交通事故加害者側のひどい態度!慰謝料増額の理由になる?
「事故を起こしたのに謝罪に来ない」
「自分の非を認めずウソをつく」
交通事故加害者のひどい態度に悩まされていませんか?
ご自身やご家族が被害に遭っただけでもつらいのに、相手にひどい態度を取られたら許せないと思いますよね。
悪質な加害者への対処法は?
ひどい態度は慰謝料で賠償させられる?
加害者への不満や怒りは誰に相談すればいい?
そんな交通事故のお悩みへの対処法と、慰謝料増額について解説していきます。
加害者の対応がひどい!…被害者は我慢するしかない?
事故の加害者や保険会社との馴れないやり取りには、どうしても心理的負担がかかります。
しかし、加害者のひどい態度によって、本来避けられるストレスまで背負わされる必要はありません。
事故の後も続くストレス
怪我の治療や車の修理で、時間と労力を費やすことはとてもストレスになります。
ましてや一生モノの大けがで後遺症がのこってしまったり、家族を失ってしまえば、その精神的苦痛は耐え難いものです。
そのような状況で、追い打ちのように加害者からひどい対応を受けた時のショックは計り知れません。
謝罪がない、ウソをつく、逆切れ…
加害者の悪質な対応で特に多いのが、「謝罪に来ない」「自分の非を認めずウソをつく」の二つです。
(略)加害者の対応に関し(略)直接の謝罪は結局行われないまま極めて長期間が経過するに至ったことをも併せ考慮すれば、慰謝料算定上の一事情としての考慮を要するといわざるを得ない(略)
出典:大阪地裁 平成26年(ワ)第2664号
通常であれば、事故の加害者側から電話や手紙で連絡が来て、「できれば謝罪をしに直接お訪ねしたいのですがよろしいでしょうか?」という流れになります。
ですが、中には一向に被害者へ連絡をせず、被害者からの連絡を無視するような加害者もいます。
加害者側の保険会社から「示談交渉は保険会社が行うので、被害者と連絡をとらないでください」と止められているケースもあるようです。
しかし、これも本来であれば「金銭の交渉は保険会社が行うけど、加害者本人からも被害者に謝罪をしてください」とすべきケースです。
加害者も意識不明の重体であるなど、余程の事情が無い限りは謝罪がないことを正当化する理由にはなりません。
(略)捜査段階では、飲酒検知の際にはアルコール類を前日に摂取したと回答し(略)公判段階では(略)本件事故以前にはパーキングエリア・サービスエリアでは飲酒していなかった旨の、捜査段階とは相反する供述を行ったりするなど、供述を著しく変遷させていたのみならず、(略)責任転嫁・自己弁護の供述をし、自らの責任逃れの対応に終始してきた。(略)反省が見られない態度というべきである。
出典:東京地裁 平成14年(ワ)第22987号
飲酒運転・無免許運転やひき逃げなど、加害者側に重大な落ち度があることを隠すためにウソをつくケースも見られます。
これらのケースでは、刑事罰を避けたい、免許を失いたくない、といった動機から過失を隠ぺいするためのウソをつきます。
また、特に死亡事故の場合、被害者本人が事故状況を証言できないので、加害者が自分に有利な証拠をでっち上げようとしてウソをつくことも十分ありえます。
ひどい場合には、「向こうの運転がヘタだから事故になったんだ」などとウソを通り越して逆切れするケースまであります。
許せない態度にはどう対処する?
加害者の態度が許せない!と思っても、直接交渉して解決することは困難です。
そのようなもの分かりの良い相手であれば、初めから常識的な態度をとっているでしょう。
ですが、被害者の方も泣き寝入りをする必要はありません!
証拠を残せば後で役に立つ
被害者がまずするべきは、加害者の言動を証拠として残しておくことです。
会話や電話であれば録音、手紙やメールであれば書面として残しておき、客観的な証拠として保管しておきましょう。
事故直後の様子であれば、ドライブレコーダーも重要な証拠になります。
相手とのやり取りを証拠にのこしておく
- 会話や電話の録音
- 手紙やメールの文書
- ドライブレコーダー
専門家に対処をまかせる
謝罪に来ない相手に対して、謝罪に来るように促す連絡をすること自体は問題ありません。
「被害者からの謝罪要求を加害者が拒否した」という流れを形として残しておくことに意味があります。
もちろん加害者が素直に謝罪に応じてくる可能性もありますが、応じてこなかった場合にはそれ以上ご本人が交渉を続けても進展は難しく、余計に疲労と憤りをためることになってしまいます。
そのような場合には、弁護士への依頼を第一に考えてください。
弁護士はもめ事に関する交渉の専門家であり、どうすれば被害者の方がベストな結果を得られるのかを第一に考えて動きます。
厄介な交渉ごとは弁護士に一任するのがベスト
なぜ弁護士をつけるべきか、理由は後半で詳しく解説します。
悪質な加害者の言動は慰謝料の増額理由になる?
程度や状況によって異なりますが、加害者の悪質な言動が慰謝料の増額理由になる場合があります。
交通事故の損害賠償裁判においては、「謝罪がない」「ウソの供述をした」等の事情を慰謝料金額の決定に考慮すべき、とされたケースが多々あります。
精神的苦痛を償わせる方法
加害者側の悪質な言動や開き直りともとれる態度は、被害者側に大きな精神的苦痛をもたらします。
「加害者にも同じだけの苦痛を与えたい」とお考えの方もいるかもしれませんが、現実的には難しい話です。
一般的には、被害者側が受けた精神的苦痛は慰謝料という金銭によって補償されます。
加害者の態度がひどい場合には、被害者が余計に受けた苦痛の分だけ慰謝料を増額する、という方法がとられます。
慰謝料増額の裁判例
実際にどのようなケースで慰謝料の増額が認められたのかをご紹介します。
ここで紹介する2件の死亡事故は、遺族への謝罪なし、裁判でウソの証言、といった加害者の不誠実な態度が、慰謝料金額の算定に加味された裁判例です。
(略)加害者は、被害者の通夜又は葬儀に参列しないばかりか、一度も被害者の遺族に謝罪等をしていないこと、そのため原告らの加害者に対する被害感情は極めて強いことが認められ、これらの事情を考慮。(略)本件の死亡慰謝料を算定する上ではこれらの点を考慮せざるを得ない。
出典:名古屋地裁 平成14年(ワ)第2130号
(略)刑事裁判において、被告Y2が脇見運転はしていないとの趣旨の不合理な弁解に終始したことは、原告らの精神的苦痛を増幅させる結果となっている。
出典:神戸地裁 平成13年(ワ)第1726号
一方で、慰謝料増額の理由として認められなかったケースも紹介しておきます。
(略)自らの責任を免れるために不合理な供述を繰り返していることを理由に慰謝料を増額すべき旨主張するが(略)本件事故において原告X1にも過失が認められ、本件事故態様が非常に悪質とまではいえないこと等に照らすと(略)慰謝料を増額するのが相当であるとまではいえない(略)
出典:京都地裁 平成27年(ワ)第809号 等
あくまで程度や状況による総合判断になるので、しっかりと主張を裏付ける証拠を残しておくことが重要です。
相談先は弁護士?警察?保険会社?
加害者からひどい対応を受けた時の相談先としては、弁護士、警察、保険会社などが挙げられます。
お悩みの内容によって、どこに相談すべきかが変わってきます。
慰謝料請求なら弁護士
ここまで見てきたように、加害者のひどい態度に対してとるべき手段は、裁判で慰謝料増額を認めさせることです。
とは言え自分で訴訟をおこし、証拠集めから法廷での証言まで自力でやり遂げる、というのは並大抵の労力ではありません。
その点、弁護士であればご本人に代わって訴訟の準備から訴訟本番までまるごと任せられますので、依頼者の負担は大幅に軽減されます。
もちろん「慰謝料の問題じゃない!せめて一言謝罪が欲しい!」という方もいるでしょう。
そのような場合にも、弁護士が被害者の代理として交渉を行うことで、スムーズに進む可能性が上がります。
弁護士がつくことで、相手方は「このままだと訴訟を起こされるかもしれないから素直に要求を聞いて謝罪しよう」となるプレッシャーを感じるのです。
そもそもの加害者側とのやり取りも、自身の意向を伝えて弁護士に一任すれば、余計なストレスを感じることはなくなります。
このように大きなメリットがある弁護士依頼ですが、軽微な事案の場合は費用倒れ(弁護士に払う費用の方が大きくなって、結果的に損になってしまう)のリスクもありますので、相談などで事前にしっかり確認しておきましょう。
重傷事故・死亡事故では費用倒れのリスクなし
軽傷・無傷の場合は費用倒れのリスクがないか要確認
刑事事件なら警察
交通事故であれば、警察が捜査し実況見分調書を作成します。
死傷者がでている場合などは、犯罪として捜査を行い、被害者側も供述を求められる場面があります。
その際に加害者の態度が悪質であり、反省の様子が見られないので厳罰を望む、といった意見を警察に伝えることは可能です。
また、悪質な加害者が暴力をふるったり脅しをかけてくる場合には、早めに警察に相談してください。
ただし、警察は基本的に、「賠償金をいくら払う」といった民事の分野には介入しないという原則があるので、何でも相談できるというわけではありません。
担当者の苦情は保険会社
加害者本人だけでなく、相手方保険会社の担当者の態度に問題がある場合もあります。
基本的に、保険会社の担当者は会社側の都合で動きますので、被害者の主張をすんなり受け入れてくれることは期待できません。
しかし、あまりに横柄な態度であったり、暴言を吐く、連絡を無視する、といった非常識な担当者は、会社側に伝え担当者の変更を要求すべきです。
あまりにストレスがかかるようであれば、早めに弁護士に任せてしまい、やり取りの煩わしさから解放されるのも一手です。