準では、計算式を使って入通院慰謝料の金額を算出します。
通院日数は最低何日必要?
入通院慰謝料を得るためには、通院は最低月1回以上必要です。それより少ない場合は、入通院慰謝料がもらえない可能性があります。また、月1回以上通院していても、月10回未満であれば入通院慰謝料が減額される可能性があります。そのため、通院日数は最低でも月1回、理想は月10回以上ということになります。