交通事故慰謝料の計算|後遺障害6級はいくら?症状・認定基準も解説
交通事故の慰謝料計算で知っておくべきポイントをまとめました。
- 慰謝料の仕組み、相場
- 後遺障害6級の症状
- 後遺障害6級の判例
- あなたの慰謝料がわかる慰謝料計算機の紹介
この記事を読めば後遺障害6級の基本情報がおさえられます!
後遺障害6級の慰謝料計算をする前にお伝えしたいのが「交通事故の損害賠償における慰謝料はひとつではない」ということです。
2つの慰謝料
- ① 入通院慰謝料
- ② 後遺障害慰謝料
後遺障害6級の慰謝料は<2つ>に分けることができます。
- ① 入通院慰謝料は、入院・通院の精神的苦痛に対して支払われるものです。
- ② 後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことによる精神的苦痛に対して支払われます。
交通事故で負った怪我は、入院・通院をしながら治療して完治を目指します。ですから、入通院慰謝料は交通事故の被害者であればほぼ対象となります。しかし、後遺障害慰謝料は後遺障害が残った場合のみ損害賠償請求が可能ですので、すべての被害者が受けとれるわけではありません。
この記事は、「後遺障害慰謝料」に特化した記事です。
「入通院慰謝料」については、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」をお役立てください。
後遺障害6級|後遺障害慰謝料は498万円と1180万円の人がいる?
金額は計算式ではなく〇〇で決まる!
後遺障害慰謝料の金額は、計算では出せません。
後遺障害等級でほぼ決まります。
後遺障害6級というのは、後遺障害等級の一つです。
等級は1級~14級まであり、数字が小さいほど後遺障害の程度は重くなります。
後遺障害慰謝料は、その等級ごとに一定の基準額が設定されているのです。
金額は以下の通りです。
自賠責基準 | 任意保険の基準* | 弁護士基準 |
---|---|---|
498万円 | 600万円 | 1,180万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
後遺障害慰謝料の金額は一つではないようです。
(1)自賠責保険の基準
(2)任意保険の基準
(3)弁護士基準
この3つがあり、それぞれの基準で金額はバラバラです。
3基準の違いは誰が用いる基準かということです。
まずは(1)自賠責保険の基準から解説します。
(1)自賠責保険の基準
自賠責保険の基準とは、相手方が加入している自賠責保険会社が慰謝料を算定する時の基準です。
自賠責保険とは、自動車の運転者が全員加入(義務)している保険です。
3つの基準の中では慰謝料の相場は最も低くなります。
(2)任意保険の基準
任意保険の基準は、相手方が加入している任意保険会社が慰謝料を算定する時の基準です。
以前は基準が公開されていましたが、今は非公開となり、各保険会社が独自に設定しています。
自賠責保険の基準よりも少し高い金額設定になることが多いようです。
(3)弁護士基準
弁護士基準は、依頼を受けた弁護士が相手方と示談交渉をする際に用いる基準です。
裁判所でも使われている公正な基準でもあり、最も慰謝料相場も高くなります。
しかし、この金額で相手方から提案を受けることはほぼないようです。
もし今、相手方から示談金・慰謝料の提示を受けているなら、自賠責保険の基準や任意保険の基準に基づいている可能性が高いです。
498万円と1,180万円、もらえる人の違いは?
自賠責保険の基準で示談を結ぶ人=498万円
弁護士に交渉を依頼する人=1,180万円
基準額はあくまで「基準」なので、交通事故の内容や被害者の怪我の状況、置かれている立場によって増減することはあります。
ですから、弁護士に依頼した人全員が1,180万円と決まっているわけではありませんので、注意が必要です。
【検証】自賠責保険の基準で1,296万円もらえるらしい…?
1,296万円というのは「後遺障害6級」への保険金全体のことです。
保険金は後遺障害慰謝料と逸失利益から構成されています。
だから、後遺障害慰謝料「だけ」で1,296万円もらえるというのは正確ではありません。
後遺障害6級に認定されると、後遺障害のほかに逸失利益も損害賠償として求めることができます。
逸失利益は、後遺障害によって
- 仕事を続けられずに得られるはずの収入がなくなってしまった
- 就ける仕事の範囲が狭くなり減収が生じてしまった
- 職務内容に制限がかかり将来の昇進・昇給が困難になった
このように、後遺障害がなければ本来得られたはずの「失われた利益」のことをいいます。
1,296万円というのは後遺障害慰謝料と逸失利益の自賠責保険の基準による総額です。
一方で、弁護士基準では後遺障害慰謝料だけで1,180万円を基準としています。
逸失利益は後遺障害の内容にもよりますが、症状固定から67歳までの年数分認められる傾向にあります。
後遺障害慰謝料よりも逸失利益が上回ることも珍しくありません。
自賠責保険の基準における「1,296万円」には、逸失利益も含まれていることを覚えておきましょう。
後遺障害6級|逸失利益はどう計算する?
逸失利益の計算方法
逸失利益は基準額はなく、計算式で求めます。
後遺障害慰謝料は「等級」により基準がありましたが、逸失利益にはありません。計算式は次の通りです。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
被害者が18歳未満の未就労者の場合は下式を使います↓
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
実際に計算をするために、式の中身を詳しく調べてみました。
①基礎収入とは
基礎収入は交通事故にあう前に被害者が得ていた収入のことです。
②労働能力喪失率とは
労働能力喪失率は後遺障害で失われた労働能力の割合をさします。
喪失率は、後遺障害等級ごとの目安があります。
後遺障害6級なら67%となっており、労働能力は相当失われていると考えられます。
③就労可能年数
18歳から67歳までが就労可能年齢とされています。
<例>
- 症状固定時:25歳
- 就労可能年数:42年(67歳ー25歳=42年)
42年分の労働能力が失われたと考えます。
④ライプニッツ係数
中間利息控除ともいわれています。
なぜ控除されるのかを調査してみました!
逸失利益で5000万円が被害者に支払われることが決まった場合を例に考えてみます。
損害賠償は、一括で支払われることが原則です。
そして、その5000万円を資産運用の元手にしたり、金融機関に保管したりする人もいるでしょう。
特に、金融機関に預けた場合の利息となると、時間の経過と共に自然と利息が付きます。
損害賠償として受けとった5000万円が増えることになり、これは損害賠償の意味合いから外れてしまいます。
ですから将来利息などが付いて増える分を見通して、最初にあらかじめ控除するのが中間利息控除の考え方です。
計算では、年齢別のライプニッツ係数を用います。
逸失利益に基準額はない
逸失利益に相場や基準額はありません。
逸失利益の計算でもあったように、被害者の収入や年齢などで計算結果は変わります。
労働能力喪失率は後遺障害6級で67%という基準はありますが、あくまで基準になり、個々の事情によって増減されます。
逸失利益の相場というのは存在しないと思っておきましょう。
後遺障害6級|症状・認定基準をチェック!
後遺障害6級の気になる症状を知る
内容 | |
---|---|
1号 | 両目の視力が0.1以下になったもの |
2号 | 咀しゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの |
3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
5号 | 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの |
6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの |
視力や口腔機能、耳や脊柱、関節や手指など幅広い症状が後遺障害6級に該当します。
<後遺障害6級5号:脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの>について詳しく見てみましょう。
6級5号:脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
脊柱の変形や運動障害については最も重い後遺障害等級となります。
以下の表のように、脊柱の変形や運動障害は3等級に分類されています。
変形障害 | 運動障害 |
---|---|
著しい変形 (6級5号) |
著しい運動障害 (6級5号) |
中程度の変形 (8級相当) |
運動障害 (8級2号) |
変形 (11級7号) |
ー |
6級5号との違いは、著しいという程度にあります。
後遺障害認定の申請においては、著しい変形・著しい運動障害だと示すことで、8級・11級とは違い「6級」に該当することを主張していくこともポイントです。
著しい変形とは
まず第一に、X線写真(レントゲン)、CT画像、MRI画像などで脊椎の圧迫骨折などが確認できることが前提とされています。
脊柱は、背骨が柱のようにつらなっています。
変形の著しさは、後彎(こうわん)と側彎(そくわん)の程度によって判定します。
椎体数* | 前方椎体高の減少の程度 | 側彎度** |
---|---|---|
2個~ | 減少した全椎体の「後方椎体高」の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上を示す | ー |
1個~ | 減少した全椎体の「後方椎体高」の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの50%以上を示す | 50度以上 |
*椎体高が減少した個数
**測定方法:コブ法
たとえば、4個の前方椎体高が減少したとします。
このとき、前方椎体高が減少した<4個の後方椎体高の合計>が16センチメートル、減少後の前方椎体高の合計が10センチメートルだとしましょう。
その差は「6センチメートル」となっています。
減少した4個の前方椎体高は、本来は1個当たり4センチメートルであったとされ、発生した「6センチメートル」の差が上回っています。
この場合、6級5号(2個以上に著しい変形障害)が認められるでしょう。
検査結果で示すことはもちろん、具体的に「センチメートル」まで示すことが大事ですね。
著しい運動障害とは
脊柱の運動障害では脊椎の頸部と胸腰部に着目します。
変形障害と同様、画像検査の結果は重要であることが分かります。
頸部・胸腰部 |
---|
両方が硬直 |
前方椎体高の減少の程度 |
---|
頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等があり、X線写真などにより確認できるもの |
頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの |
後背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの |
これらが該当します。
運動障害については、「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」に従っておこなうことが大切です。
下記の厚生労働省の資料で確認できますよ。
慰謝料計算は自動で簡単な「慰謝料計算機」がおすすめ
後遺障害慰謝料の金額の目安は分かりましたが、逸失利益の計算は少し複雑です。
また、もらえるお金は後遺障害慰謝料だけではなく、入通院慰謝料や、交通事故で仕事を休んだことへの補償なども知りたいところ。
そんな人に使ってみてほしいのが「慰謝料計算機」です!
※治療や手術費用、入院雑費や通院交通費などの実費は別
慰謝料計算機での結果は弁護士基準になります。
弁護士に依頼するときの目安にもなりますし、もし今提案を受けている金額があるなら、比較してみると良いでしょう。
まとめ
後遺障害6級の後遺障害慰謝料と逸失利益の計算方法、そして認定基準をみてきました。
この記事でお伝えしたかった要点は
- 後遺障害慰謝料は一定の基準額があり、その基準額は後遺障害等級に応じる
- 後遺障害6級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」である
- 弁護士基準の後遺障害慰謝料は、依頼を受けた弁護士が交渉することで実現可能な基準である
- 等級認定には画像検査などの医学的データが必須である
後遺障害6級が日常生活に与える影響は非常に大きいものです。
慰謝料の金額も、裁判所や弁護士なら1,180万円にもなります。
適切な慰謝料の獲得は、生活の再スタートにも重要です!
後遺障害6級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害6級の慰謝料相場は?
後遺障害慰謝料の金額は、算定する基準によって違います。自賠責保険の基準:498万円/任意保険の基準:600万円(旧統一基準)/弁護士基準:1180万円です。任意保険基準の金額は、以前公開されていた統一基準です。現在は、各任意保険会社で設定され、非公開とされています。
後遺障害6級の逸失利益の計算方法は?
基本の計算式は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。被害者が18歳未満・未就労の場合は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数>と計算式が違うので注意しましょう。
後遺障害6級ってどんな等級?
6級は1号~8号まであります。両目の視力低下(0.1以下)/咀しゃく又は言語の機能に著しい障害/両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない/1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない/脊柱に著しい変形又は運動障害を残す/1上肢または1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの/1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったものが該当します。
脊柱の変形は後遺障害6級が最も重い?
後遺障害6級は、脊柱変形に関する後遺障害等級のなかで最も重い等級です。著しい変形:6級5号/中程度の変形:8級相当/変形:11級7号と区別されています。後遺障害認定を受けるには、X線写真(レントゲン)、CT画像、MRI画像などで脊椎の圧迫骨折などが確認できることが重要です。変形が著しいかは、① 椎体高がどれくらい減少したか、② 背骨の側彎度で判断されます。
後遺障害慰謝料以外のお金ももらえる?
もらえます。逸失利益・休業損害・入通院慰謝料などが請求できる可能性があります。受けとるお金の目安がすぐわかる「慰謝料計算機」なら、情報を入力するだけで簡単自動計算。スピーディに算定できるので、示談前には必須のツールです。