交通事故の入院・通院慰謝料|3つの基準ごとに相場があるってホント?
交通事故の慰謝料(=損害賠償)とは、
- 交通事故で負った怪我の治療費
- 怪我を負ったことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料
- 仕事を休んだ期間の休業補償
などさまざまな損害項目の合計です。
今回はそんな慰謝料の一種である「入院・通院に対する慰謝料」についての調査結果を報告します!
交通事故の怪我…入院・通院に対する慰謝料とは
交通事故にあうと怪我を負うことが多いです。怪我自体は治療やその人自身がもつ回復力によって快方に向かうこともありますが、
- 怪我そのものによる痛み
- 検査でわずらわしさを感じる
- 完治するのか分からず未来が不安になる
など怪我を負ったという事実以外に、数えきれないほどさまざまな苦しみを受けることが考えられます。このような精神的な苦痛に対する補償として、「入院慰謝料/通院慰謝料」という慰謝料が存在します。
怪我に対する慰謝料
▼入院慰謝料/通院慰謝料
怪我の治療のために入院/通院を余儀なくされたことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料
入院・通院慰謝料は、
- 怪我が完治するまで
- 治療をつづけても症状の改善が見られなくなる症状固定まで
このようなタイミングまでに受けた精神的苦痛を補償するものになります。
交通事故の慰謝料算定で用いられる3つの基準とは
車の修理代や治療費など実際にかかった費用を実費として把握するのは比較的、簡単だといえます。しかし、精神的な苦痛に対する補償である慰謝料は、金銭に換算するのが非常にむずかしいです。同じような被害に遭っているようにみえても、人によって苦痛の感じ方は異なります。かといって、金銭に換算しにくいものを交通事故の当事者双方の話し合いで決めようとしても、話がまとまりにくいことは容易に想像がつきます。
そこで交通事故の慰謝料を算定する際にはあらかじめ決められた基準をつかって算定しようという考え方があるのですが、さらにここで注意すべきポイントがあります。算定に使われる基準の種類は3つありますが、これらはそれぞれ基準が異なります。
3つの基準
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
どの基準を使うかで手にできる金額に差がでます。
自賠責基準
自動車損害賠償保障法に基づいた省令で設定された基準。最低限度の補償となっているため3つの基準のなかで最も低い基準となっている。
* 自賠責保険における慰謝料(=損害額の総額)が120万円以下である場合に採用される
任意保険基準
任意保険会社が独自に定めた基準。自賠責基準に比べると多少高い。
弁護士基準
過去におこなわれた裁判例に基づいて決められた基準。3つの基準のなかで最も高い基準となっている。
3つの基準のなかで最も適正で高額な慰謝料が得られるのは、弁護士基準による算定です。
では、ここからはそれぞれどのようにして入院・通院慰謝料が算定されることになるのか…?一つずつみていきたいと思います。
【自賠責基準】で入院・通院慰謝料の相場を確認
慰謝料の日額は4200円?
自賠責基準における入院・通院慰謝料は日額を4200円として基礎日数から計算されるのが基本的な考え方となります。
自賠責基準
入院・通院慰謝料|基本の計算式
入院・通院慰謝料 = 基礎日数 × 日額(4,200円) |
基礎日数とは「入院日数」、「実通院日数の2倍あるいは通院期間」の合計のことです。これを計算式としてもうすこし具体的にあらわしたのがこちらです。
慰謝料の計算方法
{入院日数 + (実通院日数 × 2)}× 4,200円
または
{入院日数 + 通院期間}× 4,200円
計算式が二種類あるのは、これらのうちいずれか金額が少ないほうが採用されるためです。
入院・通院の日数と期間の数え方
入院・通院慰謝料を算定するうえで重要な基礎日数の数え方について整理しておきます。
入院日数 |
---|
▶病院に入院していた実際の日数 |
実通院日数 |
▶病院に通院した実際の日数 |
通院期間 |
▶通院の開始日を起点とし、通院終了日までの期間 |
日数や期間の数え方をきちんとおさえておくことは入院・通院慰謝料を算定するうえで非常に大切です。
【任意保険基準】で入院・通院慰謝料の相場を確認
自賠責保険基準より少し高いくらいが相場?
任意保険基準における入院・通院慰謝料は、各保険会社ごとに社内で設定している基準なので確認することができません。もっとも、かつて保険会社が共通で使用していた統一基準と大きな変化はないといわれているようです。ここではかつての統一基準を確認して大体の相場観をつかんでいきたいと思います。
* ひと月は30日として数える
任意保険基準によって算定された慰謝料は自賠責基準による算定よりも少し高く設定されています。
【弁護士基準】で入院・通院慰謝料の相場を確認
重症/軽症で異なる基準がある?
弁護士基準における入院・通院慰謝料は、赤本の基準表で確認することができます。赤本について詳しくは後ほど解説します。弁護士基準では、怪我の程度に応じて重症のケース/軽症のケースで基準が分けられています。
まずは重症のケース(赤本の別表1)の基準表を確認してみましょう。
* ひと月は30日として数える
つづいては軽症のケース(赤本の別表2)の基準表を確認してみます。
* ひと月は30日として数える
軽症のケースとは具体的には交通事故の怪我の種類で多い「むちうち・軽い打撲や挫創」などをさします。
<関連記事>むちうちについて詳しくはこちら
弁護士基準が掲載される赤本とは
弁護士基準が掲載されている赤本とは日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する書籍「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」です。書籍名の通り、交通事故の訴訟で言い渡された過去の判例が掲載されています。つまり、民事裁判で適正価格であると認められた金額の慰謝料を確認することができます。
自賠責保険基準/任意保険基準/弁護士基準について調査したところ、比べてみると弁護士基準が高額であるかのような印象を受ける方もいらっしゃるのではないでしょうか。事故の内容にもよりますが交通事故の慰謝料は何百万、何千万というお金が一気に動きます。適正な金額なのかいまいち実感が湧きにくく、損害に対応して不十分な金額であるにもかかわらず示談してしまうケースが後を絶ちません。
- 事故相手の保険会社から慰謝料の提示がすでにある方
- これから事故相手の保険会社から保険金(示談金)の提示が来るという方
このような方は、ご自身の損害に対する慰謝料が適切な金額であるかどうかを確かめることが大切です。
まとめ
入院・通院慰謝料は、交通事故で負った怪我の入院・通院で受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償の一部であることが分かりました。
慰謝料の算定は、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
これらのいずれかの基準を用いて計算されることになりますが、最も高額で適正な慰謝料が得られるのは「弁護士基準」であることも重要なポイントとなります。
交通事故の入院・通院慰謝料の相場に関するQ&A
交通事故で入院・通院したら慰謝料はもらえる?
もらえます。交通事故による怪我を負ったという事実以外に、被害者は数えきれないほどさまざまな苦しみを受けることが考えられます。このような精神的な苦痛に対する金銭的補償を入院慰謝料・通院慰謝料といいます。
慰謝料算定の基準が3つあるってホント?
慰謝料算定基準は3つあります。① 自賠責基準② 任意保険基準③ 弁護士基準、となっています。どの基準を使うかで手にできる金額に違いが出ます。自賠責基準が最も低額な基準となり、弁護士基準で算定するとき最も高額な慰謝料が得られます。
「通院期間」と「実通院日数」は何が違う?
通院期間は通院の開始日を起点とし、通院終了日までの期間を表します。「実通院日数」は病院に通院した実際の日数を意味します。日数や期間の数え方をきちんと理解しておくことは、入院・通院慰謝料を算定するうえでとても重要です。
慰謝料算定の任意保険基準を知りたいときは?
任意保険基準における入院・通院慰謝料は、保険会社内で設定している基準であり、非公開のため確認することができません。もっとも、かつて保険会社が共通で使用していた統一基準と大きな変化はないといわれているようです。自賠責保険基準より、少し高く設定されています。
慰謝料算定の弁護士基準を知りたいときは?
弁護士基準における入院・通院慰謝料は、赤本の基準表で確認することができます。赤本とは、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する書籍「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」です。弁護士基準は、民事裁判で適正価格であると認められた金額でもあるのです。下記のページでも金額表を掲載しています。