交通事故慰謝料の計算|後遺障害12級|12級13号認定なら必見!
交通事故の慰謝料がいくらになるのか…。計算結果は被害者にとって非常に重要な事項です。
▼慰謝料とは・・・
- ① 入通院慰謝料
- ② 後遺障害慰謝料
まずお知らせしたいのは、交通事故における慰謝料は2つ存在することです。
「入通院慰謝料」とは、怪我をしたことや怪我に伴い通院・入院を余儀なくされたという精神的苦痛への補償です。
「後遺障害慰謝料」とは、後遺障害を負ったことへの精神的苦痛に対する補償といえます。
まとめ
- 後遺障害の有無に左右されないのが入通院慰謝料
- 後遺障害認定されると追加の慰謝料として後遺障害慰謝料が支払われる
この記事は主に、後遺障害12級の後遺障害慰謝料についてまとめています。
入院や通院に関する「入通院慰謝料」は、関連記事「通院期間ごとの慰謝料」にて解説しています。
後遺障害12級でもらえるお金①後遺障害慰謝料
後遺障害12級とは?
後遺障害12級とはどんな症状・状態なのかを順番にみてみましょう。
内容 | |
---|---|
1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 | 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
4号 | 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの |
5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8号 | 長管骨に変形を残すもの |
9号 | 一手のこ指を失ったもの |
10号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
11号 | 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
12号 | 1足の第1の足指又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14号 | 外貌に醜状を残すもの |
後遺障害12級は、顔面の目・鼻の症状に加えて「外貌醜状」というひとめにつく部分に残る傷痕で認定される可能性がある等級です。
また、12級13号では局部に頑固な神経症状を残すものとされており、14級9号との違いは関心が高いようです。
慰謝料計算に「計算式」がない!?
後遺障害慰謝料は計算式で求めることはできません。
なぜなら、後遺障害等級ごとにおおよその基準が決められているからです。
以下に後遺障害12級での慰謝料をまとめました。
自賠責基準 | 任意保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
93万円 | 100万円* | 290万円 |
*以前の基準。現在は各保険会社ごとに異なる。
あくまで目安になるので、個別の事情から増額・減額されることはあり得ます。
増額ポイントとしては加害者側の悪質性があげられるでしょう。
実際の増額事例を調査してみえてきた結果をまとめました。
増額理由
- 飲酒運転
- 交通事故発生の後に加害者が逃走している
- 合理的でない主張を繰り返している
このような背景は慰謝料の増額につながる可能性もあるようです。
基準額からの増減はありつつも、おおむね後遺障害等級によって後遺障害慰謝料の金額が決まります。
だから計算式はナシといえます。
12級の後遺障害慰謝料で290万円もらえる人とは?
慰謝料の金額はそれぞれ基準ごとに違いますね。
自賠責保険の基準が最も低い93万円、任意保険の基準はちょうど100万円です。
一方の弁護士基準では290万円となり、3基準のうち最も金額は高いようです。
弁護士基準とは、弁護士が依頼を受けて相手方と交渉する時に基準にするものです。
ですから弁護士に依頼した人は、後遺障害慰謝料として290万円をもらえる可能性が上がります。
もちろん「基準」なので全員が290万円もらえるとは限りません。
自賠責保険の基準や任意保険の基準は、相手方から提案される金額です。ちなみに、弁護士に依頼をせずに「弁護士基準」を加害者側の保険会社に持ち出しても、なかなかとりあってもらえないようです。
後遺障害12級でもらえるお金②逸失利益
逸失利益を計算する方法
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数
被害者が18歳未満の未就労者であれば、式が以下のように変わります。
基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数
基礎収入 | 交通事故にあう前の被害者の収入 |
---|---|
労働能力喪失率* | 14% |
就労可能年数 | 67ー(症状固定時の年齢) |
*後遺障害等級ごとに異なる、12級の場合は14%
逸失利益は、後遺障害によって「失われてしまった将来の収入」のことをいいます。
後遺障害があることを理由に、
- 仕事を変えざるを得なくなり収入が減った
- できる業務範囲が限られ昇進が見込めなくなった
- 後遺障害によって働くことができなくなった
逸失利益とは、おおよそこんなイメージです。
計算する時には、18歳から67歳までを働ける年齢と考えます。
だから、就労可能年数は67歳から引き算をしています。
「あと何年分の収入に不利益が生じたか」を算出するのです。
ライプニッツ係数は、「中間利息控除」とも言われています。
なぜ利息が発生するのか?控除を受けるのか?を考えてみました。
利息の発生理由
損害賠償で受けとった逸失利益が将来的に増えていくことを見越して、あらかじめ増額分を引くという考え。
- 銀行に預けたりして利息が付く
- まとまったお金なので資金運用の元金にする
自然とお金が増えたり、お金を増やすための元金になることを想定して、増えるであろう分を引き算しています。
控除を受ける理由
逸失利益は交通事故の損害賠償です。被害者に対しては被害に相当する分のお金を支払うもので、言い換えれば被害額に相当する以上のお金を被害者が受けとることも認められてはいないのです。
だから、ライプニッツ係数は「いつ」受けとったかで変わってきます!
25歳の時に受けとったお金、50歳の時に受けとったお金、どちらが将来的に増えるか?
それは若い時に受けとった方が67歳までの時間が長いので、利息も多くなると考えるのが自然ですね。
だから若い時に逸失利益を受けとるほど、控除される割合(ライプニッツ係数)も大きくなります。
いくつか具体例をあげてみます。
年齢 | 就労可能年数 | ライプニッツ係数 |
---|---|---|
20 | 47 | 17.981 |
30 | 37 | 16.711 |
40 | 27 | 14.643 |
より細かいライプニッツ係数は下記のページで紹介されています。自分のライプニッツ係数もすぐわかりますよ。
【注意】12級13号「逸失利益計算」の落とし穴?
逸失利益の原則は労働能力の喪失(後遺障害による不利益)が67歳まで続くことにあります。
しかし、12級13号の場合は要注意です。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
---|
12級13号の神経症状については、労働能力喪失は5年から10年程度とされることが多いです。
ですから、ライプニッツ係数は被害者の年齢に関係なく定まります。
労働能力喪失期間 | 5年 | 10年 |
---|---|---|
ライプニッツ係数 | 4.329 | 7.722 |
交通事故前の年収が400万円の被害者を例に計算してみましょう。
労働能力喪失期間:5年
400万円 ✖ 0.14(12級の労働能力喪失率) ✖ 4.329 = 242万円
労働能力喪失期間:10年
400万円 ✖ 0.14(12級の労働能力喪失率) ✖ 7.722 = 432万円
被害者一人ひとりの状況を見ながら労働能力喪失期間が認定されますが、67歳まで認められるということはほとんどないようです。
ちなみに14級9号の神経症状も同じで、14級9号の場合は3年から5年程度の範囲で認定される傾向があるそうです。
12級13号 | 14級9号 |
---|---|
5~10年 | 3~5年 |
後遺障害12級13号と14級9号の違いは?
12級13号と14級9号の共通点
12級の中でも特に注目されやすいのは、「12級13号」のようです。
それは「12級13号」と「14級9号」の違いに関心が集まるからです!
交通事故で特に発生頻度の高いむちうちは、「しびれ」「痛み」などの神経症状が後遺障害として残る恐れが指摘されています。
そしてこのしびれや痛みは、「神経症状」として12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
先ほど紹介したように、後遺障害慰謝料は「等級」によってほとんど決まります。
「むちうち」においても12級13号か14級9号かで慰謝料もぐんと変わるのです。
2017年度に認定された後遺障害のうち、実に42.9%が精神・神経症状に関するものでした。
後遺障害等級別にみると、最も多い認定等級は14級で全体の56.85%を占めています。
次いで全体の17.55%を占めているのが12級です。
12級 | 14級 | |
---|---|---|
慰謝料* | 290万円 | 110万円 |
定義 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 局部に神経症状を残すもの |
全体に占める割合 | 17.55% | 56.85% |
*弁護士基準の金額
**損害保険料率算出機構の発表(https://www.giroj.or.jp/publication/outline_j/j_2018.pdf#view=fitV)を参考に作成
まとめるとこのようなイメージです。
定義では「頑固な」という表現の有無だけが違います。「頑固さ」とは何かを調べてみると、何が12級と14級を分けるのかが見えてきました。
【必読】後遺障害12級13号認定を目指すなら
傾向
- 12級:医学的な検査結果で神経症状の存在が示せる
- 14級:検査結果では明らかにできないが、神経症状があることが合理的に説明できる
後遺障害認定を受けるうえで大事なのは、MRIなどの画像診断で症状が分かることです。
通常、「痛み」や「しびれ」といった神経症状は外見上は分かりませんし、誰ともその感覚は共有できませんね。
ですが後遺障害に認定されるには、客観的にみて「症状があると認めてもらう」ことが大事なんです。
医学的な証明方法としては「神経学的検査」も有効です。
検査結果は医学的な証明になりますし、誰が見ても結果は同じなので客観性も十分です。
神経学的検査
- 深部腱反射検査
- 徒手筋力テスト(MMT)
- 感覚検査・知覚検査
- スパーリングテスト/ジャクソンテスト
検査結果を通して、痛みやしびれなどの神経症状を客観的に証明することが重要です。
「慰謝料計算機」で受けとれるお金をラクラク計算!
後遺障害12級に認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益が受けとれることが分かりました。しかし計算は結構手間がかかりますね。そこで紹介したいのが「慰謝料計算機」です。逸失利益も同時に分かるので便利ですよ。
慰謝料計算機をつかって出した金額のほか、実際にかかった治療費や通院交通費、入院費用などは別途受けとることが可能です。交通事故のために仕事を休まざるを得ず、収入が減ってしまった場合の休業補償も別で損害賠償することになります。
ただし、この慰謝料計算機は「弁護士基準」という最も相場が高い基準での計算結果です。相手方の保険会社からは、おそらく慰謝料計算機のような金額では提案してくれないかもしれません。
まとめ
後遺障害12級の後遺障害慰謝料について調査した結果をまとめます。
- 後遺障害慰謝料は等級ごとに基準額がある
- 後遺障害12級に対する補償は「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」がある
- 12級13号の逸失利益は労働能力喪失期間の相場が5~10年と決められている
- 12級13号と14級9号を分ける差は、神経症状が医学的な検査で明らかにできるか
12級は後遺障害等級のなかでも認定数の多い等級です。もし後遺障害12級に該当しうる症状が身体に残ると大変な不便です。慰謝料、逸失利益をきちんと獲得していくことが重要です!
後遺障害12級の後遺障害慰謝料計算についてのQ&A
後遺障害12級ってどんな等級?
12級は1号~14号まであります。1眼の著しい調節・運動機能障害/1眼のまぶたに著しい運動障害/7歯以上への歯科補てつ/1耳の耳殻の大部分を欠損/鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形/上肢または下肢の3大関節中1関節の機能障害/長管骨の変形/手指や足指の一部を失った/一部の手指の用を廃した/局部に頑固な神経症状を残すもの/外部に醜状を残すもの、です。詳細は下記で確認してください。
後遺障害12級の慰謝料相場は?
自賠責保険の基準:93万円/任意保険の基準:100万円(旧統一基準)/弁護士基準:290万円です。任意保険の旧統一基準とは、以前適用されていたものです。現在では各保険会社によって異なり、詳細は非公開とされています。
後遺障害12級の逸失利益の計算方法は?
逸失利益は計算式があります。<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 就労可能年数に対するライプニッツ係数>です。被害者が18歳未満・未就労の場合は、<基礎収入 ✖ 労働能力喪失率 ✖ 67歳までのライプニッツ係数ー18歳に達するまでのライプニッツ係数>の式になります。後遺障害12級の労働能力喪失率は14%です。
後遺障害12級13号と14級9号のちがいは?
傾向として、12級:医学的な検査結果で神経症状が存在することを証明できる/14級:検査結果では明らかにできないが、神経症状の存在が合理的に説明できる、が違いといえます。