交通事故慰謝料の計算|後遺障害4級で何円?症状は?併合4級とは?
交通事故の慰謝料計算について「後遺障害4級」の特集記事です。
後遺障害4級の認定内容もとりあげています。
- 後遺障害4級の認定を受けた人
- 後遺障害4級認定を目指している人
ぜひ一度読んでみてください!
後遺障害4級の慰謝料について知識を深めることで、損害賠償全体が見えてきます。
被害者が損をしたり、泣き寝入りをしないでいい「目指したいゴール」を知っておきましょう!
慰謝料は一つではない
慰謝料とは「精神的苦痛」に対して支払われるものです。
後遺障害4級で受けとれる慰謝料は1つではありません。
(1)入通院慰謝料
(2)後遺障害慰謝料
2つに分けることができます。
入通院慰謝料は、怪我の治療のために入院・通院をしたという「精神的苦痛」に対して支払われるものです。
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったという「精神的苦痛」に対して支払われます。
2つはどんな精神的苦痛に対して支払われるのかが違います。
「入通院慰謝料」については、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」をお読みください。
この記事は、「後遺障害慰謝料」に注目した記事です。
後遺障害4級|後遺障害慰謝料は計算式ではなく「基準」で決まる?
後遺障害慰謝料は計算式がない?
後遺障害慰謝料は計算式では求められません。
一定の基準額がありますので、その基準を元に計算します。
目安になりますので、交通事故の背景や被害者に残った障害の程度などの個別事情で増減しうるものです。
後遺障害4級の「後遺障害慰謝料」は次の通りです。
自賠責基準 | 任意保険の基準* | 弁護士基準 |
---|---|---|
712万円 | 800万円 | 1,670万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
「後遺障害4級」という等級は同じですが、基準によって金額差が出ています。
最も後遺障害慰謝料の相場が高いのは「弁護士基準」であり、1,670万円となっています。
次に、この「基準」はどう使い分けられているのかを知っておきましょう。
①自賠責保険の基準
自賠責保険とは、自動車の運転者に加入の義務がある保険です。
交通事故の加害者側(相手方)の自賠責保険の基準となっています。
だから、相手方が交通事故の損害賠償(慰謝料など)を算定するときに使われる基準となっています。
自賠責保険は「交通事故被害者の救済」を目的としていますが、慰謝料の基準自体は3基準の中で最も低くなります。
②任意保険の基準
任意保険とは、自動車の運転者が任意で加入できる保険です。
こちらも、被害者ではなく加害者側(相手方)の任意保険による基準を使います。
以前は基準は公になっていましたが、今は非公開です。
調査した結果、自賠責保険の基準より少し高い基準と考えられています。
自賠責保険・任意保険の両方に加入している加害者の場合は、自賠責保険だけで賠償金を支払えない場合に任意保険を使って不足をカバーします。
加害者側の任意保険会社とやり取りをし、示談金や慰謝料の提案を受ける場合は、① ② いずれかの基準に基づいていると考えられます。
③弁護士基準
弁護士基準は、被害者から依頼を受けた弁護士が加害者側(相手方)と交渉する際に使う基準です。裁判所でも使われている適正な基準とされ、慰謝料の相場が3基準の中で最も高くなります。
「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という冊子(通称・赤い本)に記載されているので、誰でも知ることができます。
しかし、加害者側からは① ② の基準に基づいた提案がなされるので、弁護士基準での交渉をしたいなら弁護士に依頼することになります。
後遺障害4級の慰謝料「1,889万円説」はホント?
「後遺障害4級の後遺障害慰謝料、自賠責保険で1,889万円もらえると聞いたけど…」
このような意見を見かけたので、調査してみました。
自賠責保険の後遺障害慰謝料は712万円を基準が決められているのに、1,889万円という数字の根拠は?
実は、1,889万円という金額は自賠責保険の基準に基づく後遺障害4級の補償全体をさしていました。
後遺障害4級と認定を受けると、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」という2つについて、損害賠償請求が可能です。
この「逸失利益」との合計が1,889万円になります。
後遺障害慰謝料だけで1,889万円を受けとれるわけではありませんので、注意が必要です。
「逸失利益」については次章で詳しくお伝えします。
後遺障害4級|交通事故の「逸失利益」計算方法
逸失利益とは?計算方法は?
逸失利益とは
後遺障害がなければ得られていたはずの「失われてしまった将来の利益」のことです。
- 後遺障害によって転職せざるをえず減収となった
- 後遺障害によって将来の昇給が困難になった
- 後遺障害によって予定通りの進路がかなわず働くこともできない
個人によって多様なケースが考えられますね。
逸失利益は計算式にそって算定可能です。計算式は次の通りです。
なお、逸失利益を計算する時、原則として18歳から67歳までを働ける年齢(就労可能年齢)とみなします。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
下式は被害者が18歳未満の未就労者です。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
計算に使う項目の求め方を表にまとめました。
基礎収入 | 交通事故にあう以前の被害者の収入 |
---|---|
労働能力喪失率 | 4級:92% 後遺障害等級ごとに基準あり |
就労可能年数 | 67ー(被害者症状固定時の年齢)* |
ライプニッツ係数 | 就労可能年数による |
*原則であり職業により異なる
就労可能年齢67歳というのは原則であり、医師や税理士などの職業によっては延長して認められることもあります。
ライプニッツ係数とは?
中間利息控除ともいわれており、こちらの方がイメージしやすいかと思います。
<例>逸失利益を1000万円受けとった場合
金融機関に預ける
→時間の経過と共に利子がつき、1000万円から増額する
資産運用する
→元金となり、1000万円から増額する
1000万円は「逸失利益」として受けとりますが、その使い方は被害者・その近親者にゆだねられています。
しかし「1000万円」の損害が発生したから「1000万円」を受け取ったのであって、それ以上の金額に増やすことは、損害賠償金としては適切ではありません。
中間利息控除(ライプニッツ係数)は、このように将来増額することを想定して、増額分を事前に控除する目的があります。
【計算してみた】後遺障害4級の逸失利益
逸失利益
- 症状固定時:32歳
- 交通事故にあう前の収入:300万円
- 認定等級:後遺障害4級
就労可能年数は、67-32=35年となります。
就労可能年数35年にあたるライプニッツ係数は 16.374なので、計算式は次の通りです。
300万円 ✖ 0.92 ✖16.374=約4,519万円
逸失利益は約4,519万円となります。
▼まとめ
- 被害者の収入が高いほど
- 被害者の年齢が若いほど
- 後遺障害による労働能力喪失率が高いほど
逸失利益の金額は増える傾向にあります。
後遺障害4級|症状・認定基準をひと目で知りたい人へ
<等級表>後遺障害4級
内容 | |
---|---|
1号 | 両目の視力が0.06以下になったもの |
2号 | 咀しゃくおよび言語の機能に著しい障害を残すもの |
3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの |
4号 | 1上肢をひじ関節以上で失ったもの |
5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
リスフラン関節とは、足指の骨と足の甲の骨の間にある関節です。
足の構造全体の中心を担っている関節です。
後遺障害4級では両目の視力低下や口腔に関する障害、両耳の聴力の喪失など感覚に五感に関する重大な後遺障害が多く該当します。
また、ひじ・ひざ・手指・足指についても重篤な症状が目立ちます。
「併合」という後遺障害等級の考え方
後遺障害等級には「併合」という考え方があります。
系列の異なる複数の後遺障害が残った場合に、最も重い後遺障害等級に一定の等級が加算されます。
単独で「後遺障害4級」となる場合と、「併合4級」と認定される場合があります。
「併合」については、まず「1番重い後遺障害等級」を軸に考えると分かりやすいです。
場合ごとに分けてみます。
まず最も重い後遺障害等級が<1級~5級の場合>です。
次に重い等級 | |
---|---|
1~5級 | 最も重い等級 +3級 |
6~8級 | 最も重い等級 +2級 |
9~13級 | 最も重い等級 +1級 |
14級 | 最も重い等級に従う |
次に、最も重い後遺障害等級が<6~8級の場合>です。
次に重い等級 | |
---|---|
6~8級 | 最も重い等級 +2級 |
9~13級 | 最も重い等級 +1級 |
14級 | 最も重い等級に従う |
次に、最も重い後遺障害等級が<9~13級の場合>です。
次に重い等級 | |
---|---|
9~13級 | 最も重い等級 +1級 |
14級 | 最も重い等級に従う |
14級が複数ある場合は、併合しても14級のまま変わりません。
自動計算で交通事故の慰謝料が分かる「慰謝料計算機」
慰謝料計算機なら簡単にわかる
後遺障害4級の後遺障害慰謝料、逸失利益などの計算方法を解説してきました。
しかし、最終的に受けとるお金は、交通事故により仕事を休んだことへの補償(休業損害)、入通院慰謝料など他にもあります。
これらを一度に計算できる「慰謝料計算機」をご紹介します。情報を入力するだけで簡単に計算できるので、どれくらいのお金を受けとるのか見積もるのに便利です。
おおよそ受けとる目安が分かれば、示談提案された金額が適正か、不適正か判断しやすくなります。
この慰謝料計算機は「弁護士基準」に基づいているので、保険会社の結果とは異なる可能性が高い点は注意が必要です。
▼ポイント
計算結果に含まれないものもある
→入院費用、交通費、近親者の付き添い看護費、将来介護費、装具などの費用
こういった個別事案については計算機では算定ができません。
個別の事情で増減する可能性がある
→慰謝料計算機は原則の結果なので、増減する可能性は大いにあります。
まとめ
後遺障害4級について、後遺障害慰謝料と逸失利益を中心に解説してきました。
- 後遺障害慰謝料は計算ではなく一定の基準に基づいて算定されること
- 逸失利益は計算式があり、個別で計算結果が変わるので後遺障害4級ならこれくらい、という相場がないこと
- 後遺障害4級の内容
- 後遺障害等級の併合ルール
これらを押さえておくと、後遺障害4級で認定されたらどれくらいの損害賠償請求を求めていくことになるかが分かります。
また「併合4級」と認定されても、どんな後遺障害が併合されて4級になったか意味が分かるので安心ですね。
後遺障害4級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害4級の慰謝料はいくら?
後遺障害慰謝料は算定基準で変わります。自賠責保険の基準:712万円/任意保険の基準:800万円(旧統一基準)/弁護士基準:1670万円です。任意保険基準は、今は任意保険会社ごとに設定され、非公開とされています。
後遺障害4級の逸失利益の計算方法は?
基本の計算式は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。後遺障害4級の場合は、労働能力喪失率が「92%」なので「0.92」が労働能力喪失率となります。被害者が18歳未満・未就労の場合は、違う計算式を使って算定しますので、注意しましょう。
後遺障害4級ってどんな等級?
4級は1号~7号まであります。両目の視力低下(0.06以下)/咀しゃく又は言語機能に著しい障害/両耳の聴力を全く失ったもの/1上肢をひじ関節以上で失ったもの/1下肢をひざ関節以上で失ったもの/両手の手指の全部の用を廃したもの/足をリスフラン関節以上で失ったもの、が該当します。
後遺障害4級の慰謝料を簡単に計算する方法はある?
慰謝料の自動計算ツール「慰謝料計算機」がおすすめです。慰謝料計算機を使うことで、後遺障害慰謝料・逸失利益・休業損害・入通院慰謝料など、損害賠償金の多くを算出できます。受けとるお金の目安をすぐ知りたいなら必見です。