交通事故慰謝料の計算|後遺障害8級なら830万円?324万円?
交通事故の慰謝料はいったいどれくらいの金額になるのだろう?
慰謝料の計算は、被害者の方の生活にかかわる大事なポイントです。
今回は後遺障害8級の慰謝料計算をメインテーマにとりあげます。
後遺障害8級の慰謝料についてまずお伝えしたいことは、慰謝料が2種類あることです。
それは次のように、① 入通院慰謝料と② 後遺障害慰謝料に分かれています。
<① 入通院慰謝料>
入院や通院治療を受けた「精神的な苦痛」に対して支払われます。
<② 後遺障害慰謝料>
「後遺障害」が残ったことで受けた精神的な苦痛に対して支払われます。
入院や通院などの治療中に受ける精神的な苦痛を入通院慰謝料と呼んでいます。
そして、治療を継続しても完治せずに後遺症が残り後遺障害が認定されたとします。そこで後遺障害により受ける精神的苦痛を後遺障害慰謝料としています。
この記事では主に後遺障害8級の「後遺障害慰謝料」についてまとめています。
入院や通院に関する「入通院慰謝料」は、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」でわかりやすくご紹介しています。
後遺障害8級で受けとれるお金は慰謝料だけ?
後遺障害に対する金銭的補償
後遺障害8級に対する保険金は後遺障害慰謝料と逸失利益で構成されています。
「後遺障害8級に対する保険金」と言った理由は、以下のイラストを見ればわかりやすいです。
後遺障害8級に対する保険金というのは、中央部の明るい青の部分に当たります。
赤色の部分は治療中に発生しているもので、先ほど挙げた「入通院慰謝料」もこの中に含まれていますね。
その他にも、実際にかかった治療費や、休業補償(会社を休まなくてはいけなくなったことへの補償)なども損害賠償金の対象です。
赤色の部分は後遺障害があっても、なくても支払われるお金なのです。
逸失利益というのは、後遺障害が残ったことで「本来得られるはずの将来の収入の減少分」を言います。
例えば、後遺障害によって転職を余儀なくされ、収入が減ってしまった…。この補償を「逸失利益」とよんでいます。
後遺障害慰謝料の金額は3つある!?
後遺障害等級に応じて目安の金額が定められています。
後遺障害等級は1~14級まで分かれていて、数字が小さいほど障害の程度が重く、後遺障害慰謝料の金額も高く設定されています。
後遺障害慰謝料は計算式があるわけではないということですね。
具体的に後遺障害8級の後遺障害慰謝料をみてみましょう。
自賠責基準 | 任意保険の基準* | 弁護士基準 |
---|---|---|
324万円 | 400万円 | 830万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
調べてみると3つの金額が出てきました。
基準によって後遺障害慰謝料の金額が変わっているようです。
3つの基準の概要をまとめます。
自賠責保険の基準 |
---|
加害者側の自賠責保険会社が慰謝料算定に用いる基準
自動車の運転者に加入の義務がある保険なので、事故の加害者が自動車であれば、被害者は必ず自賠責保険からの保険金対象となる |
任意保険の基準 |
加害者側の任意保険会社が慰謝料算定に用いる自社基準
自賠責保険との違いは義務加入ではないので、加害者の加入有無によって保険金を受け取れるかが変わる |
弁護士基準 |
弁護士が交渉時に用いる、または裁判所で採用されている基準
被害者が弁護士に依頼したら、弁護士基準をもとにした交渉が始まる 3つの基準の中で最も慰謝料の相場が高くなる |
同じ後遺障害等級ではありますが、算定するのが「誰か」によって慰謝料の金額は変わってしまうのです。
ちなみに、任意保険の基準は今は公にはされていません。以前は一律の基準がありましたが、今は各保険会社に任せられており、金額は非公開とされています。
【交通事故慰謝料】自賠責保険の基準で819万円という説
後遺障害8級の後遺障害慰謝料を調べていると、「自賠責保険の基準なら819万円」という金額もみられました。
先ほど自賠責保険の基準なら「324万円」と解説しましたが、どちらが真実なのか…?
結論から言うと、後遺障害8級の後遺障害慰謝料は324万円です。
819万円というのは、自賠責保険の基準による「後遺障害8級への保険金」です。
つまり逸失利益も含まれている金額なのです。
厳密に後遺障害慰謝料だけの金額は、324万円ということになります。
819万円という金額に逸失利益が別途支払われるわけではありませんので、誤解しないようにしましょう!
交通事故の逸失利益に相場はある!?
逸失利益には相場はありません。
これは逸失利益の計算式をみれば一目瞭然です。計算式は2つありますので見てみましょう。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
被害者が18歳未満の未就労者であれば、式が以下のように変わります。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
逸失利益を計算するにはこのような項目が必要になります。
具体的にチェックしていきましょう。
基礎収入 | 交通事故にあう前の被害者の収入(月収) |
---|---|
労働能力喪失率* | 45% |
就労可能年数 | 67ー(症状固定時の年齢) ※18歳から67歳までを就労可能な年齢と考える |
*後遺障害等級ごとに異なる、8級の場合は45%
被害者の収入や、被害者の年齢などが計算に関連します。
ですから「後遺障害8級」であっても、逸失利益は個人によって変わりやすく、相場はないのです。
年齢別のライプニッツ係数は「自動車総合安全情報ホームページ」で公開中の表を活用すると便利です。
後遺障害8級の基礎知識!こんな症状が該当します
後遺障害8級の内容を徹底調査
後遺障害8級はどんな症状で認定されるものかをみていきます。
内容 | |
---|---|
1号 | 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの |
2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
3号 | 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの |
4号 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの |
5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
8号 | 1上肢に偽関節を残すもの |
9号 | 1下肢に偽関節を残すもの |
10号 | 1足の足指の全部を失ったもの |
眼や脊柱の運動障害のほかは、手指の後遺障害が目立ちます。
そこで手指の後遺障害について、もう少し詳しく調べてみました。
【検証】後遺障害8級の手指・関節の認定基準
手指、関節などの後遺障害が多いのが8級です。
8級に限らず大事なことは、「自分の身体に残る後遺障害」を正しく理解することと、いったい何級に該当するのかを把握することです。
なぜなら、後遺障害等級の認定申請をし、その結果が返ってきても必ずしも適正な認定等級であるかは分からないからです。
本来は8級に相当するはずが、10級だった…こんなことが起こっているかもしれず、8級の内容をきちんと知っておかないと気づけません。
そこで細かい認定基準についても見てみましょう。
手指を「失う」とは
欠損障害に該当するもので、次のように定義されています。
- ① 手指の中手骨又は基節骨で切断したもの
- ② 近位指節間関節(おや指は指節間関節)で基節骨と中節骨とを離断したもの
- 「切断」→物理的に切り離されていること
- 「離断」→骨に傷はないけれども関節が外れてしまっていること
ひとくちに「失う」と言っても、基準はひとつではありません。
手指の「用を廃する」とは
機能障害に該当します。
- ① 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
- ② 中手指節関節、近位指節間関節、指節間関節(おや指)の可動域が、後遺障害のない方の指の可動域角度の2分の1以下
- ③ 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失
曲げづらさだけでなく、深部感覚・表在感覚の喪失も該当する可能性があります。
関節の「用を廃する」とは
- ① 関節がまったく動かない
- ② 後遺障害のない関節と比べ可動域が10分の1程度以下のもの
いずれかに該当するものを「関節の用を廃する」といいます。
偽関節(ぎかんせつ)とは
骨本来の持つ「くっつこうとする性質」が止まり、本来関節ではないところが関節のようになってしまうこと
異常な動きがみられる
本来は関節でないところが動くようになってしまいます。
重篤な障害の一つとされています。
【交通事故の慰謝料】は「慰謝料計算機」でラクラク計算
慰謝料計算機は便利で簡単に使える
後遺障害慰謝料や逸失利益については、計算が少し複雑です。
また、最終的に受けとるお金の中には休業損害や、入院・通院にかかる「入通院慰謝料」も含まれています。
それらを一度に計算出来たら、楽なのに…。そこでおすすめするのが「慰謝料計算機」です。
※治療や手術費用、入院雑費や通院交通費は別途請求できます
この計算結果は弁護士基準に基づいています。実際に相手方の保険会社から提案を受ける場合には、もっと低い金額になる可能性が高くなります。
また、弁護士による交渉時の「基準」になりますので、最終的には増減する可能性があります。
まとめ
後遺障害8級の後遺障害慰謝料を特集してきました。
この記事で分かったことをまとめると
- 「後遺障害慰謝料」の金額は後遺障害等級ごとに一定の「基準」が決まっている
- 後遺障害8級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」に分けられる
- 後遺障害8級の慰謝料は3基準ごとに違い、弁護士基準で830万円、自賠責保険の基準だと324万円になる。
後遺障害8級は労働能力喪失率が45%と生活への不自由が大きいものです。適正な補償(慰謝料)を受け取り、社会復帰の一歩を踏み出しましょう!
後遺障害8級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害8級の慰謝料相場は?
後遺障害慰謝料の金額は、算定する基準によって違います。自賠責保険の基準:324万円/任意保険の基準:400万円(旧統一基準)/弁護士基準:830万円です。任意保険基準は、保険会社が独自に設定しており、詳細は非公開となっています。以前公開されていた「旧基準」でのご紹介です。
後遺障害8級の逸失利益の計算方法は?
計算式は<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。ちなみに、被害者が18歳未満・未就労の場合は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数>とライプニッツ係数の求め方が変わるので注意が必要です。後遺障害8級の場合、労働能力喪失率は45%が目安です。
後遺障害8級ってどんな等級?
8級は1号~10号まであります。片目の失明(他目も視力低下)/脊柱の運動障害/複数の指を失ったまたは用を廃したもの/1下肢の短縮/1上肢の肩・肘・手関節いずれかの用を廃したもの/1下肢の股・膝・足関節のいずれかの用を廃したもの/1上肢または1下肢に偽関節があるもの/1足の足指の全部を失ったもの、が該当します。
手指の用を廃するとはどういう意味ですか?
機能障害ともいわれます。手指に関しては、① 末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの/② 中手指節関節、近位指節間関節、指節間関節(おや指)の可動域が健康な指の可動域角度の2分の1以下/③ 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失、の状態です。曲げづらさ、感覚喪失などが該当する可能性があります。
慰謝料計算が難しくてわからないときは?
慰謝料計算機をおすすめします。計算に必要な情報を入力するだけだから、使い方はとても簡単です。自動計算ツールの「慰謝料計算機」なら、後遺障害慰謝料以外にも、「入通院慰謝料」や「休業損害」、「後遺障害逸失利益」が一度の計算でわかります。