慰謝料の前払い・途中支払いは可能?すぐにお金が必要な方は必見!
交通事故に遭い治療が必要になると、仕事を休んで収入が減るのにお金はかかるという状態になることがあります。
交通事故の慰謝料や賠償金は基本的には示談成立後に支払われますが、そこまで待てないということもあるのではないでしょうか。
慰謝料や賠償金を前払いしてもらうことはできる?
示談成立後まで慰謝料や賠償金の支払いを待たなければいけない?
そこでこの記事では、
- 交通事故の慰謝料や賠償金はいつ支払われるのか
- 慰謝料や賠償金を前払いしてもらう方法はあるのか
ということについて、分かりやすく解説していきます。
交通事故の慰謝料はいつ支払われる?
交通事故の慰謝料・賠償金の振り込み時期
交通事故の賠償金では、治療費や休業損害は示談成立前に支払われます。また、後遺障害慰謝料も一部示談前に支払われる場合がありますが、それ以外は基本的に示談成立後の支払いとなります。
治療費
基本的に通院と並行して、加害者側の保険会社から病院へ直接支払われる。ただし、被害者が治療費を立て替え、示談交渉の際に請求するという場合もある。
休業損害
勤め先に作成してもらった休業損害証明書を毎月加害者側の保険会社に提出することで、毎月支払ってもらうことができる。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の請求に必要な、「後遺障害等級」の申請方法によって支払い時期が変わる。「被害者請求」という方法をとると一部は示談前に支払われ、残りは示談後に支払われる。「事前認定」という方法をとると、全額示談後に支払われる。
治療費と休業損害、後遺障害慰謝料は示談前に払ってもらえるとは言え、交通事故後は何かとお金が必要です。
そのため、他の賠償金も前払いしてほしい…と思っている方も多いかと思います。
基本的には示談交渉後に支払われる慰謝料・賠償金でも、
- 被害者請求
- 仮渡制度
という方法で、示談成立前に受け取れる可能性があります。
次の章からはこの「被害者請求」と「仮払制度」についてご説明します。
前払い・途中支払いの方法①被害者請求とは?
被害者請求の方法は?
被害者請求とは
交通事故の慰謝料・賠償金を、加害者側の自賠責保険会社に請求すること。
交通事故の慰謝料・賠償金は、基本的に加害者側の任意保険と自賠責保険から支払われます。
自賠責保険は、被害者が受け取ることのできる最低限の金額を支払います。この金額は国によって算出方法が決まっているので、示談交渉に左右されることはありません。
そして自賠責保険からの支払額では足りない金額を、任意保険が支払います。任意保険の支払額は、示談交渉で決められます。
支払いの際には、任意保険が自賠責保険の支払い分も含めて一括で支払っています。
そのため、自賠責保険の支払分も任意保険の支払額が決まってから、つまり示談交渉が終わってから支払われることになります。
しかし交通事故の被害者は、任意保険が一括支払いをするより前に、自賠責保険に直接、自賠責保険の支払い分を請求することもできます。
これが「被害者請求」です。
それによって、示談交渉後に支払われる慰謝料や賠償金のうち、自賠責保険の支払分だけ先に支払ってもらえるのです。
ポイント
- 通常、交通事故の慰謝料・賠償金は、任意保険の支払分も自賠責保険の支払分も全て一括で任意保険会社が支払う。
- 被害者請求とは、自賠責保険に自賠責保険の支払分を直接請求すること。
被害者請求でもすぐには支払われない?
被害者請求をすることで、示談成立前でも自賠責保険の支払分を受け取ることができます。
ただし、被害者請求をしたらすぐに支払われるということではありません。
被害者請求をすると、自賠責保険の支払金額はいくらになるのかを決めるため、事故や損害の調査が行われます。これに1ヶ月程度かかることがあるのです。
示談成立を待つよりは早く支払われるものの、申請したらすぐに支払われるというわけでもないという点にご注意ください。
もっと早く前払いを受けたいという場合には、「仮渡制度」というものがあります。これについては次章で詳しく解説しますので、ご確認ください。
前払い・途中支払いの方法②仮渡制度とは?
仮渡制度とは?
仮渡制度とは、交通事故による慰謝料や賠償金の一部を、示談成立前に前払いしてもらう制度で、自賠責保険に対して請求する制度のことです。
先ほどご紹介した被害者請求との違いは、
- 申請後1週間程度で支払われる
- 金額の決め方がざっくりしているので早い段階で請求できる
という点です。
仮渡制度でもらえる金額は?
金額 | 条件 |
---|---|
40万円 | ・14日以上の入院と30日以上の治療 ・大腿または下腿の骨折 など |
20万円 | ・入院14日以上 ・入院と30日以上の治療 ・上腕または前腕の骨折 |
5万円 | 11日以上の治療 |
290万円 | 死亡事故 |
仮渡制度で支払ってもらえる金額は、上の表のようになります。
被害者請求の場合は、入通院慰謝料など慰謝料・賠償金の各項目をきちんと計算して支払金額が決められます。
それに対して仮渡制度では、けがの程度に応じた金額が、のちに支払われる慰謝料・賠償金から前払いという形で支払われます。
仮渡制度の注意点は?
仮渡制度では、仮渡制度で支払われた金額が自賠責保険の慰謝料・賠償金の金額を超えた場合には、超過分を返金しなければならないという点にご注意ください。
仮渡制度で支払われる金額は、まだ交通事故による損害額が確定しない状態で算出されます。
そのため、自賠責保険が支払う慰謝料・賠償金の金額が仮渡金を下回る可能性があります。
仮渡金とは自賠責保険が支払う慰謝料・賠償金から前払いしたお金なので、仮渡金が慰謝料や賠償金より高額であった場合には、超過分は返還することになります。
仮渡制度を利用する方法は?
仮渡制度を利用するためには、加害者側の自賠責保険会社に以下の書類を提出してください。
- 仮払支払い請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 医師の診断書
- 加入者の印鑑証明書
- 委任状、委任者の印鑑証明書
- 戸籍謄本(死亡事故の場合)
慰謝料の前払い・途中支払いのまとめ
ここまで、慰謝料や賠償金の前払い・途中支払いについて解説してきました。要点をまとめると、以下のようになります。
- 休業損害、治療費は示談成立前に支払われることが多い
- 後遺障害慰謝料の一部も、等級の申請方法によっては示談前に支払われる
- 自賠責保険に対する「被害者請求」で、自賠責保険の支払分を示談前に受け取ることができる
- 「仮渡制度」を利用することで、けがの程度に応じた金額を示談前に前払いしてもらうことができる
交通事故に遭うと、少しでも早く慰謝料や賠償金が必要だという状況になる方もいらっしゃると思います。
そのような場合には「被害者請求」や「仮渡制度」のような方法がありますので、ぜひ検討してみてください。
慰謝料の前払い・途中払いについてのQ&A
慰謝料・賠償金の振り込み時期は?
交通事故の慰謝料・賠償金のうち、休業損害・治療費は示談成立前に支払われます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定を「被害者請求」で申請した場合は一部示談前に支払われます。それ以外の賠償金は、加害者が任意保険に入っている場合は基本的に示談後の支払いとなります。
慰謝料・賠償金を前払いしてもらうには?
示談成立後に支払われる慰謝料・賠償金を示談前に支払ってもらいたい場合は、加害者側の自賠責保険会社に対して請求を行いましょう。これを「被害者請求」といいます。これにより、本来、示談後に支払われるはずだった慰謝料や賠償金の一部が、示談前に支払われます。支払いは、被害者請求をしてから約1か月後になります。
仮渡制度とは?
仮渡制度とは、条件に応じた金額(仮渡金)が示談前に、示談金の前払いという形で支払われる制度です。仮渡金の金額は入通院日数やけがの種類に応じて決まります。仮渡制度の場合は申請後1週間程度でお金が振り込まれます。ただし、場合によっては仮渡金として受け取った金額を返還しなければならないこともあります。