【計算機】学生の交通事故慰謝料は?バイトを休んだら?留年したら?
交通事故に遭うと、どんな慰謝料や賠償金が請求できるのか、気になりますよね。特に、学生の方であれば、以下のような点が気になるかと思います。
交通事故のけがでアルバイトを休んだ場合、休業補償はもらえる?
入院などで留年した、内定を取り消された場合の賠償は?
この記事では、交通事故の慰謝料や賠償金の相場を簡単に計算できる計算機のご紹介と、学生の交通事故慰謝料に関する疑問にお答えしています。
学生の交通事故慰謝料|バイトや留年に関する疑問にお答え
交通事故の慰謝料の内訳は?
交通事故に遭うと、上の図のような慰謝料や賠償金を、加害者側に請求できます。
詳しい内容は次のようになっています。
交通事故の賠償金
入通院慰謝料 | 交通事故でけがをしたことで痛みや苦しみを感じたり、入通院によって時間や自由が奪われて不自由さを感じたり不利益をこうむったりしたことに対する補償。 |
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後遺障害慰謝料 | 後遺症が残ったことで今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償 |
死亡慰謝料 | 交通事故で死亡した被害者やその家族の精神的苦痛に対する補償 |
治療関係費 | 治療費、入院費、看護費など |
逸失利益 | 後遺障害が残らなければ得られるはずだった将来の収入に対する補償(後遺障害逸失利益)。もしくは交通事故によって死亡しなければ得られるはずだった将来の収入に対する補償(死亡逸失利益)。学生でも請求できる。 |
休業損害 | 交通事故による入通院で休業した間の収入に対する補償。学生でもアルバイトなどで収入がある場合には、請求できる。 |
これらの相場金額を簡単に確認できる「慰謝料計算機」は、次の章でご紹介しています。ご確認ください。
バイトを休んだ!休業補償はもらえる?
学生のアルバイトも、休業損害の対象になります。
そのため、交通事故によるけがでアルバイトを休まざるを得なかった場合には、休業中の収入を加害者側に請求することができます。
実際の事例を1つご紹介しておきます。
▼けがによりアルバイトができなくなった場合の事例
高校性(男・固定時22歳、後遺時脳機能障害等7級)につき、事故当時のアルバイト収入及び事故後進学した大学の同級生のアルバイト収入を参考に、月額6万2000円を基礎に、症状固定までの1113日間、229万円余を認めた(福岡地判平28.4.25 自保ジ1980・20)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
※症状固定:交通事故によるけがが、これ以上治療を続けても大幅には改善しないと判断されること
留年したら授業料や通学費は請求できる?
交通事故によるけがのために留年してしまう場合もあります。
この際、授業料や通学費が追加で必要になってしまったり、既に支払った授業料が無駄になってしまったりしますが、これは加害者側に請求することができます。
実際の事例をご紹介します。
▼事故のため留年し、授業料とアパート賃借代を請求した事例
事故のため1年間留年した大学生につき、学費97案円余及び1年分のアパート賃借料55万円余を認めた(岡山地判平9.5.29 交民30・3・796)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
▼けがのため無駄になった大学授業料を請求した事例
(略)大学生(男・事故時33歳)につき、秋学期の欠席はやむを得ないとし、支払った大学授業料83万円余を認めた(東京地判平22.10.13 交民43・5・1287)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
内定取り消し、就職遅れ…賠償請求できる?
交通事故によるけがのために、内定が取り消されたり、就職の時期が遅れたりすることもあります。それによって得られなくなった収入は、休業損害として加害者側に請求できる場合があります。
実際の事例をご紹介します。
▼事故により内定を取り消された場合の事例
就職が内定していた修士課程後期在学生(男・事故時27歳)につき、事故により就職内定が取り消され症状固定まで就業できなかった場合に、就職予定日から症状固定まで2年6カ月余の間、就職内定先からの回答による給与推定額を基礎に、955万円余を認めた(名古屋地判平14.9.20 交民35・5・1225)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
▼事故により就労が遅れた場合の事例
専門学生(男・事故時18歳、右目失明・外貌醜状等で併合5級)につき、事故がなければ翌々年4月から就労開始予定であったとして、賃セ男性高専短大卒20歳から24歳平均を基礎に、就労開始予定時から症状固定までの約40月分、989万円余を認めた(大阪地判平24.7.30 交民45・4・933)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
学生でも逸失利益を請求できる?
逸失利益は、学生でも請求することができます。
ただしこの逸失利益は、実際に社会人として働きだしてから定年(67歳)までの間を対象とするので、学生である間は対象期間外となります。
▼中学生の逸失利益の事例
中学生(男・固定時15歳)の左肩関節機能障害(10級10号)につき、進学した高校を1年生時に退学したが、その後通信制の高校に入学し卒業見込みであること、若年であり将来の職業も具体的に定まっていないことなどを考慮し、賃セ男性学歴計全年齢平均529万8200円を基礎に、19歳から67歳まで48年間認めた(大阪地判25.1.24 交民46・1・103)
出典:『損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
計算機で簡単確認|学生の交通事故慰謝料
慰謝料計算機はこちら
では、交通事故の賠償金の内訳とよくある疑問について確認したところで、賠償金額の相場を簡単に確認できる「慰謝料計算機」をご紹介します。
こちらの計算機では、いくつかの項目を入力していただきます。
基本的には年齢や実通院日数など簡単な項目ですが、「後遺障害等級」と「事故前の年収」についてはどうすればいいの?と思うかもしれません。
ですので、これらについて解説しておきます。
なお、慰謝料計算機で算出される金額に関しては、以下の点にご注意ください。
- この計算機で算出できる金額は、示談交渉で被害者側弁護士が提示する金額です。加害者側からはもっと低い金額が提示されます。
- この計算機では、留年・内定取り消し、就職遅れによる損害は算出できません。
- その他細かい事情を反映したより正確な相場金額を知りたい場合は、弁護士に問い合わせることをお勧めします。
実際の計算方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
後遺障害等級・事故前の年収はどう入力する?
後遺障害等級とは
後遺障害等級とは、交通事故で後遺症が残った場合に、その症状や程度に応じて付けられる等級のことです。ですので、後遺症が残らなかった場合には、ここは「無等級」で構いません。
後遺障害等級は、損害保険料率算出機構の審査を経て認定されます。
まだ審査を受けていない、審査結果が出ていないという場合でも、後遺症の種類から等級を予想することはできます。こちらを参考に、該当しそうな等級を入力してみてください。
事故前の年収とは
事故前の年収は、休業損害と逸失利益を計算するために必要です。
まず、休業損害を計算する場合についてご説明します。
休業損害を計算する場合
学生の方が請求する休業損害は、アルバイトを休業した分の損害かと思います。そのため、休業損害を計算する場合、「事故前の年収」欄にはアルバイトでの年収を入力してください。
次に逸失利益を計算する場合についてご説明します。
逸失利益を計算する場合
逸失利益を計算する場合には、年収は以下のようにご入力ください。
・高校生*¹▶497万円
・大学生*²▶男性615万円/女性463万円
*¹ 大学進学の可能性が高かった場合、大学生の場合をご入力ください。
*² 大学生の場合は、年齢も卒業年齢に入力しなおしてください。
この入力方法で計算できるのは、あくまで一般的な逸失利益です。より正確な金額を確かめたい場合は、弁護士に問い合わせることをお勧めします。
学生の交通事故慰謝料のポイント
ここまで、学生の交通事故慰謝料の疑問にお答えし、慰謝料計算機のご案内をしてきました。
慰謝料に関する疑問や不安は軽減しましたか?
学費や就職に関する損害など、学生ならではの不安もたくさんあるかと思いますが、これらはきちんと加害者側に請求することができます。
しっかりと確認して、まずは治療に専念し、その後加害者側に請求していきましょう。
学生の交通事故慰謝料についてのQ&A
学生でもバイトを休んだら休業損害はもらえる?
学生の方であっても、バイトをして収入を得ていたのであれば、休業損害を請求することができます。実際の事例として、月額6万2000円として、合計229万円の休業損害が認められた事例があります。
内定取り消しや就職遅れで慰謝料請求できる?
交通事故によるけがが原因で内定を取り消されたり、就職が遅れたりした場合、それによって得られなくなった収入を休業損害として請求することができます。実際、内定を取り消されてから症状固定までの2年6ヶ月に対して955万円が認められた事例もあります。
学生でも逸失利益を請求できる?
まだ社会人として働いていない学生の方でも、後遺障害が残れば逸失利益を請求することができます。この場合、実際に働き始めると考えられる年齢~67歳までの間に対して逸失利益が支払われます。実際の事例でも、中学生に対して後遺障害逸失利益が認められたものがあります。