交通事故慰謝料の計算|後遺障害9級の慰謝料は3通り?逸失利益とは?
「交通事故の慰謝料を計算したい」という方に向けて、後遺障害9級をメインに解説していきます。
慰謝料には2種類ありますが、この記事の主なテーマは後遺障害慰謝料です。
2種類の慰謝料の違いから確認しましょう。
<① 入通院慰謝料>
交通事故の被害により、入院や通院治療を受けた「精神的な苦痛」に対して支払われます。
<② 後遺障害慰謝料>
「後遺障害」が残ったことで受けた精神的な苦痛に対して支払われます。
被害者の方の多くは、交通事故にあってから病院に一度は通院されているかと思います。
なので、交通事故の被害者が原則的に受けとるのが「入通院慰謝料」です。
「後遺障害慰謝料」は、後遺障害認定された場合にのみ請求が可能です。
入院や通院に関する「入通院慰謝料」については、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」でわかりやすくご紹介しています。
それでは、後遺障害9級の後遺障害慰謝料をみていきましょう!
後遺障害9級の損害賠償金=慰謝料?
慰謝料は損害賠償の一部
後遺障害の慰謝料というのは、被害者が受けとれる金額の一部にすぎません。
後遺障害慰謝料のほかに受けとれる金額の内訳をみてみましょう。
内訳 | 具体例や計算式 |
---|---|
治療費 | 治療費用(投薬料・手術費用) 通院のための交通費 診断書作成費用 |
看護料 | 2,050円/日 |
入通院慰謝料 | 4,200円/日 |
休業損害 | 5,700円/日 |
その他 | 将来介護費、学費など |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級により異なる 後遺障害9級:245万円 逸失利益と併せて上限:616万円 |
逸失利益 | 交通事故前の収入を元に算定 後遺障害慰謝料と併せて上限:616万円 |
後遺障害9級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」になります。
そして、最終的に受けとるお金として「治療費」や、人によっては「看護料」「休業損害」などが別途支払われます。
後遺障害慰謝料の相場は?
後遺障害慰謝料を計算する時には、計算式は使いません。
それは後遺障害等級によって慰謝料の金額は目安が設定されているからです。
自賠責基準 | 任意保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
245万円 | 300万円 | 690万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
この3つの金額は、すべて後遺障害9級の後遺障害慰謝料です。
それぞれの基準について調査してみました。
弁護士基準
裁判で使われる基準です。また弁護士に依頼した時に、弁護士が交渉で用いる基準になります。
最も後遺障害慰謝料の相場が高いものです。
任意保険の基準
相手方の「任意保険会社」の基準です。加入しているかは加害者に確認が必要です。慰謝料の相場は以前は公開されていましたが、今は各保険会社で独自に設定されており、非公開になっています。
これまでの事例から、自賠責保険の基準を少し上回る程度と言われています。
自賠責保険の基準
相手方の「自賠責保険会社」の基準です。車の運転者は全員加入義務のある保険ですので、事故の相手が自動車であった場合は、この基準は必ず適用を受けることができます。被害者救済が目的なので、交通事故被害者のセーフティネットのようなイメージです。しかし、最低限の補償になるので金額は低いです。
相場は決まっていますが、個別の理由を加味して増減はありえるようです。
これまでに相場より増額された事件の背景は次の通りです。
- 交通事故の悪質性(飲酒運転、スピード超過など)
- 加害者が現場から逃走している
- 加害者の言っていることが不合理で、おかしい
逸失利益は「失われた未来のお金」
後遺障害9級の補償として、逸失利益も相手方に請求可能です。
「逸失利益」は後遺障害慰謝料とは別物です。
逸失利益の計算式は2つあり、被害者の年齢によって適切な方を使います。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
被害者が18歳未満の未就労者であれば、式が以下のように変わります。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
計算式の通り、逸失利益の相場というものは出すことができないものです。
項目を詳しく見てみましょう。
基礎収入 | 交通事故前の被害者の収入 |
---|---|
労働能力喪失率* | 35% |
就労可能年数 | 67ー(症状固定時の年齢) ※18歳から67歳までを就労可能な年齢と考える |
*後遺障害等級ごとに異なる、9級の場合は35%
被害者の収入や年齢など個別の要素が計算に使われますので、後遺障害9級だったら逸失利益はこれくらい、という相場はないと考えたほうがよさそうです。
後遺障害9級で受けとるお金は?
後遺障害9級で補償されるものは「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」とわかりました。
実際にサンプルを計算してみましょう。
- 症状固定時:21歳
- 交通事故にあう前の収入:370万円
- 認定等級:後遺障害9級
- 被害者に過失なし
370万円 ✖ 0.35 ✖17.880=2,315万円
逸失利益は2,315万円となります。
後遺障害慰謝料は、3つの基準により違います。
現在は任意保険の基準は明らかにされていませんので、自賠責保険の基準と弁護士基準で比べましょう。
弁護士基準 | 自賠責基準 | |
---|---|---|
逸失利益 | 2,315万円 | |
後遺障害慰謝料 | 690万円 | 245万円 |
合計 | 3,005万円 | 2,560万円 (上限:616万円) |
※すべて基準通り支払われた場合
このように差が出ます。
また、気を付けたいのが「逸失利益」がきちんと認められるかということです。
逸失利益の計算に使った労働能力喪失率・就労可能年数については、相手方の保険会社と意見が合いにくい項目だそうです。提案内容は、もしかすると基準よりも低く設定されているかもしれません。
計算の仕組みが分かっていれば、提案内容の精査もしやすくなりますね。
【注意】自賠責保険の基準には慰謝料の上限がある
自賠責保険の基準には、支払い金額の上限があります。
先ほどの比較ですと、自賠責保険の基準では2,560万円とでましたが、実際には616万円までしか支払われません。
不足分については加害者の任意保険会社が支払うことになります。
任意保険に加入していなければ、被害者本人に請求することになります。
調べてみると、被害者本人に支払い能力がなく、なかなかスムーズに損害賠償金を受け取れない被害者も多くいるようです。
そんな時には、被害者自身が加入している保険(例:人身傷害補償保険、無保険車傷害保険など)を使うことも考えに入れなくてはいけません。
後遺障害9級ってどんな後遺障害?認定のポイントは?
後遺障害9級を網羅!「早見表」あり
後遺障害9級の内容を調査してみた結果をまとめました。
内容 | |
---|---|
1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの |
3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
5号 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
6号 | 咀しゃく及び言語の機能に障害を残すもの |
7号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度にったもの |
8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの |
10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの |
13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
14号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの |
16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
17号 | 生殖器に著しい障害を残すもの |
後遺障害は1級から14級までありますが、9級は最も〇号の数が多い等級です。
後遺障害9級での認定を目指すなら、その内容をしっかりチェックし、自身の身体に残った後遺障害を正しく主張していきましょう。
あなたの慰謝料を教えてくれる「慰謝料計算機」
「慰謝料計算機」は慰謝料はもちろん、逸失利益も計算可能です。
では実際に、あなたの慰謝料・逸失利益の見込みをチェックしましょう!
この慰謝料計算機で算定した金額のほか、治療費や手術費用、入院雑費や通院交通費は別途請求するものです。
ただし、計算結果は弁護士基準の金額であることは念頭においてください。
保険会社が弁護士基準で提案してくれることはほぼありませんし、弁護士抜きで「弁護士基準」を受け入れることもないそうです。
弁護士に依頼した場合の、という金額になります。
まとめ
後遺障害9級の「後遺障害慰謝料」についてまとめます。
- 後遺障害等級ごとに目安となる「後遺障害慰謝料」の金額が決まっている
- 後遺障害9級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」がある
- 後遺障害9級の慰謝料は3基準ごとに違い、弁護士基準で690万円、自賠責保険の基準だと245万円になる。
後遺障害9級で受けとれるお金は後遺障害慰謝料だけではありません。また、後遺障害慰謝料は計算ではなく、大まかな基準にのっとって金額が決められるものです。後遺障害等級が一つ違うだけで、金額に与える影響は大きいですね。
後遺障害9級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害9級の慰謝料相場は?
後遺障害慰謝料の金額は、算定する基準によって違います。自賠責保険の基準:245万円/任意保険の基準:300万円(旧統一基準)/弁護士基準:690万円です。任意保険基準は、保険会社が独自に設定しており、詳細は非公開となっています。以前公開されていた「旧基準」でのご紹介です。相手方から金額の提案を受ける時には、自賠責保険の基準または任意保険の基準に近い金額となることが多いです。
後遺障害9級の逸失利益の計算方法は?
計算式は<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。ちなみに、被害者が18歳未満・未就労の場合は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数>と式が変わるので注意が必要です。後遺障害9級の場合、労働能力喪失率は35%が目安です。
後遺障害9級ってどんな等級?
9級は1号~17号まであります。視力低下/視野障害/両まぶたの著しい欠損/鼻を欠損し機能に著しい障害/咀しゃくおよび言語機能に障害を残すもの/聴力低下や1耳の聴力を失ったもの/神経系統の機能又は精神の障害、あるいは胸腹部臓器の機能障害で仕事に相当な制限がかかるもの/手指・足指の用を廃したもの/外貌に相当程度の醜状/生殖器の著しい障害、が該当します。詳しい定義は下記より確認してください。
慰謝料の計算結果がすぐに分かる方法は?
交通事故の慰謝料計算機が便利です。後遺障害慰謝料だけでなく、入通院慰謝料や後遺障害逸失利益も一度に分かります。算定結果は慰謝料相場の最も高い弁護士基準に基づいているから、保険会社からの提案金額との比較にも使えます。